No.32の記事

久しぶりに村上春樹

某病院で仕事中あまりに時間が余っていたので、最近僕周辺で若干話題になった村上春樹の「ダンスダンスダンス」を読んでみました。結局上下巻ともに読破してしまったので今回はその感想なんかを少々書いてみます。

まず「ダンスダンスダンス」は「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」の続編にあたる作品にもかかわらず、僕は前作をすっかり忘れておりました。あいにくわが家には前作が一つもなく(おそらく引っ越しの時に中古本屋に売ってしまった)、そんな状態でちゃんと話が追えるか心配でしたが読み始めると文体が非常に村上春樹的で、まるで昔住んでいた土地に久しぶりに帰ってきたような、そんな印象を持って読めました。
また読んでいるうちに前作の話を少しづつ思い出せたので、そこであった様々な出来事や今生きている現実に対して、自分を空っぽにして単純作業的に生きている主人公が自分を取り戻そうとして動き始めるところに、かなり没入して読めました。
一度没入してしまうと後は最後まで一気に読めてすごく気持ちよかったです。

没入して感じたのは、非現実的な出来事が多い話の中で主人公の内的独白が比較的ポジティブというか現実的な感じで、他の作品の様な突き放された感じがなかった事です。例えば「ノルウェイの森」のように現実的で回避できない出来事ばかりが起こり次第に無力感に占められていくのとは好対称でした。
またこの物語で主人公「僕」は親友になった旧友や心を通わせた人の死と別離を短時間にいくつも経験します。没入しているだけにその喪失感はすごくつらいんですが、最終的にはそれらをすべて受け入れ新しい生き生きとした人生を始める主人公の姿にすごく癒やされました。まぁそれはこの作品がたまたまハッピーエンドと言える結末だったからかもしれませんけどね。

それでもって総評。久しぶりに村上春樹ワールドに接して、結構楽しめました。村上春樹の作品はいつもそうですが、この作品は特に日常に沈んでいく自分を少し上の方に引っ張りあげてくれます。
なので日常に埋没しかけている自分にブレイクスルーがほしい人、「ノルウェイの森」で村上春樹を敬遠している人などには是非読んでもらいたい作品ですね。