いわて銀河に刻む14時間ロードショー
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2013/6/9
  若林 昌二 2013.6.13
出発から前夜祭まで
6月8日新幹線上野駅より一人やまびこに乗り込みました。
向かう先は宮澤賢治の小説『銀河鉄道の夜』のご当地、岩手県は北上市です。

生憎普通席が取れず仕方なくグリーン車をとりましたが車内はガラガラ、
明日挑む【いわて銀河】に向けゆっくり鋭気を養うこととしました。

途中、大宮から乗り込んできた大勢の乗客の中に明日の銀河に臨む(恰好で一目瞭然)一人の若者が通路を挟んで右隣に座りました。
今回一人参戦の目的は見ず知らずのランナーとの交流を深めようと決めていたので、早速話しかけると妙に話が弾みます。

若者の名前はテラヤマ シュウジさん、どこかで聞いたことのある名前ですね。
ウルトラ初挑戦ながら10時間切れが目標とのこと。フルは3時間を切るエリートランナーでした。コースの攻略法に始まりレース直前の食べ物、宿泊先ホテルの話題やコンビニでの食糧調達等々貴重な情報交換が出来ました。
こんなエリートランナーとはひとたびスタートすれば二度とコース上で会うことはありません。この車内での出会いこそ一期一会と確信して目的地北上駅で別れました。
受付を済ませウェルカムラーメン(冷麺の三陸わかめラーメン)を食べ終えてから前夜祭まで1時間30分時間があります。しかしランナーを飽きさせまいと会場では郷土芸能の【鬼剣舞】や【津軽三味線】の生演奏、書道家“はる”さんの【大筆によるパフォーマンス】、東京オリンピック招致の【紙芝居】、一輪車の曲芸など余興が盛りだくさんでした。

いよいよ前夜祭が始まると吉本興業の大介・花子が若手芸人を大勢引き連れ会場の雰囲気を盛り上げます。
ワイナイナが所属するニューバランスチームのトークショーも面白かったですよ。
そして大会・会長挨拶に続き恒例の選手宣誓でとんだハプニングが起きました。
毎年、前年優勝の選手が務めているそうですが、その日はドタキャンだったようで司会者も関係者も顔面蒼白。結局会場内で、どなたかやって頂けませんか?とのリクエストとなりましたが誰も手をあげません。(当たり前ですね)そこに宮城県の、ある走友会の仲間が年配のT氏を推しました。
仕方なく大役を任せられたT氏ですが第1回から9回連続出場で昨年は5回完走者に送られる名誉称号GMC(ギャラクシー・マスター・クラブ)を得たベテランランナーでした。緊張から前置きが長くなると仲間からヤジられたり、今年を平成23年と間違えたりと会場は大爆笑でしたが、空気が一気に和みました。
前夜祭お開き後、写した動画をアップしたい旨伝えましたら名刺を下さり快諾して下さいました。
東北人の懐の深さ、人の好さ、温かさを実感する前夜祭となりました。

長い一日となった大会当日
6月9日朝2時起床。

前日買ったおにぎり3つとしじみ汁を飲み、朝食完了。
北上駅より連絡バスで約15分かかり北上総合運動公園に到着しました。
昨晩は強い風が吹き寒さを心配しましたが朝4時の気温が20.5度。
今日は暑さとの戦いと覚悟しましたが、なぜか会場には防寒用のビニール袋が用意されています。ランパン・ランシャツでも暑いのに何時使うの?と不思議でしたが説明には56km付近の峠で3か所のトンネル総延長約5kmが冷蔵庫のように寒いそうです。半信半疑で私も一枚頂きウェストポーチに挟みました。 スタート15分前今度は空気で膨らませたゲートが萎んでしまいました。ランナーからは“これじゃ、スタートできないよ!”と泣き言が入ります。それでも何とか再び膨らませ間に合いました。今日一日何が起きるのか、不安を抱えて4時にスタートしました。

北上市内こそ応援の方がおられましたが、5kmも走ると長閑な田園が続きます。車も大会関係者や応援の車以外はあまり走っておりません。安心して走れるコースでしたが、スタート前大会委員長が10kmまでは交通規制が入ります。以後は自己責任で走って下さいねと言われた言葉が心に引っ掛かりました。まぁ気にせず交通ルールを守っていくべぇとマイペースで進みました。
快調に走っていると15km辺りだったでしょうか、“若林さん!やっと追いついた・・・”と私を呼ぶランナーが。ゼッケン1352番(今回の私の番号)をずっと追いかけて来たそうです。
昨日新幹線でお会いしたテラヤマさんでした。
えっ?なんで今頃、後ろから・・・尋ねると、寝坊して25分遅れてスタートしたとのことでした。大会規定では失格になるんですが、主催者側のご好意で出走が許され、しかも最後尾までロードバイクで先導してくれたそうです。本当に東北の人は優しいなぁとこちらが妙に感動してしまいました。ところで彼はここまでキロ何分ペースで追いかけてきたのかしばらく計算しましたが頭が混乱してしまいます。正解は多分キロ5分ペース位では・・・。恐れいるべしサブ10ランナー。

