読書

希望の国エクソダス

希望の国エクソダス
村上といっても村上春樹はよく読むんですが、村上龍の方はあんまり読みません。というのも僕の中のイメージでは「限りなく透明に近いブルー」や「フィジーの小人」みたいな極端なエログロ描写のイメージが強く、テーマや方向性もちょっと心の琴線に触れない印象があるからです。って事で最初に読んでから食わず嫌いな感じが続いていたんですが、Webでふと「希望の国エクソダス」の書評を見たところ、エログロ描写はなく社会派な内容らしいとの事で気になって久しぶりに読んでみることにしました。

主人公はフリーのしがない雑誌記者で、読者の代理として一人称でストーリーを追っていきます。2001年の6月、日本の中学生(通称ナマムギ)がパキスタンで地雷撤去を始めた事件の取材の最中に、彼の元へ向かおうとした中村君という中学生に出会ったことからお話は始まります。この後日本国内で中学生の集団不登校が発生し、中村君を介してその事件の中心的人物である「ポンちゃん」達と関わっていきます。
面白いのはこの主人公の恋人(?)が経済記者でとっつきにくい経済のお話をしてくれるんですが、それが中学生たちが起こす経済活動の説明にもなっているところです。僕はWebの助けを借りても全部を理解できませんでしたが、中学生たちの行動をおおざっぱに追う事は何とかできました。しかしよくもまぁ作者はこれだけ取材したものです。自分があまりに経済のことを知らない事に、主人公同様若干落ち込んでしまいました。

で、この作品に出てくる中学生ってのがすごく良かったんですね。いわゆる非行や不良という形でもなく、冷静に現在の社会に編入されることに異論を唱え、そしてそれを実行していく…まさに自分が中学生のときになりたかった理想の姿でした。中学生時代は自分が興味のないお仕着せの勉強なんて大嫌いだったし、それを従順に受け続けることに強い違和感を感じていました(つまり優等生タイプではなかったわけです)。その思いを晴らしてくれるような展開にちょっと心躍ってしまいました。
ただ主人公が彼らを追い続けながら感じているとおり、その中学生たちもやはり中学生なりの経験しかなく成長とともにまた様々に変化していく所がリアリティがありましたね。

あと本当にそんな事できるんだろうかと思ってしまう部分もありますが、後半の野幌への集団移住は思考実験的にとても面白かったです。こういう経済システム(ひいては社会システム)を作るという発想力、自分にも欲しいなぁと思いました。

今回この本を読んで、村上龍氏に対する評価が一変しました。他の本、例えば「半島を出よ」とかも読んでみようかと思いました。

キャラ化するニッポン

キャラ化するニッポン
講談社現代新書で読むジャンルは精神心理学関係が多いんですが、現代文化論的なものも時折読みます。最近あまりそう言った分野と縁がなかったので書店で立ち読みして、幾つか面白そうな本を買ってみました。今回は買った本の一つ「キャラ化するニッポン」の感想を書いてみようと思います。

そもそもこの本の購入の動機が、「タイトルにビビっと来た」という実に感覚的な理由からでした。なんでそんなにビビっと来たかというと、ちょっと前から「キャラ立ちしている」なんて言葉をよく使うようになっており、タイトルを読んだ時、それを初めて自覚したからなんですね。キャラという概念がいかにしてニッポン社会を支配しつつあるのか、急に気になり始めたわけです。

本の構成ですが、主にアンケートを根拠にいかにキャラがニッポン社会に浸透しているのかという部分と、様々な現象をキャラという観点で説明しようという部分に分かれます。文章は非常に平易で1時間程度で読み終えてしまいましたね。
この本によると自分はちょうどガンダム世代にあたり、キャラクターグッズに囲まれて子供時代を過し、今大人として社会を担うようになった第1世代にあたるようです。そういう視点から見ても確かにキャラという存在は周囲の同世代に蔓延しており、キャラがニッポンを覆っているという内容には非常に共感できました。そして人間関係におけるキャラの割り振りがアイデンティティに影響し、自分を構築していくという説明にも非常に実感がもてました。
ただ後半は急に文化論的になり過ぎて理解しづらい内容になっているのと、引用が多くオリジナリティは余り無さそうなのが残念です。特に身体感覚の喪失をキャラに移入する事で取り戻すという意見は、自分的には強引さを感じる所がありました。

ただキャラという観点から周囲を見直すには凄くためになりました。自分を売り込む手段として、また周囲に協力してもらうための方法論として、役立ててみたいと思いましたね。

ハゲタカ

ハゲタカ表紙

ハゲタカという小説をお義父さんに勧められて読んでいたんですが、久々にのめり込んでしまったので感想を書いてみます。
そもそもこのハゲタカというのは、経営危機に瀕した企業を買いあさり売り飛ばす外資系ファンドの蔑称で、実際にあった話では、スティールパートナーのブルドックソース買収事件などで有名です(←某wiki受け売り)。
学生時代をほぼ単科大学状態で過ごし卒後も医療にしかかかわっていない自分はこういった経済関係の話には圧倒的に弱く、知識のないまま読んでも大丈夫かどうか不安でしたが、読み進めるにしたがってそれは完全に杞憂に終わりました。というのも普通に娯楽作品として十分に面白かったんですね。

