☆ 「黄色いの」の謎!? ☆


 皆さんは、よく街や駅などで、道に横たわって伸びている黄色いブロックをご存知でしょうか? 公共の役所関係の建物には必ずと言っていいほど設置されているので、見たことない人はいないでしょう? では、あの黄色いの、名前は何て言うと思いますか?街で声をかけてくださる人々の反応は・・・。
、 「ほら、姉ちゃん、もう少し左に行けば・・」と通りすがりのおじさんが、自分のいる場所からは動かずに声をかけてくれます。 ん?左に行くと何があるんだっ?とか思いながら、少し左によると、足元に黄色いの、がある。ああ、これを教えてくれようとしてたのね、おじさん。 多くの人は「ほら、もっとそっちによると・・ほら、これ、これっ!黄色いの!!」と誇らしげに教えてくれます。 「ああ、点字ブロックですね?」「え?そういう名前なの?」と逆に尋ねられると、あたしも少し自信なさげに、 「え、点字ブロックって言うと思いますけど・・・」と答える。意外にも世間の人は、あの「黄色いの」の名前を 知らないみたい?「ほら、ここにブツブツがあるから」とか、「ほら、ここにこれっ!!」とか言う人が結構、多い。 面白いところでは、「ほら、もっと右によると、ぼわぼわがある、ぼわぼわが!!」と言うのを聞いたことあります。 ぼわぼわ?って、何だろう??? 踏んでみると、何の事はない、点字ブロックじゃん? あと、ある時、女の人が、「もうすぐ行くと、ふみふみがあってね、横断歩道があるから」と教えてくれて、 「へ?ふみふみ??」とすごく不思議そうな顔をしたあたしにその人は点字ブロックを踏ませて、 「ほら、ふみふみ・・」と教えてくれました。どうも名前がわからないものに対しての、いろんな人の ネーミングは興味深いものがありますね。

 あたしが点字ブロックに親しむようになったのは、今からかれこれ、丁度、5年ぐらい前なのです。 その頃、まだ自分より見えてない人と会ったことのなかったあたしは、縁があって、盲学校の子供たちに 話をしに行く機会がありました。10人少しぐらいの人数で、お茶会みたいな感じのものでした。 盲学校の先生から「親御さんの中には商売とかされていて、目の不自由な女の子は外(社会)に出なくてよい、とかの考えの人もいるけど、 自分達としては外に出て欲しいから、外で活動してる人の話を聞かせたい」と聞いて何だか複雑な思いでした。 確かに外に出ると楽しいこともあります。でも、そうでないこともきっとあるはず。だから、「外に出たほうがいいよっ」とも、 「外は怖いよお」とも、どっちとも言えない。ただ、あたしが動くことによって生じることは話してあげられるかな? そんな風に思ったものです。(もっとも、その頃はまだムーヴを始めたばかりの頃でしたから、今ほどのパワーはなかったですけどねっ)
 それから気になったのが、あの黄色い「点字ブロック」の存在でした。 5年前は今よりもまだ視力はあったので、あえてそれを頼らなくても大丈夫でした。 でも、少しずつ慣れていかなければ・・と、道を見ると、自転車やら、看板やら、あと、立ち話してるおばちゃんやら!? そっかー、あたしも自分が白杖持つようになるまでは、「この黄色いの、は、見えない人が使うらしい」と頭の片隅では判ってたけど、 実際に使ってる人を見たことなかったよねぇー。だから、頭で判ってるつもりでもきっと気持ちで判らないと、自分からは気づけないことって、 多分あるんだよ、きっと。だから・・あの盲学校の子たちが、社会に出た時に、街が歩きやすくなっているように、 あたしが道を切り開いておいてあげよう♪この黄色いの、が何の役割であるか?世間がそれに自ら気づけるように、 あたしが歩いておこうっ。そんな風に思ったのが、そう、決心したのが、今から丁度、5年前でした。

