映画

攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3Dを観てきた。

攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3Dポスター
攻殻機動隊 S.A.C.シリーズは士郎正宗の原作をProduction I.Gがアニメ化した作品群で、初代S.A.C.から攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETYまでDVDで全話を何度も繰り返して観てるくらい好きだったりします。その最後のエピソードである攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETYが3D化して劇場公開されるという話を聞きつけて新宿バルト9まで観に行ってきたので、その感想でも書いてみようと思います。詳細な作品情報は公式サイトを参照してみてくださいな。

この作品は攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIGの後日談で草薙素子が9課を去ったという設定になっており、隊長に信任したトグサとバトーの視点で、シアク共和国のテロリストと傀儡回しの関係を追っていくという展開になります。相変わらず原作のエピソードを部分的につまんで混ぜたような作りになっており、傀儡回しは人形遣い、シアク共和国はガベル共和国、ラジプートは袁小輝だったりと原作好きな人はデジャブを感じる作りになっています。
とは言えストーリーは完全オリジナルで、事件の概要も他のシリーズ作品と同様入り組んでます。特に各組織とその構成員の立ち位置が複雑で、草薙素子と真犯人、彼が所属している組織と前述のテロリストの関係が一度観たくらいだと全然腑に落ちません。かく言う自分もDVD版を繰り返し観てやっと理解したつもりになっていましたが、3D版を劇場で観直して初めて納得したところもありと、ある意味何度観ても楽しめる作品になってます。

それで劇場で観た3D映像はどうだったのかと言いますと、まず電脳インターフェイスウィンドウが常に手前に飛び出す感じで、電脳化を疑似体験というコンセプトは結構実感できましたね。それとリニューアルしたオープニングでは3Dモデリングしたタチコマなどがグリグリ回ってたましたし、冒頭の空港突入シーンも立体的で、いずれもなかなか見ごたえがありました。ただ他はあまり立体感が強調されていないシーンが多かったので、DVD版と大きな差を感じることはできませんでした。元々劇場公開を前提に作成されてた作品という事もあり、3Dがスゴイ!というより普通に劇場で観れて面白かったなぁ〜というのが正直な感想だったりします。

そんなわけで映画自体は満足でしたが、反面心残りだった点も2つありました。1つは期間限定攻殻機動隊カフェに是非行こうと息巻いてたのに映画を見終わった頃にはかなり混雑してて入れなかった事です。これはもう仕方が無いので、売店でタチコマステッカーなどを購入してお茶を濁してみました。それともう1つは同時上映予定だった「Xi AVANT(クロッシイ・アバン)」が震災で公開が間に合わず、今回は観れなかったことです。これは残念だったので、何かほかの機会で観たいと思っています。

映画ノルウェイの森を観たんだけど…

ノルウェイの森
自分に大きな影響を与えた小説、村上春樹の「ノルウェイの森」の映画がついに公開されました(公式サイト)。待ちに待った映画化なのですごく期待してしまう一方、自分の中に出来上がってしまったイメージとのギャップが心配で、観に行くのに若干の心理的抵抗がありました。まぁトラン・アン・ユン監督の映像は嫌いではないし、主人公のワタナベが松山ケンイチってのもおおよそイメージと離れてないので大丈夫かなと思ってはいるんですが、肝心の直子が菊地凛子ってのがどうにも不安で、実際観るまではかなりドキドキしてしまいました。そんな期待と不安の入り交じる映画「ノルウェイの森」の感想でも今回は書いてみようと思います。
ちなみに今回は思うところがたくさんあったのでネタバレとかは全く気にせず書きます。気になる方は映画を見てから以下を読むようにしてください。

