映画

「東のエデン 劇場版I The King of Eden」を観に行ってきた。

東のエデン 劇場版I The King of Eden
士郎正宗の攻殻機動隊を元に作られた「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を観てからProductionI.G.の作品を観るようになりましたが、スカイ・クロラ以後は気になる作品がなく随分ご無沙汰していました。ところが最近妻が職場で勧められた「東のエデン(公式サイト)」を観たところ結構面白かったよ!と言うので、DVDを借りて見始めることにしました。実はWeb経由で「東のエデン」の存在自体は知ってはいたんですが、キャラクターデザイン=羽海野チカという点で勝手にラブコメと思い込んでおり、完全ノーマークでした。後で調べてみると、攻殻機動隊S.A.C.で監督をしていた神山健治氏が仕切っている作品なので、今思えばツボな作品なはずだったわけです。偏見ってコワイ…。

お話はまさに現代。「日本を正しいことに導く」ゲームを強制された「セレソン」の一人である滝沢朗が、偶然森美咲に出会うところから始まります。彼が他のセレソンと関わりながら徐々に記憶を取り戻し、そして強制されたゲームに一定の結末をつけるため行動して行く、というお話でした。
最初は滝沢朗と森美咲のラブコメな展開で観ててこそばい感じでしたが、他のセレソンが絡んでくるあたりから硬派な神山色が出てきてS.A.C.を彷彿する内容になってきました。播磨とか守護天使とか攻殻機動隊なキーワードがポロポロ出てくるのは、まぁご愛嬌というところでしょうか。レンタルしたDVD版でこの奇妙なゲームは一応の決着を迎えた(というか振り出しに戻った)んですが、公式サイトによるとこの続きが映画で公開されているという事なので、早速観に行ってきました。

TV放映されてた作品が2回に分けて映画化されるという話を聞くと、エヴァンゲリオン劇場版のように一回目の作品が総集編になってしまうのではという危惧がありましたが、東のエデンに限って言えばそれは全くなかったです。むしろそれがなさ過ぎてDVD版をしっかり予習してこないとさっぱりわかならい作りになっていました。新たにセレソンが登場したり、消えたと思った人物が再登場したりして期待を持たせつつ2回目に続くという話だったので、はやく劇場版第2弾「東のエデン 劇場版II Paradise Lost」もみたいなぁと思わせる作りでした。うーん満足。
攻殻機動隊ほどの世界観の作り込みはないものの、自分的には結構好きな作品でしたね。ProductionI.G.の作品の中でも久々のスマッシュヒットになりそうです。

映画「笑う警官」は悲惨だった

笑う警官ポスター
妻が大森南朋のファンで彼の出ている「笑う警官」という映画を観たいという話になり、先日近所のシネコンに観に行ってきました。原作は佐々木譲の小説で、北海道警察の裏金事件にからんだ殺人事件の真相をめぐり、冤罪に問われている警察官を救うために警官が警察組織を敵に回す、というお話です。配役などの詳しい情報は公式サイトを参照のこと。
実は以前シネコンでプロモーション用のチラシをみつけ、今時珍しい硬派な警察ドラマだったので観る前まで結構期待してたんですね。ところが実際観てみると、どうにもアレな出来でした。これはネタにせにゃいかんと思い立ち、ここに感想を書いてみることにしました。ちなみにネタバレしますんで、映画を観たい方はここから下を読まないようにしましょう。

最初札幌大通署の管轄内で殺人事件が起こるところからお話が始まります。刑事課の面々が現場に着いた途端道警本部に捜査権を横取りされ、その情報の早さに佐伯宏一(大森南朋)を始めとした主人公達が違和感を感じていたところ、佐伯の元同僚の津久井(宮迫博之)がその犯人として追われていることが発覚。津久井からの電話を機に、この事件の真相を暴くため佐伯とその同僚たちは警察組織を相手に独自の調査を始めます。ここまでは結構良かった。
しかしBlackBirdというジャズバーで作戦を練って行動を始めるあたりから段々怪しい雰囲気が出てきます。とにかく演出が鼻につくんです。妙に遠いカメラワーク、違和感のある会話の間、観てる人には響かない(おそらく洒落たつもりの)セリフわまし…何だか痛い自主制作の映画を観ているような甘酸っぱさを感じさせてくれました。
意外な裏切りやどんでん返し的展開もあってサスペンスとしてはなかなか面白いですし、役者が豪華なこともあって演技も悪くはなかったです。それだけに、ただひたすら見せ方が引っかかり続けました。そしてエンドロール前に、登場人物全員がウィスキーを飲みながらBlackBirdで佐伯の演奏を聴くというラストシーン。アイデアとしては洒落てるかもしれません…ただ僕にはどう見ても痛いシーンにしか見えなかった…。

