映画

蛇にピアス〜映画版と小説版

蛇にピアス(映画)蛇にピアス(文庫)
ちょっと昔、綿矢りさの「蹴りたい背中」と金原ひとみの「蛇にピアス」が芥川賞を取りマスコミに注目されたことがあったんですが、早速綿矢りさの「インストール」を立ち読みしたところあまり引き込まれず、そのまま興味を失って忘れ去ってしまいました。
ところが最近映画の予告を見ていると「蛇にピアスが映画化!」なんてプロモーションをしており、そう言えば金原ひとみの「蛇にピアス」はすっかり手付かずだったな〜と気になり始めました。なんでも村上龍が推した作品だそうで、その辺も気になってまず映画から見ることにしました(公式サイト)。あんまりメジャーな作品ではないのか、近所で公開しているのは池袋のシネリーブル(公式サイト)のみだったので、そこまで観に行ってきました。

んで感想。
登場人物は、主人公の19歳の女の子ルイとスプリットタンを勧めた同年代のパンク兄ちゃんアマ、そしてそのアマに紹介されたドS彫師のシバの3人のみ。ストーリーもルイが刺青を入れ終わるまでの3人の関係(というか三角関係?)を描いたものでした。
まず感じたのはアマとルイに意外に理解できなくないと感じたことです。ルイに依存的でまたカッとなると自分を抑制できないアマの行動を、最初はルイがたしなめるような関係でした。でもアマが失踪すると今度はルイが取り乱し、現実的な捜索が全然できずシバに依存したり、警察に八つ当たりをしてしまうんですね。30代の今みるとあまりの子供っぽさにゲンナリしてしまうわけですが、じゃあ10代の自分はどうだった?と自問すると批判ばかりできないかなと思ってしまいました。さすがにこの作品のような破天荒な人生は歩んでいませんが、依存的でキレやすいという意味では、大差なかった気がします。その2人とくらべるとシバはちょっと超越したキャラだったので掴みきれませんでしたね。
あと自分はピアスも刺青も美容形成も好きではないんですが、そういったことをすることにより自分に変化が訪れるような気がするという気持ちは分かるような気がしました。そういう意味ではメガネをやめてコンタクトレンズに変えたり筋肉トレーニングをしたりするのも同じなのかもしれません。
ただひたすら叙述的な作品なのに、なんだか心に残る作品でした。

で、予想外に面白かったので翌日くらいに早速書籍の方を買って読んでみました。まぁ2時間の映画で充分に表現できるくらいの内容だけに文庫本は非常に薄く、数時間で読み終えてしまいました。結論から言うと映画は小説の完全再現でした。台詞の一部がちょっと違うくらいで本当に細かく再現されていました。そしてほとんど内容をいじらなかった蜷川監督は偉い!と思いました。
あと巻末の村上龍の解説は非常に良い事書いてました。自分にとって非現時的なストーリーに、なぜここまでの共感を感じられたのか分かった気がしました。恐るべし村上龍。

ということで決して万人受けする作品ではないと思いますが、自分以内ではかなり面白い作品でした。

Go to DMC!

デトロイトメタルシティ
ほぼ連載開始時からずっと読んでいたコミック「デトロイトメタルシティ(公式サイト)」がついに映画化されました。当然今夏注目の映画の一つに入っていたので、公開して早々に見に行ってきました。

かなり有名になってしまったので大筋のみ書くと、渋谷系ポップミュージシャンを目指していた根岸崇一が何を間違ったのかデスメタルバンド「デトロイトメタルシティ」のギターボーカル「クラウザーII世」にさせられ、しかもすごく売れてしまって当惑、というギャグ漫画です。その昔ベルセルク目当てにヤングアニマルを読んでた時に見つけ、「あ、これ面白い」と思って読んでいたらどんどん人気が出てきて、ついに映画化の運びになったようです。
映画化の話が出たとき、あの「SATSUGAIせよ」をどうやって歌にするんだ?とか、そもそも原作を忠実に再現するとR指定になるんじゃないか?などの不安が沸いてきましたが、心配をよそに予告編はなかなかの完成度だったので、劇場まで観に行くことになりました(以下ネタばれあり)。しかし誰が映画化なんて思いついたんでしょうね…。