まず冒頭から。小説は37歳になったワタナベが過去を回想するシーンから始まりますが、映画ではキズキとワタナベ、直子の高校時代から始まります。高校生を演じるには若干年齢が上の役者ばかりですが、意外に違和感もなく原作を良い感じで再現しています。以後キズキの自殺、直子の再開、直子の20歳の誕生日まで駆け足で話が進みます。ちょっと展開が速いですが、この時点では端折りが目立たず長編小説の映画化なので仕方が無いかなーという感じです。
で、直子の家でワタナベが20歳の誕生日をお祝いするシーンで初めて改変に気が付きました。小説では直子がとめどなく喋るのをワタナベが不意に遮ってしまいそれをきっかけに直子が泣き出すという流れだったのに、映画では特にきっかけもなく突然泣き出すという展開になっていましいた。うーん、これだと突拍子無さ過ぎて直子に感情移入しにくいなぁ…敢えて改変したのは何故なんだろう?という感じです。
この後直子が失踪し、直子からの手紙をきっかけにワタナベは山奥の療養所行くようになります。それと同時並行的に東京では永沢さんやハツミさん、緑と関わっていきます。ここで触れられる永沢さんの傲慢だけど精神的にタフでマッチョな言動や、病床の父親に会ったり火事を見ながらビール飲んだリして緑と関わっていくシークエンスが結構好きだったんですが、かなり省略されていました。直子と対極にいる彼らとのやり取りは、ワタナベにとってすごく大事な要素だと思うんだけど、監督はあんまり重視していなかったみたいです。仕方が無いので小説のエピソードを脳内補完しつつ観てみましたが、小説ほどワタナベに感情移入することはできませんでした。
その後もワタナベは直子と一緒に暮らすために寮を出る→直子は具合を悪くして自殺→ワタナベが放浪の旅に出る→帰宅したら家の前にレイコさんがいた(!)とかなり圧縮気味な展開になっており、尺不足に悩まされたであろう監督に同情さえしてしまいます。ただその割には直子が首を吊っていることを暗示する裸足の足がプラーンというシーンや岩浜でワタナベが音声なしでひたすら号泣し続けるシーンとかには結構な時間を割いており、そこを強調するかね…という疑問もあったりします。最後のレイコさんと直子のお別れ会をするところも、歌をたくさん歌ったりする描写は一瞬で過ぎ去ってしまい、さらっとラブシーンを描いて終わるのでちと寂しい感じでした。
という事で、約2時間でストーリーを忠実に再現しようとしている分かなり端折っているのが気になって仕方がない展開でした。一見関連のないような出来事やセリフの積み重ねに意味のある…もしかしたらストーリーよりもその哲学みたいなものに価値のある小説だと思っているので、いっそのこと映画も上下巻構成にして細かいエピソードをもう少し盛り込んだ方が良かったんじゃないかなーなんて思ってしまいました。

演技面では、若干棒読み気味な感じがむしろリアルな松山ケンイチや傲慢さのにじむ玉山鉄二は悪くなかったし、初音映莉子演じるハツミさんがワタナベをなじるシーンなんかは目が怖すぎて一緒に気まずくなってしまうくらい迫力があって結構良かったです。菊地凛子の直子も想像していたよりは随分良かったですが、あの独特な喋り方と激高したときの金切り声だけはどうしてもイメージと合わず、そこだけちょっと残念でした。スカイクロラの時もそうでしたが、僕は菊地凛子があんまり好きでないみたいです…むぅ。

同じ村上春樹の小説の映画化だと「トニー滝谷(公式サイト)」が佳作だと思うんですが、あれが主人公のモノローグをたくさん盛りこんで原作の雰囲気を忠実に再現するのに成功している事を考えると、ノルウェイの森でもワタナベのモノローグをもう少し入れてくれれば感情移入できたのかもしれないと思いました…うーん、そうすると僕はワタナベの苦悩に共感する映画を観たかったみたいですね。

映画「玄牝」と命の価値観

玄牝
自然分娩を推奨し現代医療の介入を否定することで話題になっている吉村医院を舞台にしたドキュメンタリー映画「玄牝(げんぴん)」(公式サイト)が公開されました。その主張が(いろんな意味で)ずっと気になってた我が夫婦としては、これは見逃すわけには行くまい!と言う事で早速渋谷のユーロスペース(公式サイト)まで観に行ってきました。劇場にはベビーカー置き場なんかもあり雰囲気が出ていましたが、実際に赤ちゃんを連れてきている人はほとんどおらず、小学生くらいの子供がいる家族連れと、20歳〜40歳くらいの夫婦らしき男女が多かったです。やっぱりこれから産みたい人が観る映画なんでしょうね。
しかし家族連れで来るような映画なのに、ユーロスペースの周りがラブホテル街なのはいただけないですな…。

愛知県の郊外、どこか遠くで「カーン、カーン」と工事の音がしている古民家の風景から映画は始まります。吉村医院にお産を行う妊婦たちが、この古民家で薪割りやスクワットをしたり吉村医師を中心に妊娠について話し合ったりして過ごしている姿を、ひたすら写します。一応数人の妊婦さんが自宅で出産するまでを追いかける構成になっていますが、河瀬直美監督が質問することはほとんどないので、各登場人物同士の話し合いと独白で物語が進行します。