観終わった後、妻も「南朋くん可哀想…」とあきれてました。Webによると角川春樹氏は「150万人動員できなかったら映画をやめると映画界から引退する覚悟を明かした」(記事)らしいので、個人的には引退した方が良いんじゃないか?って思える作品でした。とにかく台無し感を味わえる作品でしたね。

ヴィヨンの妻を観た

ヴィヨンの妻
今年は太宰治生誕100周年という事で、本から映画まで太宰治作品が出てきてます。特に映画のヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜はモントリオール映画祭で監督賞を取ったりとなかなか話題になっています。太宰治というと人間失格と走れメロスくらいしか読んだ事ありませんが、予告を観ると結構期待できそうな内容だったので早速観に行ってきました。ただ公開から結構時間が経っていたせいか観れる映画館が数えるほどしかなく、今回は渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷まで行ってきました。渋谷駅の東、明治通りを北上してちょうど宮下公園のも向かいのcocotiという複合ビルの中にありました。

お話は小説家の大谷(浅野忠信)という作家が行きつけ小料理屋で盗みをはたらき、家に逃げ帰ってくる所から始まります。小料理屋を営む夫婦(伊武雅人と室井滋)が大谷の家までやってきますが、大谷は刃物を振り回して逃げてしまい残った妻(松たか子)が借金のカタに小料理屋ではたらく事を決意します。結局大谷が懇意にしてる飲み屋のママから立て替えてもらい事なきを得ますが、もともとロクな収入がなかった(と言うより大谷が全部使いきってしまう)妻はそのまま小料理屋に住み込みではたらく事を決意します。
妻は昔好きだった男性に出会ったり自分に好意を寄せる男の子に出会ったりしながら一生懸命仕事を続けますが、そんな妻に男ができたんじゃないかと大谷は疑いはじめます。
それでまぁこの大谷が典型的太宰キャラで、妻は疑うくせに自分は飲み屋の女の子と寝たりしながら事あるごとに「死にたい」と口走るとんでもない奴です。そして他の太宰作品と同様、昔貢がせた女の子と自殺未遂を起こしてしまいます。

僕は原作を読んでいないので差異は分かりませんでしたが、主人公たる大谷の妻が救われない話である事はきちんと再現できているようで、観てると確実に気が滅入ります。劇中に音楽が流れることも全くなく、間を重視した会話が淡々と展開していくので、雰囲気的にも明るい要素はほとんど感じられません。だからこそ大谷の妻の馬鹿正直ともいえる行動が目立ち、大谷のダメさ加減が浮き立ってました。
演技としては、松たか子、広末涼子、浅野忠信、それぞれ人間臭さがでており、太宰作品の雰囲気を再現とまではいかないにしろ実写化としては十分成り立っていると思いました。

そんなわけで、正直もう一度観たい!となかなか思える作品ではありませんでしたが、時にふと手に取りたくなるかもしれない魅力がありました。太宰作品の実写が観てみたい人は是非お試しくださいな。

実写映画「カイジ」を見た。

カイジ人生逆転ゲーム
学生時代にちらちら読んでいた漫画「カイジ」が、藤原竜也主演で公開されました(公式サイト)。もともと青年コミックの映画化だけあって独りで見に行こうかと思っていたんですが、深夜ドラマの実写版ライアーゲーム(公式サイト)好きの嫁さんが興味を示したため、二人で見に行ってきました。ストーリーは「賭博黙示録カイジ」の希望の船〜絶望の城あたりまでを描いていますが、いろいろ変更点もあり原作とはちょっと違った内容になっています。それをちょこちょこ書くので、ネタバレが嫌な人はここから下は読まないようにしましょう。

