No.423の記事

心の科学〜戻ってきたハープ

心の科学

高校時代の友人に、心理に興味があるならと勧められたのが「心の科学〜戻ってきたハープ」(原題:extraordinary knowing)という本です。あらすじとしては、無くなったハープがダウジングによって手元に戻ってきて以来、いわゆる透視のような現象について科学的アプローチをするようになった心理学者の体験談です。構成は全12章+エピローグと結構なボリュームですが、第5章くらいまでは自身の体験が主で、その後から他の研究者の業績を交じえた話が主になります。これを読み終えたので感想でも書いてみようと思います。

まず最初の著者の個人的経験とそれから導き出される仮説の部分は、突拍子もないので全然受け入れられませんでした。これで早速挫折しかけるわけですが、中盤から著者が他の研究報告についていろいろ調べ始め、それらが紹介されてくると面白くなります。それぞれは限られた事象の報告でしかないんですが、各現象の背後にある共通モデルを著者がアレコレ考え始めると、自分もそれに引き込まれて俄然面白くなってくるんですね。
結局多数の異なる研究者が透視や「透視」「予知」現象についての科学的実証実験を行い、ある程度の確実性をもってそういっ現象が存在しうるという事は自分的にも納得できました。ただどうしても受け入れられないのが「遠隔地を挟んだ人どうしの心がなんらかの形で接続され得る(もしくは同一化される?)」という著者の仮説です。もう少しもっともらしくて実証可能な部分から順に積み上げてくれれば、受け入れ易かったのかもしれませんが、ルポ的な文書のためそういう書き方をしておらず、とても残念でした。
自分なりに仮説を考えてみところ、論理的な説明を伴わずに正解を選んでしまう「勘」の延長上に「予知」や「透視」があるんじゃないかな〜という所に落ち着きそうです。ニューロンの塊である脳みそが複雑な反射弓の集合体だとすれば、論理的思考では解答が出せなくても何らかの「正しい」リアクションを起こせる「勘」は説明できます。同様にある程度対象の情報が分かっていれば、確率は低いけど「透視」「予知」じみたことはできるようになるんじゃないかな〜と思うわけです。ただこの仮説だと、事前情報のない遠隔地の状況やランダムな事象についての「予知」や「透視」については全く説明できません。うーん。やっぱダメか。
ま、脳味噌はブラックボックスで当の本人でさえも何を知っているのか全て把握しきれてない、という点では著者と同じ意見なのかも…とお茶を濁してみる。

あとどうしても引っかかったのは、実証困難で傍証から推測せざるを得ないという共通性があるにしても、量子物理学と心理学を同じレイヤーで語っている部分です。あくまで比喩として言ってるだけかもしれませんが、夢のある話だねぇ〜と笑って流す事はできず、むしろ胡散臭い感じがして残念でした。

とまぁブツブツ文句を言ってますが、最近読んだ本の中では最も考えさせられた本でした。まず「透視」「予知」に関する(比較的)科学的なレビューとして、非常に興味深かったです。それと既存の原理原則で説明しきれない現象に対して、自分なりに現象モデルを想像する楽しみがありました。一見して胡散臭い事象に著者が引き込まれてしまったのもうなづけるわけです。そう考えると、やっぱり研究者にこそ読んで欲しいなぁと思う本でした。