復活をかけたサムの初挑戦がはじまる(チャレンジ富士五湖)
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2011/4/30
  岩崎 修 2011.5.12

千代田走友会に入会するまで健康目的でハーフマラソンに出場する事で満足していたが、なぜ自分より年齢が上であんなに速く走れるのか?なぜ女性は最後までスピードが落ちないのか?駅伝に出て襷をつなぐってどんな気分?そんな疑問が走る原点だった。そして今回のテーマであるウルトラマラソンは50km以上走ると足が痛くなるはずなのにどうして残り50kmも走りきれるのだろうと疑問だった。

1年前 昨年4月の長野マラソンは3時間27分台。それまではすごく順調だった。しかし疲れと風邪をこじらせ5月末に原因不明の全身関節炎と手足の浮腫に襲われた。大学病院に緊急入院寸前で踏みとどまり自宅療養、3日間は全く動けずもう走れないかと思った。

9か月前 8月に入り医師との約束をやぶり練習再開。復活を11月末のつくばマラソンに設定。結果は20kmから歩き出す始末。完走したが自己ワーストの記録となった。この時点では富士五湖チャレンジ100km出場など考えられなかった。

3か月前 千代田の新年会で松本先輩の記念大会である富士五湖にトライ宣言。1月末の湘南国際は自分の平均ペースで最後までもたせる事をテーマにした。結果は3時間39分完走。少し復調を感じた。2月があっという間に過ぎまた反省。3月はとにかく練習するぞと気合を入れ自分としては月間最高161kmを走った。主な練習は皇居での30km×2回とスピード練習は封印して1km6分ペース荒川8~10kmランを8回。仕上げは4月に石井さんとの50km下町ランであった。これで距離への不安は解消しなかったがフルマラソンの1.5倍は練習した。70kmまではもつだろう。そこから先は気合で行こうと決めた。

大会前日 午後1時愛車イエローFIT組が堀切菖蒲園駅に集合した。メンバーは初ウルトラ挑戦の「北さん」昨年のリベンジにメラメラ燃える「徳さん」、急遽出走となった経験豊富紅一点「梅ちゃん」そして私「サム」であった。この4人がこのあと延々と明日の走りを熱く語り合うのだが、4人の思いと誓いがあとで実をむすぶこととなる。この時点での私の作戦は50kmを6時間以内、残り50kmを7時間以内、目標13時間完走であった。

大会当日 午前3時起床。5時間ぐらいは寝た。すぐトイレを済ませ、サロメチールをすりこんだ。スタートのユニホームに着替えレインコートをはおり送迎のバスに乗る。真っ暗だったあたりが富士北麓公園陸上競技場に着く頃は明るくなってきた。午前4時を少し過ぎ緊張が高まってきた。それ程寒くはない。そろそろ112kmの若林さんはスタートがんばれ。私はいつも走る前に「テーマ」を決めるのだが今回は少し多くて5つ考えた。

午前5時スタート さすがに先を争うランナーは少なくのんびりしている。しばらく行くと前方を松本さんと伴走の加藤さんらが走っている。私は今朝レインコートの背中に「千代田走友会・松本組・岩崎」と書いた。それを見てもらうため前に出た。富士山がキレイで走り過ぎるのが惜しい気がした。

テーマ(1) 他人は気にせず自分のペースで走り前半で貯金を作る
5kmあたり
1km6分が自分の一番楽なペースだと荒川の練習で確認した。今日は行けるところまでこのペースにこだわろう。松本さん達に別れを告げ黙々とペースを刻んだ。だらだら続く坂を下り忍野八海に入るころ佐藤勉さんに出会いリラックスできた。しばらくすると突如山道の中で忍者?片山夫妻・國貞さんに最初の応援を受けた。10km地点は1時間00分04秒分で通過。体内時計はすごいぞ!ぴったりだ。

しばらく行くと山中湖畔に入った。毎年5月の山中湖ハーフマラソンでコースは熟知している。しかし今回は全く勝手が違うことに気がついた。ルールでは歩道を走り信号も守る事になっている。ランナーが湖畔の曲がりくねった遊歩道を走る。同じコースの感じではない。富士山がバックに見える絶好ポイントで二度目の応援を受けた。皆一度立ち止まりポーズを取って写真に収まる所が千代田のルールらしい。こんな応援してもらえるなんて。

