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小説「奔馬」

奔馬文庫

豊穣の海4部作の中で第2作目になる「奔馬」を読了したので、感想でも書いてみようかと思います。

前作「春の雪」で主人公松枝清顕は死んでしまいました。続編という事で誰が主人公になるのか心配でしたが、その松枝君の唯一の親友、本多繁邦が主人公になっていました。
時代は少し進んで昭和初期、本多氏は中年を迎え判事として活躍している頃、松枝清顕の家庭教師であった飯沼の息子、飯沼勲に出会います。その脇腹に松枝清顕と同じ黒子を見つけた事から、彼は飯沼勲が松枝清顕の生まれ変わりと信じ、人生が狂い始めます。

1人称は飯沼勲と本多繁邦を交互に移り変わり、本多繁邦が狂言まわしとしての役割を果している事を考えると主人公は飯沼勲と考えた方が自然な印象です。この飯沼君、神風連史話という本に心酔し純粋な方法で世の中を改革しようとします。結局それは失敗に終わるんですが…あとは読んでのお楽しみですかね。
前作と比べると飯沼勲も本多繁邦も松枝清顕のような耽美系うじうじ感はなく比較的さっぱりした性格のため、物語はわりとテンポ良く進行します。後半に進むに従って飯沼勲は究極の純粋性による改革に傾倒していきますし、本多君はそんな飯沼勲にやはり傾倒し今まで属していた理性に満ちた司法の世界からドロップアウトしてしまいます。

飯沼勲の行動は、青年期の過剰な理想主義でありいかにも三島由紀夫的です。読んでいて自分もそれに惹かれてしまうあたりが危険でした。そしてなんとなく予想した通りの結末が飯沼勲とその周辺に訪れます。そういう意味では、飯沼勲を巡る一連の破滅を分かっていて楽しむという、カタルシス的作品と言えます。まさに三島由紀夫的作品でした。前作と同じテイストを期待するとかなり違和感を受けると思いますが、三島由紀夫が好きなら全く問題ないと思います。

早く次読みたいですね。