 さて、この「点字ブロック」あると便利ではありますが、いろいろと問題があります。 一般的な問題は、車椅子などにとっては、結構な段差になってしまいます。そして、知らずに白杖で直角に突っ込んだ時にも(白杖初心者の時のあたしにとっては) かなりな衝撃を伴いました。それにあると便利は便利なのだけど、自転車や看板や、ブロックの上でボーッと突っ立ってる人などなど・・(ひどい時は点字ブロックの上でチラシ 配ってたり、路上ライブしてる輩もいたりします。) 点字ブロックを頼っているからといって、100%信用できないものなのですよね、残念ながら。 世間の人がそういった障害物をどけてくれたとしても、たとえば、途中でぶちきれてる点字ブロックや、 そこだけ突然、現れているブロックや、やけに壁際によりすぎているブロックや、点字ブロックに乗ってたとしても 体が壁や柱なんかに当ってしまったりもします。いくらあたしがスリムでも、点字ブロックの幅だけの体ではないしねぇー) それに一方通行でもないのに、片側にしかない点字ブロックのおかげで、人並みを逆行して進まなければならなくて、世間の迷惑になっているような引け目なんかを 時々は感じてみたりなんかして。あと、見えていれば、メチャ最短距離があるはずなのに、右向いたり左向いたり・・やたら、遠回りをさせられてる場所あったりしますよ。 大阪の地下街のある場所は。あのとんでもない人並みの中、遠回りさせられながら白杖を蹴られまくるのは、毎度といえど、疲れるものです。 (あ、まずいっ!だんだん文句が多くなって来てますね?反省反省っ)
 そうそう、このあいだ番組にゲストに来てくれた人が素朴な疑問をくれました。 「このごろ点字ブロックって、美的景観の為に石でできてたり、色が違ったりするけど、あの黄色の 色って意味があるんですよね?」と。うん、多分、弱視の人や見えにくい人でも、あの黄色い色は、 きっと見つけやすいはず。なのに、「見てくれが悪いから」という理由なのか?それとも、 洒落ているつもりなのか、神戸のある地下街は赤い点字ブロック。そしてある商店街では石でできてる 点字ブロックができてました。それってどうなんだろう???
 一人暮しを神戸で初めてはや一年。うちの近所は、バス停がわかるように、道を歩いていると、 突然、点字ブロックが目の前に横たわっています。それがバス停の目印。たとえ、ずーっと点字ブロックが 伸びてなくても、そういった目印にもなるのが点字ブロックなんだなあー、と、引っ越してきて気づきました。 だけど、反対斜線のバス停をこないだ初めて使おうとしたら・・・。いつものつもりで、点字ブロックが横たわっていて、そこを目印に 車道を向いたら、丁度バスが入ってきた。急いで乗ろうとしたのに・・・ベンチが邪魔するっ!? なんで?いつものバス停なら、点字ブロックをたどれば、バスに乗れるのに!?じたばたしてやっとバスの入り口に辿り着いたのに 無情にも目の前でドアを閉められ、あたしはおいてけぼりっ。何だか哀しくなってたたずんでしまいました。 次の機会にまじまじとそのバス停を見ると・・・点字ブロックの上にどうどうとベンチが横たわっているっ!? これじゃあ、乗れなくて当たり前じゃん?まさかあたしがそのベンチをどっかに投げ飛ばすわけにはいかないし・・どこに 言えばよいのかしらんねぇー?と、思案中の森島でした。

 それが何故そこにあるか?それは、使っている当事者にしかわからないものだとはいえ、もう少しどうにかならないものかしらん? そんな風に思うこと結構あったりします。だからといって、 点字ブロックをクモの糸のようにはりめぐらしてくれっ!!なーんて迷惑なことなんて望みません。 あるだけで良いってものではないのですから。ただ、便利なはずのものをうまく利用できないのは、 ない不便さに等しい時もあるような気がします。

(2002年12月 6日著)

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