テーマ(2) エイドでは必ず水分補給と屈伸5回を行う 山中湖を過ぎ河口湖に向かう途中に27.6km第1関門やきとりふじがある。ウエアの脱ぎ捨て場所だ。この大会はエイドが5kmに一つはあり食べ物も多い。次のエイドはどんな感じかなと楽しみになった。屈伸はまだ楽にできた。塩分も必要と思い梅干も食べた。ここからは緩い下りだから少し時間をかせごうと思った。

河口湖大橋 42kmあたり
このコースの落とし穴は90km過ぎフィニッシュ前の上り坂だと思われがちだが、それよりも河口湖大橋まで小刻みに上り下りのある歩道に悩まされた。何だか体力消耗だと思ったら板倉さんの激励があり気を良くして第2関門西浜小中学校を目指した。50kmは5時間00分51秒で通過した。自然とペースが落ちてくると考えていたのに予定より1時間も早いではないか。しかしここからがこのコース甘くはなかった。

テーマ(3) 関門では時間を使いすぎに注意し座らない 第2関門で先を走っている高比良さん、池田さんに会えた。高比良さんからサロメチールをかりて足のマッサージをした。もちろん屈伸5回を行った。二人が出発するので私も出発することにした。関門もエイドの一つであるが気分的にはホッとして長く休みたくなる。足のつりやすい私は座るのは避けた。理由は筋肉が冷えて硬直しないようにするため。致命傷には気をつけた。

テーマ(4) 上りは全部歩いても良いから止まらない 二人と一緒に出発したものの、いきなりきつい上りにどんどん離された。西湖まで、精進湖までの2度の上りはすべて歩いた。苦手な上りでは体力温存、平地を快走する作戦を取った。次の第3関門までの約18kmはいよいよ未知の距離との遭遇であり一番きつかった。前を行く黒木さんとはどこですれ違うだろうなど考えて走っていた。トップランナーがどんどん戻ってくるが皆元気だ。歩道はせまくすれ違いには気を使った。

ゴール直前
第3関門本栖湖県営駐車場に着くとまた池田さんと高比良さんに会えた。よくついて来たと褒めてもらった。ここで食べたカステラは本当にうまかった。まだ屈伸5回何とかできたが相当痛い。届いていたヤッケを腰にまきまた一緒に出発。残りは30kmだがまだ安心はできない。二人のペースにはついていけない。ついに足がパンパンになって弱気の虫が出そうになった。おまけに眠気も出てきて夢遊病者のような感じだ。北原さんが眠りながら走ると言った意味がわかった。この辺りから千代田の仲間にすれ違ったのに疲れが出て元気な声が出なかった。止まったら終わりだとその事ばかり考えていた。

テーマ(5) 関門制限だけはメモで確認クリアーし絶対諦めない 頭の中では残りすべてを歩いてもゴールできるのはどの地点か。そして何度も何度も次の関門時間のメモを見かえし走った。いくら時間があっても足が止まったらと思うと怖かった。あれほどこだわったペースもとにかく前へ前へと進むことだけになった。西湖までの上りが終わると後は平坦な湖畔道と河口湖への下りだった。上りを歩いたおかげか足が動いた。得意の下りは快調にペースがもどった。抜かれたランナーに追い付き追い越し走った。これは気分が良かった。俺の方が元気だと思えた。いけるぞと自分に言い聞かせた。

50kmからラップを計るのをやめてしまったのでどんなペースになったのかはわからないが、速報によれば50km〜88kmが1km8分、さらに88km〜98kmは上りが多く歩いてばかりだった為1km9分半かかったようだ。最後のエイドはキャンセルして勝負に出た。12時間が切れるなら狙おうと思った。上りの後に最後2kmの下りがある。それを信じて歩いた。下りを7分24秒で駆け抜け何人も抜いた。足がビンビンしびれたが気持ち良かった。

ゴール!
午後4時53分 競技場入り口の千代田の仲間の大声援とアナウンスの「岩崎さんお帰りなさい」の声は今も耳に残っている。ゴールはいつもの顎があがった姿で終わった。ここでも片山さんにしっかり撮ってもらった。タイムは11時間54分09秒。完走メダルと記念タオルをかけて戴きやっと座れると思った。そして何とか復活できたような気がした。初挑戦で完走できたのは多くのアドバイスを下さった千代田のメンバーのおかげだ。来年挑戦する方に私の5つのテーマも参考にしていただければ幸いである。


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