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阿能川岳=あのうがわ(16117m)
三岩山(1568m)・鍋クウシ山(314m)・ヨシガサワ山(1117m)
群馬 2011.04.21 単独  マイカー 地図 水上(高田) 阿能川岳 二等三角点
三岩山   三等三角点   
仏岩トンネル駐車場(5.40)---赤谷越(6.00)---送電鉄塔(6.40)---岩場終了(8.45)---三岩山(9.10)---阿能川岳(9.40-10.10)---三岩山(10.30)---岩場の通過終了(11.40)---鍋クウシ山?(11.55-12.05)---送電鉄塔(12.45)---赤谷越(13.20)---仏岩往復10分---仏岩トンネル駐車場(13.45)
残雪登山   ≪阿能川岳・群馬百名山≫    写真集はこちら

阿能川岳山頂
何年か続けて残雪期の山を楽しんできた。あえて残雪期を選ぶのは、登山道がなく残雪期しか登れないためだ。これまで山仲間の誘いによることが多かったが、今年は声がかからず単独で登ることにした。

群馬百名山に阿能川岳という山がある。谷川連峰の一角と言ってもいい位置にあって、谷川岳と平標山を結ぶ尾根と正対している。
登山道は途中までしかなく、一般の登山者が登るのは残雪期ということになるらしい。しかし残雪適期というのは長くはない。時期が遅いかもしれないと思いつつ、ダメなら引き返すつもりで出かけた。

高速道水上ICを出て291号を北上、水上温泉で猿ヶ京方面270号へ左折して上がっていくと、仏岩トンネル入り口に大きな駐車場がある。付近には除雪した雪がうず高く積まれたままだ。

案内看板の立つ仏岩への遊歩道入口からスタート。
最初から杉林のうす暗い中を雪を踏んでの登りだ。これなら藪はまだ雪の下だろう。山頂まで行けそうな気がする。
杉林の中をジグザグに登って行くと間もなく赤谷越、左へ行けば仏岩から吾妻耶山、目指す阿能川岳は右手へと進む。

尾根筋は落葉樹に変わって明るい雰囲気に満ちている。雪はところどころに残る程度、送電塔巡視路の道を小さくアップダウンしながら登っていく。雪堤に突き当たる。つま先を蹴りこんで足場を作り、ピッケルで確保して簡単に通過。ここから地面は消えてすべて雪上歩きとなるが、雪の上に頭の赤い杭が見えるのでそれを目安にして進む。

送電鉄塔が見えてきた。ということはヨシガ沢山は少し前に通過したということか。背後に吾妻耶山が大きく見えている。
鉄塔を過ぎてからは尾根を外さないように北上していくわけだが、わかりやすい尾根で、まず間違える心配はない。林床を雪に覆われたブナの林がつづく。巨木も多い。この景観は残雪期の醍醐味だ。
雪上には足跡一つない。2日ほど前の雨が、ここでは雪だったのだろう。見えるのはタヌキやウサギの足跡だけ。

また一つ背丈ほどの雪堤を越える。つま先を蹴りこみ、ピッケルを思い切りたたきこんで手ごたえを確認しながら乗り越える。しかし落ちてもケガをするほどの危険はない。ちょっとしたスリルを味わったというところだ。ここが鍋クウシ山あたりかもしれない。

やがて東側が急傾斜で切れ落ちた地形となる。斜面の縁は大きな雪庇、何か所か崩落して一辺が数メートルはありそうな雪塊が途中でひっかかっているのが見える。

雪堤の縁からなるべく離れて灌木の中を進む。歩行速度がガクッと落ちてきた。
さらに巨岩の壁に突き当たる。目印テープを頼りに迂回したりするが、雪のついた岩場は足場の確保にかなりの緊張を要求される。一つ岩場を通過したところでアイゼンを装着、これで足場の確保がだいぶ楽にはなったが、同じように緊張する岩場は何回もあらわれる。このあたりが地図に天子山と記されているあたりだろうか。笹や灌木にアイゼンをひっかけ、転倒を何回も繰りかえす。これも体力消耗を進める要因だ。
時間は過ぎていくが距離が稼げない。

前方に真っ白い雪稜があらわれて、ようやく岩場の通過が終わりとなった。すでに全身汗びっしょりだ。左右に広がる白銀の山々の展望を、ようやく目にする余裕もうまれてきた。しかし体力消耗はかなり進んでいる。靴が一歩一歩雪面から数センチほど沈み、ムダなエネルギー消費がさらに足の疲労を促す。

なだらかな登りを終わると円形のピーク、見ると灌木の枝先に「三岩山」の小さいプレートがあった。やれやれここまで来たか・・・という安堵感が広がる。指呼の前方に見えるのが目指す阿能川岳山頂だろう。青空の下、冬姿そのものの谷川連峰がまぶしく聳立している。

山頂まで残すはわずかの距離、意気揚々といきたいところだが、疲れた足に重たいアイゼン、とても軽快には動いてくれない。ちなみにアイゼンと登山靴あわせて片足1.7kg近い。雪の水分を含むから実際にはもっと重いだろう。
ゆるく下ったあと、山頂まで登るわずかの距離が遅々としてはかどらない。
雪面には動物の足跡一つ見えない、まさに穢れなき処女雪そのもの。実にラッキーな気分だ。

足を踏み入れるのが惜しまれるような純白無垢の山頂、達成感が広がる。休憩なしで4時間、疲労は濃かったが、それに見合う以上の目を圧する山岳景観。風もなく穏やかな山頂で雪に座し、しばしの展望タイム。
谷川連峰盟主のオキの耳・トマの耳から西へ延びる万太郎、エビス大黒、仙ノ倉、平標山の峨々皚々とした迫力はまだ冬姿のままだ。白毛門、朝日岳、そして武尊山など白き峰々を目に収め、30分ほどの滞頂で下山にかかった。

帰りは足がさらに重く、鍋クウシ山と思われるあたりで休憩かたがたアイゼンを外す。足が急に軽くなってまたいつもの歩きが戻ってきた。

疲労はたまっていたが、赤谷越から仏岩を往復、所要10分ほど、巨岩がまさに仏の姿そのもので天に突き出していた。
休憩込みで本日の所要時間は8時間強、誰とも出会わず貸し切りの登山であった。