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象の消滅〜村上春樹短篇選集

象の消滅
講談社現代新書が大好きな僕が珍しく小説コーナーを徘徊していると、村上春樹の見慣れない本が置いてありました。「象の消滅」と書いてある派手な黄色の辞書サイズの本は、アメリカで発売されていた村上春樹の短篇選集を日本語に訳して作ったものだそうです。大きい割にハードカバーでなくペラペラとめくって読みやすそうな所が気に入って、内容的には特に目新しくもないのに買ってしまいました。

掲載されている短編は1980年から1991年までの比較的古い短編で、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、「カンガルー通信」、「パン屋再襲撃」、「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」、「眠り」、「ローマ帝国の崩壊・1881年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界」、「レーダーホーゼン」、「納屋を焼く」、「緑色の獣」、「ファミリーアフェア」、「窓」、「TVピープル」、「中国行きのスロウボート」、「踊る小人」、「午後の最後の芝生」、「沈黙」、「象の消滅」の全17作です。村上春樹の作品によくあるように男性が主人公の場合ほとんど全てが27歳〜31歳で独身か既婚で共働きで子なしという設定で、ふと今の自分にとても似通っている事に気がついて今まで以上に感情移入してしまいました。そしてその感情移入の関係からか、昔読んだ時とはだいぶ違った印象を受けました。

昔この短篇選集の作品を読んだ時は、ストーリー自体に目が行ってその主人公に同化する感じはなかったので、今受ける感じよりももう少し非現実感が強かったように感じました。むしろ学生時代はノルウェイの森みたいに主人公の設定年齢が近い設定の方がリアルに感じていました。
それが歳を食ってからこの短篇選集を読むとこっちの方がリアルなんですね。30歳という節目を迎え自分がどこへ向かって行くのか分らない不安感はあるんですが、若い頃程の先が見えない絶望感はない…というような気持ちです。心に楔を打ち込まれるようなショックはありませんでしたが、心をゆっくり揺すぶられるような感じでした。
そんなわけでこれを機にまた村上春樹熱が再燃しそうな予感です。外勤の行き帰りに時間があるので、主人公が30歳くらいの設定の長編小説〜例えば「国境の南、太陽の西」でも読みかえしてみようかと思い立っております。