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小説「春の雪」

映画の春の雪の感想を書いてみたので、小説の感想も書いてみようかと思い立ちました。
春の雪文庫

小説春の雪は、三島由紀夫原作の長編小説「豊穣の海」の第1部になっています。華族の青年松枝清顕と皇族に嫁ぐ事になった綾倉聡子の禁じられた恋のお話です。読みかえして見ると映画版は結構忠実にストーリーを再現しており、冒頭に綾倉伯爵と蓼科が出てくる事と飯沼という書生が出てこないくらいしか大きな違いはなかったです。もう結構古い作品ですし、ネタバレと喧しい事は言わずストーリーを追いながら感想を書いていきます。

まず、松枝清顕君はかなり内省的で、前半部分は彼の一人相撲と言えます。綾倉聡子に対する自分の気持ちが良く理解できず、彼女を心の中で責めてみたり自分に言い訳をしてみたり、まぁ理屈っぽい内気な青年ってのはこういうものかなと若干感情移入してしまいます。ただここまでの松枝君はかなりジクジクと考えてばっかりなので、正直ちょっと読み疲れました。
そうこうしているうちに彼女は皇族へ嫁ぐ事が決まってしまいます。ここまで事態が悪化して彼は初めて自分の気持ちが恋だと気が付くわけです。松枝君のバカさ加減に憤慨しながら、すっかり小説に感情移入している自分に気付いてしまいました。
あとはすっかり恋愛小説です。許されないにもかかわらず、二人はお互いに逢瀬を重ねるわけです。作中の松枝君は恋愛まっしぐらモードになっていますが、こんな事が長続きするわけがないと思っている読者ははらはらさせられます。僕はこの段階で三島由紀夫の術中にはまっていました。

そして読者の予想通り、悲劇的な結末が二人を待っています。この辺は読んでからのお楽しみですね。
まぁストーリー自体は2時間程度の映画でも結構忠実に再現できる長さですし、展開自体も十分予想できる範囲なのでそう言った所はあまり意外性はないと思いますが、とにかく心理描写が細かく登場人物の描き方が重厚です。やっぱり三島由紀夫は凄いや、と思ってしまいました。映画しか見ていない人、また最近心理描写が薄っぺらな小説ばかりで手応えがないと思う人は必読です。
蛇足ですが、この悲劇的結末からどうやって第2部に繋がるのかだけが不安でした。