まずストーリーは、微妙な順番の入れ替えはありますが、おおよそ1巻の内容を完全再現していました。細かい点では、グリとグラが人間でなくて犬とかその乱入シーンの大家さんが違うとかがありますが、映画公開で無茶できないところをちょこっといじってただけのような印象でした。ただそのいじり方が実にうまく、あとでコミックを見直してみて、「なるほど」と思うくらい違和感がありませんでした。あとDMCを読んでいて欠かせないのがコアなDMCファンの奇抜な行動ですが、これも実にうまく料理されており、素直に笑えました。
根岸=クラウザーさんが凹んで実家に帰ってしまうくだりや、その後のジャックイルダークとの対決までギャグをいれつつ盛り上がりもあり、結局全くダレることなく最後まで観ることができました。

そしてもう一つすごいと思ったのは歌です。甘い恋人にしろSATSUGAIにせよ、ちゃんとそれっぽい曲に仕上がってました。ここまでちゃんと作っていると漫画を超えたんじゃないかとさえ思えましたね。渋谷系もスラッシュメタルも大学生時代に人に勧められ聴いていた時期があり、リアルで懐かしい気分になりました。

劇場に来ていた客層も様々で笑い声がしょっちゅう聞こえてた事を考えると、原作を観ていない人でも充分楽しめるつくりだったと思います。過去の漫画を実写映画化した作品の中では、最高の出来なんじゃないかと思いました。って20世紀少年も見なきゃですね。

攻殻機動隊2.0

攻殻機動隊2.0ポスター
スカイクロラのプロモーションで押井守の随分昔の作品であるGHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊の2.0が公開されています。何を隠そうコミック時代から攻殻機動隊のファンなので、「全カットリニューアル」というキャッチコピーに惹かれ、新宿ミラノ座まで遠征して観てきました。
※ワーナーの中の公式サイトはこちら。もともとhttp://www.www.koukakukidoutai2.0.com/というURLで公式サイトができる予定だったようだけど、いまだに閲覧できない状態です。なぜ?。

映画館に入ると、週末の午後という最も混みそうな時間帯に行きましたが客席はガラガラで、ひょっとして大きなミスを犯しているんじゃないかと不安にかられてきました。で、かなり長い予告を拝んだ後にオープニングが始まると、お、すっかりイノセンス風なCGになっているじゃないですか。「全カットリニューアル」は伊達じゃないなぁ〜とさっきまでの不安も消え去り、期待が高まります。
と、亡命プログラマーを6課が確保しようとするくだりで昔のセル画に戻りました。う〜ん、人物関係は昔のままなのね。でもイノセンスもこんな感じだったし、背景やメカ描写に期待しようと自分に言い聞かせます。

…こうして最後まで観たわけですが、やっぱり全カットリニューアルは言い過ぎかもしれません。結局冒頭の突入シーンとダイビングシーンに大きな変更があったのと、小さな所ではナビゲーション画面や夕焼け、ティルトローターなどが描きかえられていたくらいで、他に大幅な変更はありませんでした。期待していた分、物足りない感じはぬぐえませんでしたね。

またもう一つの変更点である音響では、セリフ自体は昔「EC」と表現していたところが「EU」になっていたり、人形使いを「彼女」と表現していた以外は内容的に差がなかったように感じました。ただ再吹き替えはされているようで、語気やエフェクトの違いを感じた部分もありました。これは昔の作品がやや聞き取りにくい傾向があったのに比べると、かなり向上してるなぁと感じました。
あと最大の差である人形使いの声が女性に変わった所ですが、自分としては前の家弓氏の方がぴったりくる感じを受けました。榊原良子という声優さん自体は非常に良いんですが、緊張しているのか持ち味を生かしきれていない印象でした。何だかもったいない。

という事で劇場で大枚はたいて観る価値がどのくらいあるのかというと、そんなに無いかもという感想です。ただ元の作品自体は好きなので、自分的には普通に満足できました。

スカイクロラ(映画版)