吉村医師は「昔の出産のやり方でも結構元気に生まれるぜ!」という事と「でもその方法だと死ぬときは死ぬよ」という事を織り交ぜて発言しているので、『それだけを取り出せば』そんなに突飛な事を主張しているわけではないようでした。実際普通に超音波で妊婦検診もしてるようですし、現代医療を完全に否定ってわけでもないんだなという事は分かりました。なので本当の意味でリスク、つきつめれば母体と胎児が死ぬ可能性を理解した上で自分が望む形での出産をしたい!って人にとっては良い選択肢を提供している人なんでしょう。それだけにリスクについて不安を述べる妊婦さんがいても良いかな?と思って見ていましたが、自然分娩万歳な発言ばかりだったのはちょっと残念でした。まぁそういう人はそもそも吉村医院に来ないので仕方が無いんでしょうけども…。
それと自然分娩が無理で近隣の病院へ搬送されてる妊婦さんの描写をせっかく入れてるので、その部分をもう少し掘り下げて欲しかったなぁとも思いました。あの自然分娩万歳の価値観の中でそれを達成できなかった妊婦さんが自分の出産をどう感じるのか?、そういう経過をたどった人を他の妊婦さんはどう思うのか?、そして吉村医院が送った先の病院ではどういう事になっているのか?。現代医療を否定する描写をするなら、崩壊しつつある現代産科医療との対比も描いて欲しかったです。

あとは、旦那さんが失踪した(!)妊婦さんとか、家族とうまくいっていない吉村医師とか、吉村医師のやりかたに苦言を呈する助産師とか、人間的にカオスでリアルな描写が多かったのがドキュメンタリーな感じで良かったです。社会派という側面はアレですが、人間ドラマという切り口においては河瀬直美監督はなかなか面白い人のようです。映像的には画角の狭い手持ちカメラで淡々と風景を映すシーンが多く、時に強烈な睡魔に襲われてしまったのがちょっと勿体なかったです。当直明けに観に行った自分が一番悪いんですが、もう少し風景描写を減らしインパクトのある独白を増やしてくれても良かったんじゃないかなぁと思いました。

一緒に見てた人の中には出産シーンに感動して泣いてる人もいたようですが、自分は命をめぐる様々な価値観の衝突についていろいろ考えさせられたので、そういう気分にはなりませんでした。そういう意味でも興味深い映画でしたね。

ばーちゃんとトイレット

トイレット集合写真
少し前にもたいまさこ独特の雰囲気が好きな妻が「トイレット(公式サイト)」観たい!と言うので観てきたんですが、感想をアップするのを忘れていたので今回書いてみようと思います。タイトルからは雰囲気がつかめなかったので予告編を事前に観てみたところ、監督は違いますが去年見たプール(公式サイト)と似ているようなので、結構期待しつつ期待しつつ観てきました。

舞台はアメリカ、母親の死をきっかけに3兄妹が英語が全く喋れない日本人祖母(通称ばーちゃん)と一緒に暮らし始めるというお話。当然唯一の日本人「ばーちゃん」をもたいまさこが演じてるわけですが、これが本当に発声さえしないレベルで喋りません(劇中の発声は1回のみ!)。始終無表情でリアクションもかなりゆっくりなので、何かと困惑する3兄妹にもれなく感情移入できます。一応主人公はプラモデルマニアの長男レイで、彼がばーちゃんに対して抱く疑問が物語のタイトルにつながって行きます。
そんなばーちゃんと3兄妹の同居生活は最初かなりギクシャクしますが、なかなか食事を取らないばーちゃんを何とかしようと3人が協力し始めるあたりから少しづつ歯車が合うようになります。各兄妹とも結構深刻な問題を抱えていて、ばーちゃんを介してそれぞれ自分の壁と相対していくわけですが、ちょっと笑える要素を交えているので深刻になりすぎないところが心地良かったです。
描写としては、プールもそうでしたが料理を作って一緒に食べるシーンが多く、その温かい雰囲気に癒されました。食事中も含めてばーちゃんは全く喋らないものの、その想いが兄妹に伝わっている雰囲気を感じるんですよね。まぁばーちゃんが何を考えていたのかは本当のところ全く謎なんでしょうけど、兄妹がその想いを知ろうとしていろいろ語りかけたりする姿が良かったのかもしれません。現実って確かにそんなもんだよなぁと妙にリアリティを感じてしまいました。

あとタイトルの謎は、一応終盤に明かされる事になります。よくよく考えると、このネタだけで映画一本作ってしまってるわけで、その企画良く通ったな…と観終わってから妙に感心してしまいました。物語的には「ばーちゃん」「ギョーザ」「3000ドル」もそれぞれ良い役割を演じていたので、それらがタイトルでも良かったと思うんですけどね(いくらヴィンテージでもプラモデルに3000ドルは高すぎる気もするけど)。

