5月13日 ☆ 初めてのナレーション ♪
今日も今日とてボイトレで大阪へ。行く前に郵便局のATMでお金を出そうとしていると、何だか知らないおじさんが
あたしの手元を覗きこんで「はあー!!」とか、変な声を出した。何?この人、失礼なっ!!あたしは思いっきりそっちを睨んだ。
このおやじ、帰りにお金盗ろうと狙ってるんじゃないでしょうね?とりあえず、威嚇しとかなきゃっ。
全く・・世の中変な人多いのだからっ。
少しご立腹で駅のホームの端っこの点字ブロックを一番前の車両に乗る所まで歩いていって、電車が来るまで待った。
新快速が来て無事乗りこんだら「席どうぞ」とドアの横の補助席を譲ってくれた人が居た。ありがとうっ、
世の中、変な嫌な奴ばかりではないようです。
大阪へ着いてホームを歩いていると声を掛けてくれた男の人が居た。その人は御堂筋線に乗るつもりだったみたいなのに、
あたしが谷町線に乗るのだと言うと、どこからでも行けるから、と谷町線まで一緒に連れていってくれた。
「谷町線はムラサキなんですよ」「看板に書いてあるのが紫色なんですか?」「電車もその色がついているんです。」
へぇー、そうなってるとは知らなかったねぇー。大阪の地下鉄は、谷町線がムラサキ、御堂筋線が赤。
四ツ橋線が青で中央線は緑色。堺筋線が茶色で千日前線がピンクだっけかなあー?その人、全部の色を覚えているんだよ。
それがさらっと出てくるのに少し感心っ。
その男の人の身内の人も目が不自由だったらしく、その人も何年か前にホームヘルパーの資格を
取ったのだそうだ。今は別の仕事をしているのだけど、あたしの白杖を見て、思いきって声を掛けてみた、
と話してくれました。せっかく出会えたのだし、と、森島はまたホームページを見てもらおうと名刺ナンパ♪
(街で出会った人にHPを見てもらうためと、もしかしたら、メル友になれる可能性だってあるからHPアドレスとメルアドがついてる名刺を渡すことを
「名刺ナンパ」とあたしは呼んでいるっ)
ボイトレも無事終わり、帰りに少し寄り道をしたあと、あたしは神戸へと急ぎます。
今日は8時から別番組の人に頼まれた「CM読み」をするのです。場所はいつもの無限の稽古場、
目指すは定休日のウィズ。三宮で降りて信号を渡ろうとしたら、女の子が声を掛けてくれた。そうそう、JRの中央口から阪急電車側に
渡る信号はいつも人がごちゃごちゃで、よけると、まっすぐに渡れなくてメンドーなのだ。丁度良い時に声を掛けてくれてありがとうっ。
その人はバスに乗るつもりだったけど、北野坂の麓に渡る横断歩道も付き合ってもらった。話を聞くと、その人の大学院の時の先輩が
全盲の人だったけど、パワーのある凄い人だったらしい。ふーん、いろんな人がいるんだね?とりあえず、
この人にも名刺渡しちゃえっ☆
さてさて、今日の本題っ♪今日は初めての体験、ナレーション原稿読みっ。
実は先週ウィズのお店に行った時に、今回の依頼主が来てて、誰か読む人がいないか、マスターに
相談していた。その時に牛さんが「サッちゃんもいけるで」と言ってくれたのがキッカケだ。
「この原稿なんだけど」と差し出された原稿は残念ながらあたしには見えなくて、どうしよ、って、
思った時、牛さんが「メール送ったら、パソコンで読めるから」と言ってくれた。うんっ、なるほど!
