No.28の記事

神の子供たちはみな踊る

村上春樹復刻ブーム(自分以内限定)のため、久しぶりに文庫本の棚を整理して村上春樹を読みあさっております。しかし古本屋に売り払った本も多く、意外に品ぞろえが悪いので近所のTSUTAYAへ欠品補充に行くと、その昔ハードカバー本しか売っていなくて一度手放した「神の子供たちはみな踊る」を発見。早速購入して読んでみました。

ちょうど阪神淡路大震災の後に書かれた6本の短編を一冊にまとめたもので、これが発売した頃に一度読んだきりだったものでした。内容は「UFOが釧路に降りる」「アイロンのある風景」「神の子供たちはみな踊る」「タイランド」「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」に分かれています。

それで感想。昔これを読んだ時の印象は「かえるくん」と「珍しくハッピーエンド」だったんですが、2回目に読んでもやっぱりそういう印象でした。
あと何度読んでも今一メッセージの分からない「UFOが釧路に降りる」はたぶん長編小説に展開していくべきなんだろうなと思った次第。いかにも尻切れな終わり方なので、これは続編に期待でした。
ほかの作品はそれぞれ話が短くまとまっており面白かったんですが、一番いいなと思ったのは「蜂蜜パイ」でした。これが珍しくハッピーエンド風なんですね。大学時代に仲の良かった男2人と女性1人で、結婚した男女2人がその後離婚することになりもう1人の男性とその離婚した女性が再婚するかもしれない、という話です。実際読んでみると、事の深刻さに反して当事者での3人の男女の間がとてもあったかい感じがして、過去に通り過ぎた色々なことをひっくるめて受け入れようとする主人公の男性の優しさが良かったです。

全体的に感じたのは、この短編集の主人達はそれぞれ様々な過去に苦しんだりしているけど、最終的に受け入れ生きようとしているんだなぁということです。
掛け替えのないものの喪失を書くことの多い村上春樹にしては、ちょっと心が暖かくなる話でした。