そんなわけでプール級にクセがあって観る人によってかなり評価が別れる作品なんでしょうけど、自分的にはかなりツボな作品でした。荻上監督+もたいまさこの組み合わせは今後も観てかないとね!と思いました。

久しぶりの3D体験〜ヒックとドラゴンは案外深かった。

ヒックとドラゴンポスター
3Dテレビとか3D映画とかが話題になっている今日この頃ですが、小さい頃に観た赤青の3D映画の印象が良くなかった事もあって、何となく放置していました。 昔の3D映画と比べてどこが進化しているか気になるものの、アバター以来面白そうな3D映画がなかなか出現せず、このまま3Dブームが終わっちゃうかもな…と思っていたところ、「ヒックとドラゴン(公式サイト)」がなかなか面白いという話を聞きつけました。製作元のドリームワークスは同じCGアニメでもピクサーに比べるとちょっと硬派なイメージがあり自分の嗜好とも合いそうだったので、吉祥寺のバウスシアターで観てきた感想でも書いてみようと思います。ちなみにかなりネタバレ入るので、観てない方はここから下を読まないようにしましょう。

シャッター式の3D眼鏡3D眼鏡on眼鏡
とある週末の夕刻。やたらガラガラなバウスシアターの入口で3D眼鏡を渡されて席についていると、「上手く3Dに観えない人は入り口で眼鏡を交換しまーす」と映画館のお姉さんが叫んでいます。そんな事言われても映画の途中で故障に気がついて外に出るのはイヤだなぁなんて思っていたところ、映画が始まる前の予告(映画泥棒のCMを除く)が3D対応になっており、映画が始まる前に3D眼鏡の故障をチェックすることができました。うーん、なかなか気が効いてるじゃないの。
ちなみに渡された3D眼鏡は緑のレンズで眉間にセンサーがあり、右こめかみ部にはボタン電池の蓋が見えたので、高速シャッターで3Dを表現するタイプのものだったようです。眼鏡自体ががかなり大きいので、自分のように眼鏡の上に3D眼鏡をかける人でも後頭部あたりで紐を締めて固定すれば問題なく観れました。基本技術に大きな進化はなさそうですが、なかなか使い勝手は悪くありません。

3D眼鏡の感想はそんな感じだったので、次は映画自体のお話を書きます。舞台は北欧あたりの村で、ドラゴンが家畜を襲いそれに村人(バイキング)が対抗する場面からお話が始まります。主人公のヒックは体が貧弱なためドラゴンとの抗争に直接参加する事を許されず、戦いで使った武器を直す鍛冶屋で働いています。そんな彼がまぐれで最強のドラゴン(トゥースと命名)を撃ち落としてしまうんですが、いざドラゴンを目の前にしてもどうしてもトドメがさせず、落ちた窪地に匿って欠けた尾びれを修復したりエサをやったりして仲良くなってしまいます。
ところが彼を含めたバイキングの少年たちは一人前の戦士になるためにドラゴンと戦う訓練をしなければならず、トゥースと触れ合ううちに戦わずしてドラゴンを手懐ける方法を身につけた彼は訓練で優秀な成績を残し、一人前の戦士になるための最終試験でドラゴンを殺すことを命じられます。この語ドラゴンを匿っていることが村人にバレたり、偶然見つけたドラゴンの巣を父親に知られてそこを襲撃することになったりとすったもんだあるんですが、ヒックは大事なモノを失いつつ一応のハッピーエンドを迎えます。

観ていて何となく思ったのは、ドラゴンを狼に置き換えても、害獣だった狼が人間に慣れて共に暮らす犬になって行くストーリーとして成立するなぁという事です。当然狼を飼いならす過程で狼に食べられたりする人間もいるので、現実的には人間も狼も全員納得で仲良しというわけにはいきません。本作でもヒックの師匠にあたる鍛冶屋の親父さんがドラゴンとの戦いで足と腕を一本づつ失ってたり、(ドラゴンのせいではないにせよ)ヒックも最後に大事なモノを失ったりと、王道なストーリーにもかかわらず魚の骨が喉に引っかかるような要素がちょこちょこあって、なかなか深かったですね。
3D映画としてはヒックとトゥースの飛行シーンや最終局面のドラゴンとの戦いなどの魅せ場がたくさんありましたが、過剰に期待していたせいか自分としてはあんまり目新しい感じはしませんでした。むしろガンガン動くシーンだと注視できる範囲が狭くて字幕が追えないので、吹き替え版ばかり公開している理由がわかった気がしました。

とまぁいろんな意味で久々に面白く見た映画でした。今年は3D以外でも面白そうな映画がまだまだ公開されるようなので、また映画観に行ってレビューでも書いてみようかなぁと思います。