何だか人事のように思ったのは、とりあえず、原稿が読めるかのプレッシャーで冷静さを失いかけていたのかもしれないね。
依頼主シャーリーさんは、その場で原稿をあたしのメールに送ってくれた。
原稿がメールへ送られてきたのが、先週の水曜日。15秒ぐらいの広報的CMで、3パターンあった。
うわあー、固い文章っ。エイズ国際会議とかの広報っぽいから、ホントこれは台詞とは違う性質のものです。
見えてる時に少しの間、アナウンサーの事務所にレッスンで通ってた事あるけど、あたしは朗読も
ナレーションも得意じゃなかった。まだその頃は原稿は見えてて読めてたのだけど、できればナレーションとかは
避けてしまいたいジャンルでした。今は原稿を読むのも困難だし、あたし下手っぴいだから、もし、
「やりたい人?」って聞かれたら、きっと自分では手をあげなかったであろう。だけど、今回は牛さんが
「彼女ならできるよ」と言ってくれた手前、投げ出すわけには行かないし、少し前から、必死で点字が
読めるように頑張って仕事の幅を増やさなければっ!!と思い始めていた所だから、これは願ってもない
現場なのである。だけど、まだ点字をすらすら読めないあたしは、とりあえず、今は原稿を覚えてしまうしか手段がない。
頑張らねばっ、と思っていながら、ぐずぐずしてたあたしは、原稿を覚えたのは、前日の無限の稽古が
終わって家に帰った夜中の1時間もなかった。そして、今朝、起きて復習したぐらい。だけど、その段階では完璧に覚えられてたんだよおー。
本番の時、あたしの前に録音したのは、無限のメンバーで実際にナレーションとかの仕事をしている
女の子だった。さすがに仕事をしているプロだけあって、声も響くし、押さえるところはちゃんと押さえて読んでいる。
あたしはそんなにちゃんと読めないけど、とりあえず、度胸だめしも兼ねてやってしまおうっ。だって、
こんな現場を踏ませてもらえるなんて思ってもみなかったんだもん。それを逃げるわけにはいかないし、
大丈夫、本番前に復習して言ってみたら、ちゃんと覚えてたもんっ。
ナレーションで初めて立つマイクの前。何だか緊張する。原稿を片手にでも持っていれば、少しは落ち着くのであろうが、あたしは必要ないから、手持ちぶたさんである。
歌を歌う時ならリズムや音程を取るために手ぶりとかしてしまうのだが、ホントつかまるところでも欲しい感じ。
緊張しすぎてるわけでもないはずなのに、何だか落ち着かない。おまけに完璧に覚えて読めたはずの
原稿が、一度つまずくと、どんどんドツボにはまっていく。そうっ、あたしは収録物よりも生放送のが得意だったんだよねぇー。
やればやるほど煮詰まっていくのだろうから、途中から「いいや、あたしらしく行くぞっ」と、
台詞のつもりで読んだパターンが何とかOKを出してもらった。まだ2パターン残っているのだが、
今回これなかった人の分もあるし、あとの収録が押してたので今回は1パターンのみで終了。
本番終わった後は、落ち込みというよりも「まだまだ未熟だ」と少し反省モード。でも、
以前、声優養成所の理事長に言われた言葉がある。「普通の人は実力が60パーセントでも現場に行かせる。
たとえ、目が見えてなくてマイクの前まで手を引いてもらわなければならなかったとしても、ちゃんと仕事を完璧にできれば、見えなくても仕事はある」という理屈。
と、言うことは完璧でないあたしは一生現場を踏ませてもらえないことになるのだろう。最初っから100パーセントの人なんていないはず。
なのにハンディがあるから100パーセントじゃなきゃ、使い物にならないという、その理屈を裏読みしたあたしは、
「きっと、あたしは仕事をさせてもらえない。」そう思って養成所をやめた。もう何年も前のことだった。
その時以上に見えなくなった今のあたしが、下手くそなのに、一応ためしてもらえることが、何よりも
嬉しかった。
一応、前向きな森島になのだが、それでもいろいろな屈託はあるのだ。
さて、少しでも可能性が出てきたかもしれないあたしだから、マジで頑張って点字をすらすら読めるよう、
修行しなければっ。生まれつきの人とは違って中途失明の人は、点字をマスターさせるのが、なかなか大変だし、
パソコンのメールとか音声ソフトで、余計に点字離れしてしまいそうな所だけど、これは根性見せて、
できることの幅をもっと伸ばさなければっ!!そう思った森島であった。
家に帰ったのが夜中の0時前。一応メール落としておかなきゃ、とパソコンを開けると、
今日、地下鉄の色を教えてくれた人から早速メールが届いていたっ。今日は何だか盛沢山の一日でしたっ☆