ストーリーとしては、ハゲタカファンドマネージャである鷲津と、日本の銀行マン出身で企業再生に身を投じて行く芝野が、企業買収などを通じて時に戦い時に協力しあうお話です。ハゲタカ上下巻とバイアウト(文庫版はハゲタカII)上下巻の合計4冊にわたる、僕にとっては豊穣の海に次ぐ長編小説でした。

最初はやっぱり経済用語の意味が分らず携帯電話からgoogleやwikipediaを頼りながら読んで行きましたが、お話が緊張感を持ちながらもダイナミックに展開していくので、そう言った作業が全く苦にならないんですね。早く次の展開が読みたい!、と常に思いながら読み進めてしまいました。
あと読んでいて爽快だったものが、鷲津の超人的行動力です。タフで寡黙なクセに次々と買収案件を片付けて行く、まさにハードボイルドな活躍にかなり憧れてしまいました。反面芝野も含めて人間性が垣間見できるエピソードも後半に挿入されており、現実離れし過ぎないバランス感が良かったです。
唯一残念なのは、アラン君に振り掛かった不幸な事件の顛末が不明瞭なままお話が終わってしまった事です。これ明らかに次作への布石だと思うんですが、今の所そう言った作品が出版される気配がないのが残念です。

今となってはちょっと古い作品ですが、ハードボイルド小説を読みながら経済の勉強も進む実にお得な作品です。続編の発表を心待ちにしておりますんで、作者の方よろしくお願いします。

「関係の空気」「場の空気」を読んで実用化しようと思い立ったり

関係の空気場の空気の表紙"
デザインが変わってどうも馴染めない講談社現代新書ですが、最近ポロポロと新刊が出るのでマメに店頭で立ち読みしています。その立ち読みの最中にふうむと唸ってしまった本があり、その抄録と感想を書いてみたいと思います。

「関係の空気」「場の空気」というタイトルが示す通り、人と人の間にある空気について特に日本人論的な観点で書いています。
主張自体は非常に明解でして、まず主に個人間で発生するのが「関係の空気」で、これは会話スタイルを同様にしようとする力があり、個人間の親密さを深めるとの事。本文でも紹介されているように学生が非常に狭い範囲でしか分らないようなアダ名を教師につける事で連帯感を共有するような事です。
次に何を言ったら良いのか分らない気まずい空気を「日本語の窒息」と表現し、具体例をあげていきます。どうもコミュニケーション不全状態を「日本語の窒息」と表現しているようです。
ここら辺までは特に目新しい感じもなくはぁはぁと頷いて読み進めました。

この後の「場の空気」というヤツがなかなか面白かったわけです。3人以上の人で共有する暗黙の了解みたいな事を指しているわけですが、この空気に溶け込めないとそれを共有している集団には入っていけず、いじめや排除の対象になるとの事。じゃぁその空気はどうやってできるの?と思って読んで行くと、暗黙の了解的なものを作って、同調圧力を利用し周囲に強要する事ができればよいようです。具体的にはコードスイッチ話法(ですますとだである調の混合)で反論をさせにくいしゃべり方をしつつ、省略や暗号化などで周囲と非対等な状況を作れば良いようです。これには正直唸ってしました。この方法を使ってみたい…。

最終章で不必要な暗号化をなくして非対等性を排除して行こう的なことが書いてありましたが、自分的にはむしろ周囲の空気を掌握できる方法論として面白く読むことができました。

レバレッジ人脈術

レバレッジ人脈術
最近はまりつつあるレバレッジシリーズの人脈編である「レバレッジ人脈術」を読んだので自分なりに内容をまとめてみました。

人脈術というタイトルの通り人脈を作り活用する方法論が書いてあるわけですが、このシリーズらしくシンプルにまとまっています。
キーワードはコントリビューション(貢献)で、人脈を作る初期においてはリターンを期待せずにひたすら自分が貢献する事を考える、という主張のようです。この貢献を続ける事で、やがて然るべき相手が自分に対して貢献をしてくれるという発想のようです。効率を重視するにもかかわらず性善説な考え方が面白いです。

内容としては第1章が人脈に関する考え方、第2章はアプローチ、第3章コミュニケーション、第4章でその人間関係の継続方法、第5章では人脈をレバレッジネットワークへ昇華させるという構成になっております。
レバレッジシリーズに共通した特徴として効率を重視してはいますが、反面一度人脈を作ろうと決めたら下準備はトコトンやるというスタンスで、怪しいHowToものとは異なった信頼性を感じました。それだけに実行には心理的ハードルが高いとも言えるんですけどね。

ふと自分の周りの人を眺てみても人と人を繋ぐHUB的な人は、特に見返りを期待する素振りもなく周囲に貢献しようとしている気がします。自分はそこまで人間ができていないですが、意識する事なく周囲に貢献しようとする人の周囲には人が集まって来ているのは事実だと思います。こういった現象を明文化しただけでも凄い事なんではないでしょうか?。このあたりにちょっと感動しました。

投資というとちょっとあざとい感じですが、人間関係の啓蒙書として面白い内容でした。他のレバレッジシリーズとは違ってかなり新鮮な内容だったので、古本屋に売らず本棚に置いて時折見返してみようかと思います。