カイジたる藤原竜也が消費者金融の保証人に名を連ねて借金を負い、それを帳消しにするため希望の船に乗り込むところからお話が始まります。この船では限定ジャンケンというゲームが開催され、その勝者が借金帳消しになる!というわけです。この限定ジャンケンは、グーチョキパーそれぞれが書かれたカードを渡され、それでジャンケンをし、勝つと相手から星がもらえるというゲームです。うーん、実にライアーゲームな感じです(ちなみに原作はカイジの方が先)。
ところがです。原作では確かもっと手の込んだ智謀が飛び交っていた気がするんですが、映画版は実に単純なやりとり(共謀して全て引き分けにする、カードに血をつける等)だけで希望の船編が終わってしまいます。正直ライアーゲームよりトリックがつまらんよという感想を抱きつつ、お話は進んでいきます。
カイジならではのルールの裏の裏を読む戦いを期待しながら観てましたが、運だめし的要素を過分に含んだまま最後のEカード戦までお話は流れ、消費者金融の社長である遠藤(原作はおっさんだけど映画版では天海祐希)とのやりとりがあって終幕となってしまいました。こりゃイカン。

確かに藤原竜也演じるカイジは表情が豊かで、ヘタレぶりも含めて漫画のカイジを超える存在に化けてました。遠藤を除くほぼすべてのキャストが原作のイメージ通りだし、決めセリフ、「ざわ…ざわ…」の表現も漫画版を意識してそれ以上に仕上がっていました。しかしカイジの最大の面白みであるルールを熟知した上での戦略ってのが全然再現されておらず、ライアーゲームを見慣れている僕らにとってはかなりもの足りなかったんですね。配役や再現性で健闘しているだけに、これはすごい残念でした。

ということで、原作を知っている人はそれなりに笑えましたが、知らない人にとってはやたらに中途半端な映画でした。せっかく再現度が高いので、テレビシリーズでストーリーも忠実に再現してくれたら面白いのにー、と思ってしまいましたね。

ウォッチメン(映画)は随分大人向けですな。

ウォッチメン
アメコミ原作の映画も結構好きでちょこちょこ観てましたが、アクションものって感想を書くのが難しい気がして割烹よしをではほとんど取り上げてきませんでした。ところが先日観た映画「ウォッチメン」(公式サイト)は従来のダークヒーローものをしのぐ暗さとドラマがあり、自分的にはすごく面白かったので感想でも書いてみようと思います。

そもそもウォッチメンは1980年代のコミックが原作で、その頃のアメリカが舞台です。ただ米ソ冷戦の緊張は史実よりかなり高く、核戦争一歩手前のパラレルワールドになってます。この世界ではマスクをつけたヒーローが超法規的に悪者を退治していたんですが、覆面自警団禁止法が施行された後、一部を除いて各ヒーローたちは引退生活を送っています。そんな最中、ヒーローの1人コメディアンが何者かに殺されるところからお話が始まります。
このコメディアンの死の真相を追っていく過程で各ヒーローたちが邂逅するわけですが、これが全然明るくない。そもそも初代ヒーローはだいぶ前に引退している人が多いんですが、不名誉な死を遂げていたり病気になっていたりしてます。そのヒーロー間にはさらにいさかいやレイプ未遂(!)まであったりして、そのわだかまりをそれぞれが抱えつつ、真相の究明に当たるというとっても暗い話でした。もちろんある程度の相互理解もあったりしますが、最終局面は決してハッピーエンドではない展開を見せるだけに、観終わるとえらく凹んでしまいました。

演出面では、彩度を抑えた絵と独特のストップモーションを使ったカメラワークが、まさに映画300(スリーハンドレッド)で、こういうのがツボな自分にはすごく良かったです。ただ300もそうでしたが結構血が出て痛そうな表現が多いので、そういうのが苦手な人にはきついと思います。
あと気になったのは尺の長さです。さすがに全編2時間40分ってのは辛いです。前半は結構テンポが良かったんですが、Drマンハッタンからシルク・スペクター二世の心が離れていく下りでちょっと中だるみした気がしました。ま、最終局面にお話が進み始めるとまたグイグイと引き込まれていくんで、後味は悪くなかったですけどね。

そんなわけでダークヒーローものに分類される映画ではありますが、子供に観て欲しい感じの内容ではありませんでした。もう取り返しのつかないドロドロした過去を抱えながら、それに折り合いをつけながら現実的な選択をしなければならない大人が観るべき映画でしたね。そういう所が琴線に触れる人なら絶対面白いと思いますよ。