さて次に遭遇したのは私とゼッケン番号一つ違いのランナーです。早速声をかけました。お互い奇遇ですねと話していると後ろのランナーから並んで走って下さい!とのリクエスト。何でも記念に後方から写真を撮るそうです。笑えますね。
この大会は地元東北の方が大勢をしめます。
宮城UMC(ウルトラマラソンクラブ)これはウルトラ主体の走友会とのことでした。
銀河鉄人会(入会資格はウルトラ完走者だそうです)
こういったランシャツを見ては声をかけさせて頂き、いろいろとお話しを伺いました。
エイドもすし飯のおにぎりやあんこマーガリン入りコッペパンをはじめ果物、梅干し、漬物、飴類にスポーツ飲料と充実しています。ただ普通のおにぎりのあるエイドがもう少し欲しい気持ちはありました。極めつけは73km辺りの銀河高原ビール工場にあるエイドで出た豆乳寒天です。冷えた状態で3ピース入り、これは最高でした。銀河高原ビールの看板を横目にゴール後は絶対飲むぞと誓いながら走ったものです。

さてコースはスタートして57.5kmまではいくつかの峠がありますが、概ね上り基調になります。途中50km手前の豊沢ダムは黒部ダムのようで新緑と青空と白い水しぶきのコントラストが最高でした。52.5kmからの5kmは勾配が厳しく大会のキャッチフレーズになっている“なめとこを征せずして、ウルトラを語ることなかれ”の文字通り銀河なめとこラインが一番の難所となります。勾配もさることながら先に触れた3つのトンネルはまるで冷蔵庫の中を走っているようで寒く(涼しいを通り越して)ここではスタート会場で準備されビニールを使う必要がありましたが、なんと私は途中で落としてしまい、震えながらトンネル内を走るはめに・・・
そしてこの山間部は熊出没の恐怖も同居します。幸い熊避けのカウベルを腰にぶら下げて走る女性ランナーと遭遇し、しばしストーカー行為をしてしまいました。
この場を借りて、ごめんなさい。
66.5kmに着替えのレストステーションがあります。大勢のランナーはここで横たわり鋭気を養います。そのままゼッケンを外す人もいます。私は今回比較的元気で、ここでは栄養ゼリーを補給し早々に立ち去りました。
その後はいくつかのアップダウンを繰り返し雫石町へと下っていきますが、下界の暑さが難敵となってきます。

さて80km付近では三重県から参加の金児氏から声をかけて頂きました。聞けば大谷さんのラン友とのこと。御親切に写真を撮って下さり、後日早速送って下さいました。感謝。
着ていたTシャツはさくら道とプリントしてあります。オソレイリヤノキシボジンってか!
今回は完走が一番の目標。設定時間も14時間目一杯使おうと考えておりました。
残り10kmとなった時、30代のある男性ランナーと一緒に走ることになりました。一昨年サッカーで靭帯を切断し、そのリハビリで始めたマラソンですが、やっと傷も癒え数か月前にハーフを走って何ともなかったので今回初めて100kmに挑戦しているとのことでした。
ゴールには奥様とお子さんがパパの到着を今か今かと首を長くして待っています。
ここまでちんたら走ってきた自分自身に克を入れる意味もあり、最後はしっかり走りましょうと彼を促し、以後ゴールまで激走することが出来ました。
ゴール後、彼は奥様に足がへし折れるかと思ったと話したそうです。(奥様がそっと教えてくれました。)
ゴール後は早々に着替え連絡バスで盛岡駅へ、駅付近の銭湯で汗を流し、フルーツ牛乳にコーラとアイス最中、栄養ドリンクを飲食しました。
食欲は全くなし。ウルトラの後はいつもこんなもんですね。
盛岡駅から新幹線に乗り込む際、どうしても銀河高原ビールが忘れられません。
思い切って柿の種と共に一本購入し、はやぶさに乗り込みました。
一口二口飲んでつまみを口にしますが、後が続きません。
ムカムカするのです。
次の仙台から、うら若き乙女が隣に座りました。緊張したのか余計ムラムラいえムカムカがつのります。とうとう我慢出来なくなりそのままトイレに直行。あとは想像におまかせします。
その後は上野まで爆睡し夜中の12時近くに帰宅しました。
翌日前夜祭・選手宣誓の動画をアップし、その旨を頂いたメール記載のアドレスに送りました。
タケダさんとおっしゃって年にウルトラ10回フルマラソン10回出られる方でした。
名刺には宮城UMC所属で、御礼のメールには千代田のシリアスランナー小林さん(但し女性)とラン友とのことでした。
動画は人生の宝物にしますと喜ばれました。映した甲斐がありますね。
今ではFB(フェイスブック)を解してお付き合いが始まりました。
残り10kmで知り合った方ともFBで交流を深めています。他にも途中知り合った三重の金児氏や全国の走る仲間と走ることで交流・絆を深める事が出来ました。
今回の参加目的が達成出来たように思います。
また一つ記憶に残る大会となった【第9回いわて銀河100kmチャレンジマラソン】でした。
来年は記念大会です。千代田からも大勢の参加を期待しています。
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