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海辺のカフカ

久しく本を読む機会がなかったんですが、外勤先が地元に変わり長時間の電車通勤が始まったのでずっと読まなくてはと思っていた村上春樹の『海辺のカフカ』を読んで見ました。
元々ハードカバー版を持っていたのですが、持ち運びがイマイチなので文庫版を買い直して読みました(妻にはお金の無駄使いと起られてしまいましたが…)。

内容は15歳の田村カフカ君がおもむろに家出をするシーンから始まる長編作で、読みおわるのに結構時間がかかってしまいました。作風としては『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』に似ていて、田村カフカ君の家出とナカタさんの猫捜しの並行する2つの物語が徐々にシンクロしてくる進行になっています。ただ主人公が15歳の少年という所が結構画期的でした。今までの村上春樹の作品は青年期から30代の男性が主人公の作品が多かったので、その点が目新しかったです。まぁ村上春樹の作品だけにいやに大人びた子供、というかこ難しい事を喋る子供ですけどね。読みながら自分の少年時代の理屈っぽさや頑さを思い出して、意外に自分の当時の思いに重なるかもなと思いながら読みました。

あんまり詳しく書くとネタバレになるので書きませんが、サエキさんもカフカ君も内面に抱え込んだ根深い問題に立ち向かう方向に話が進む所が結構好きでした。村上春樹がよく書く『既に損われてしまったものや失われてしまったものとの対峙』がテーマにあるんですが、決して後ろ向きにならず新しい出会いや喪失を経て新しい自分に変わって行くカフカ君に(と実はホシノ君にも)ちょっと共感してみたりしました。決してハッピーな物語とは言い難く読み終わるとどっと疲れましたが、読み終わった時には希望を感じられて良かったです。村上春樹ファンとしてははずせない作品でした。