No.23の記事

アフターダーク

村上春樹というと「海辺のカフカ」という本が発売されて久しいですが、ほぼ発売と同時に購入したにもかかわらずまだ読めていません。というのもハードカバーで2巻構成というのが引っ掛っかかって、持ち運びが億劫なんですね。。それでも途中まで読んだんですが、ちょっと間があいたら内容を忘れてしまいそれ以降読む気が失せてしまいました。
そんな事を言っている間に最新巻「アフターダーク」が発売になってしまいました。またもやハードカバーで読まなくなりそうだったので買うのを控えていたんですが、たまたま借りるチャンスがあり、意外に文字も大きく量は少な目だったので当直中に一気に読んでしまいました。

というわけで早速感想です。
まず気になったのは、非常に映画的というか第3者的視点の描写が多いなぁという所です。主人公達の主観で物語が進行する一方、「視点」という仮想的な読者の目を導入し、物語の進行を追わせるという話の作りをしています。これは今まで村上春樹の作品ではなかった表現法ななんですね。なのでまるで映画を見ているような感覚に落ちいります。これは新しかった。

ストーリーは深夜のファミレスで時間を潰している主人公(マリ)が、昔一度だけ会った高橋くんと再会する所から始まります。その夜主人公達の遭遇するちょっと非現実的な出来事を通して語られる「何か」は明確な結論を出しきらずに終わってしまいます。非現実的性という点ではファンタジックな「ねじまき鳥〜」に似ている印象でしたが、余りにも短い間に明確な結論が語られることもなく物語りが終わってしまったので、「何か」の解釈は読者次第といった所のようです。昔どっかの本で読んだ話では、村上春樹はプロセスを練りこむような書き方はせず、頭にある自分でもどう展開していくか分らない話をひたすら書き付けていく書き方なんだそうなので、もしかしたら続編や書き直し版が出るかもしれません。
それともう一つ感じたのは、登場人物が結構深く練りこまれているなぁという点です。主人公との対話を通して出てくる人達の生い立ちが明かされていくんですが、これが結構深い。最初はマンガ調なキャラクターだなと思ったんですが、それぞれそれなりの思いを持ち語る言葉にも現実味があります。どうも「アンダーグラウンド」以降の村上春樹は、キャラクター造りにリアリティーが強くなった気がしました。
あと最近の作品に多い悪や暴力が存在する一方、これも最近の作品ではよく出てくる救いの兆しのような表現もあり、やっぱり村上春樹なんだなぁと思える点は多かったです。

短めのお話なので、何度も読みかえしてその「何か」を感じとってみようかと思っております。村上春樹ファンならずとも面白いと思う作品でした。