No.285の記事

希望の国エクソダス

希望の国エクソダス
村上といっても村上春樹はよく読むんですが、村上龍の方はあんまり読みません。というのも僕の中のイメージでは「限りなく透明に近いブルー」や「フィジーの小人」みたいな極端なエログロ描写のイメージが強く、テーマや方向性もちょっと心の琴線に触れない印象があるからです。って事で最初に読んでから食わず嫌いな感じが続いていたんですが、Webでふと「希望の国エクソダス」の書評を見たところ、エログロ描写はなく社会派な内容らしいとの事で気になって久しぶりに読んでみることにしました。

主人公はフリーのしがない雑誌記者で、読者の代理として一人称でストーリーを追っていきます。2001年の6月、日本の中学生(通称ナマムギ)がパキスタンで地雷撤去を始めた事件の取材の最中に、彼の元へ向かおうとした中村君という中学生に出会ったことからお話は始まります。この後日本国内で中学生の集団不登校が発生し、中村君を介してその事件の中心的人物である「ポンちゃん」達と関わっていきます。
面白いのはこの主人公の恋人(?)が経済記者でとっつきにくい経済のお話をしてくれるんですが、それが中学生たちが起こす経済活動の説明にもなっているところです。僕はWebの助けを借りても全部を理解できませんでしたが、中学生たちの行動をおおざっぱに追う事は何とかできました。しかしよくもまぁ作者はこれだけ取材したものです。自分があまりに経済のことを知らない事に、主人公同様若干落ち込んでしまいました。

で、この作品に出てくる中学生ってのがすごく良かったんですね。いわゆる非行や不良という形でもなく、冷静に現在の社会に編入されることに異論を唱え、そしてそれを実行していく…まさに自分が中学生のときになりたかった理想の姿でした。中学生時代は自分が興味のないお仕着せの勉強なんて大嫌いだったし、それを従順に受け続けることに強い違和感を感じていました(つまり優等生タイプではなかったわけです)。その思いを晴らしてくれるような展開にちょっと心躍ってしまいました。
ただ主人公が彼らを追い続けながら感じているとおり、その中学生たちもやはり中学生なりの経験しかなく成長とともにまた様々に変化していく所がリアリティがありましたね。

あと本当にそんな事できるんだろうかと思ってしまう部分もありますが、後半の野幌への集団移住は思考実験的にとても面白かったです。こういう経済システム(ひいては社会システム)を作るという発想力、自分にも欲しいなぁと思いました。

今回この本を読んで、村上龍氏に対する評価が一変しました。他の本、例えば「半島を出よ」とかも読んでみようかと思いました。