スカイクロラ
今年話題のアニメ映画「スカイクロラ(公式サイト)」を観てきました。はじめ題名の意味が分かりませんでしたが「The Sky Crawlers」という英題がついており、どうも「空を這う者たち」という意味のようです。原作は森博嗣の同名の小説で、監督押井守+制作ProductionI.G.という作品です。
この森博嗣という人は「すべてがFになる」という推理小説でデビューした工学部准教授兼小説家だそうで、実は妻がよく読んでる作家だったりします。自分的には最近推理小説にさっぱり食指が伸びないので縁遠い作家なんですが、スカイクロラのような全く毛並みの異なる小説を書いているとは…不思議な人です。まぁ実際に制作しているのは押井守+ProductionI.G.なんで、この組み合わせだとGhost in the Shellやイノセンスに近いんじゃないかと想像できるわけです。

でわ随分観客の少ない深夜のシネコンで観てきた感想を語りたいと思います。
まずバセットハウンドとかオルゴールとか押井守なモチーフが目に付きました。ヒロインにあたる草薙水素(くさなぎすいと)は小説オリジナルという事ですが、名前的にGhost in the Shellの草薙素子(くさなぎもとこ)を彷彿とさせます。そういう目で見ると、やたらに淡々と進むストーリーやあまり語られていないけど実は精巧そうな世界観などは、Ghost in the Shellを意識したものなのかなぁと感じました。この辺は原作小説を読んでみないと分かりませんが、もしかしたら森博嗣はGhost in the Shellやその原作に当たる士郎正宗のファンなのかもしれません。

あらすじはというと、欧州と北米によく似た国家連合が戦争状態にある架空の世界でのお話。主人公函南優一(かんなみゆういち)はヨーロッパ側の飛行基地に赴任します。前任者の不可解な失踪と仲間の死、そして草薙水素からのアプローチ(?)などがあり、淡々とお話は進んで行きます。ここまで物語の核心部分への言及はほとんどありません。
中盤から草薙瑞希という草薙水素の妹(?)や三ツ矢碧という女性パイロットが出てきて主人公に絡んだりするあたりから物語の核心部分に迫っていきます。あまりプロモーションを見ずに観に行った自分は、三ツ矢の説明的セリフでやっとキルドレの心理が理解できました。この辺でもう少し盛り上げてくるかと思いましたが、意外に淡々と物語は終局を迎えてしまいます。
絵的にはかなり美しいドッグファイトシーンが目をひきます。プロペラ戦闘機の空戦をよく表現していると評判のそれは自分の予想を越えてキレイでリアルした。登場人物たちは一様に淡々としており、草薙水素を演じる菊地凛子は一部違和感がありましたが、他の場面では役柄にあっているように感じられました。

興業的には大コケしたイノセンスに比べると、原作小説を読んでいなくても結構楽しめる点で一般受けはしそうです。ただ僕の大好きなパトレイバー2 The Movieやイノセンスのような押井色濃厚な作品に比べると、やや薄い印象は拭えませんでした。あまり期待しすぎず観ると結構満足できる…そんな作品でした。

ポニョは崖っ縁なのか?

崖の上のポニョ
投稿タイトルは弟の受け売りですが…。ハウルの動く城以来の宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ(公式サイト)」を観てきたので早速感想を書いてみたいと思います。

とりあえず見終って言える事、それは過去の作品にくらべて子供向けな印象を感じた事です。ぱっと見た感じでは小難しいメッセージ性を排して、分りやすい〜悪く言えば御都合主義的展開だなぁという印象を受けました。ポニョが水害を起こして(多分月が近づいてきて局所的な高潮が発生した?)町が水没してみたり人工衛星が降ってきたりしてますが、登場人物たちが能天気な感じでみんな大丈夫か?と突っ込みを入れたくなりました。大災害も奇跡もどんどん受け入れてしまう人ばかりなのには、違和感を感じました。まぁこれは自分が歳食ったせいなんだと思いますけどね。
そういった部分を除くと、自分的には完成度はかなり高い印象でした。現代劇のせいもあるんでしょうけど、声の役者さんの容貌とアニメのキャラクターが非常に似ていて、ぴったり合っている感じがしました。また展開もテンポよくダレるところもほとんどなく、気がついたら終局を迎えてました。この辺はさすがジブリといったところです。

まとめると、過去になく子供向けに振っているという意味では、今までの宮崎駿作品と違う方向性を感じました。「ルパン三世カリオストロの城」や「ナウシカ」が好きな自分としてはこの方向性はあまり歓迎できないんですが、宮崎駿も流動的なアニメ業界の中で方向性の転換を迫られている気がしました。そういう意味でポニョは崖っぷちの作品なのかもしれません。