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日向山=ひなたやま(1660)〜鞍掛山=くらかけやま(2037m)

山梨県県 2005.11.17 山梨県の仲間6人と マイカー 日向山 三等三角点
コース 日向山登山口(6.35)−−−日向山三角点・雁ケ原(7.55-8.15)−−−休憩(9.10-9.20)−−−駒岩2029P(10.05-10.10)−−−鞍掛山(10.45-10.50)−−−展望台(11.00-12.15)−−−駒岩(12.55-13.10)−−−日向山(14.30-14.55)−−−日向山登山口(15.50)
≪終日の快晴、甲斐駒北東に位置する静かな山≫
鞍掛山展望台から見た甲斐駒ケ岳
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日向山までは快適な登山道が整備されているが、その先鞍掛山までの道は、ときには薄い踏跡を追うようなルートとなる。最近まで秘峰の雰囲気を残す山であったことを、肌で感じることのできる、原生林に覆われた山であった。

「山梨に良い山がある」そう誘われて3年余、ようやく実現した鞍掛山は、Cさんの呼びかけで私も加えての7人。今年90余回の山行で、単独行でなかったのはこの鞍掛山と、やはりCさんの仲間たちと登った初雪山の2回だけ、単独行にはない楽しさを味わった一日だった。

小淵沢ICを出て“はくしゅう道の駅”に集合。道の駅信号から西へ向かう道路へ折れて集落を抜け尾白林道へ入る。途中には「日向山登山口」の道案内があり、登山口には十分な駐車スペースが設けれていた。
(13年前、日向山へ登ったときは、はくしゅう道の駅付近のバス停から歩いて往復した)

この秋一番という冷え込み、凛とした冷気の中を中Eさんの先頭で出発。この登山口は以前「矢立石」と呼んでいた。しばらく雑木林の落ち葉の道を行く。樹間から真っ赤な太陽が昇ってきた。すぐにカラマツ林に変わる。遊歩道のように整備の行き届いた道は歩きいい。頭上にはカラマツの黄葉が黄金色に輝いている。少し風邪気味で体調不十分だったが、足取りも軽く、汗もほとんどかかずに日向山三角点に到着。三角点を確認したあと一足で雁ケ原の展望地へ出る。この白砂は中央線方面から眺めると夏でも雪のように見えるため、長いことそれは残雪だと思っていた。
大気はあくまで澄み渡って、八ヶ岳連峰が惜しげもなく朝の陽光にその全容をひけらかしている。ここは八ヶ岳展望台としても屈指、南に目を向ければ雄々しい甲斐駒の姿、西には雨乞岳などの展望を得て、しばらく足を休めて景観に見入ってから本命の鞍掛山へと向かう。

白砂の斜面を降りて岩稜状の登りに入る。小さなピークを一つ越える。樹相はコメツガにダケカンバの混じる原生林へと変化する。人手のまったく入らないまま、原始の姿をとどめる幽幻な気が支配している。この雰囲気は実にいい。
林床は笹に覆われ踏跡も薄くなりがちになってくる。日向山から20分ほどのところで、木の幹にビニールの買い物袋がくくりつけられたところがある。鞍掛山へはここで左へ折れなければいけなかったが、はっきりした踏跡になっていない。直進しても鞍掛山へのルートはあるはずたというEさんの記憶でそのまま進む。この部分は直進ルートの方が踏跡はしっかりしている。

(ここで左折するのが正解であったが、左折の入口が不明瞭。しかし左折してしまえばすぐにしっかりとした道がつづいてる。道案内のため、左折コースのカラマツの幹に赤テープを巻きつけてきました)

さて直進した我々は、林床を笹が覆うコメヅカの樹林帯を坦々と登って行く。ところが鞍掛山へ向かうはずの尾根から徐々に離れて行くようだ。どこかで向きを尾根方向の東に振らないといけないが、踏跡は依然として尾根から遠ざかるばかりで方向を変えようとしない。いったん休憩にして引き返すかどうか思案、少し先の様子も探って見ることにする。
100メートルほど進んでみると、密だった笹が様変わりにまばらとなり、これなら道がなくてもコメヅカ樹林を縫って尾根方向を目ざすのも困難ではない。メンバーはいずれ劣らぬベテラン揃い、間違ったとしても不安はない。引き返さずに尾根を目指すことにする。これまでの踏跡を捨てて、コメツガの原生樹林の斜面を尾根の方角へ向けて登りはじめる。獣道か踏跡か知れないような跡がときどき確認できる。以前は鞍掛山へのルートとして使われていたのは間違いないようだ。
苦労もなく尾根へ登りつくと明瞭な登山道があった。道を外しはしたが、すばらしい原生林を味わいながら歩けたのは良いおまけになった。「私たちが登ってきたコースを“クラシックコース”と名づけよう」と冗談を口にしながら少し登ったところが、船底状をした二重山稜地点だった。

先ほどの左へ分岐するところだけしっかり押さえていればあとは明瞭、これだけ踏跡がしっかりしていれば、もう登山道と何等変わりない。鞍掛山も秘峰の冠をとって普通の山になっていくのだろう。
岩場の切り開きから甲斐駒ケ岳や鳳凰地蔵岳、それに富士山などが眺められる。空はさらに透明度を増してこれ以上は望めない登山日和となった。山頂での展望が待ち遠しい。

2029メートル、駒岩のピークは樹林に囲まれて展望はない。一服して鞍掛山へ向かう。約100メートルの標高差を下って100メートル登り返す、あっと言う間の距離と思ったが、それほど簡単ではなかった。むしろここがこのコースのハイライトとも言える。
樹林の中の踏跡をたどって鞍部に降りる。鞍部付近の踏跡は薄いので注意を要するところ、鞍部から大きな岩の基部をヘつるようにしてトラバースする。この岩には6月ころクモイコザクラが列を作って咲き競うとのこと。是非その時期にもと薦められる。へつりが終るともろい風化花崗岩の砂礫の急登に取り付く。垂直に感じるような急峻な登りはかなりの緊張感を強いられる。ロープ類は一切ないので、木や岩につかまったりして慎重に確保しながら這い登って行く。勾配が緩むと待望の鞍掛山山頂となる。コメツガの幹に「鞍掛山」いう私製の小さなプレートが一つつけられているだけ。ひっそりとしたたたずまいを見せる山頂は、いかにも秘峰の趣を今に残していた。
樹林に囲まれた山頂を後にして、ほんの少し先へ進むと展望台と呼ばれる見開き地がある。崩れた石祠の前が花崗岩の小平地になっていて、絶好の展望台だった。かなり大きな石祠で、機械力もなかった昔、よくぞこれほどのものを険しい山道を運び上げたものと驚かされる。

尾白川をはさんで、正面には筋骨たくましい甲斐駒ケ岳、すでに沢筋には雪がつまっいる。もう少しすれば白銀に覆われた鋼のような輝きを見せることだろう。黒戸尾根の向こうには鳳凰三山がクリアな輪郭で頭を覗かせている。いつまで見ていても見飽きない展望に見とれた。
ここからわずか先まで行くと富士山が空中に浮かぶような姿をのぞむことができる。その裾には御坂山塊が長く横たわっていた。
石祠の小平地で飽くことのない展望を楽しみながら、昼食かたがた1時間以上の歓談に時を過ごし、最後にCさんのオカリナによるエーデルワイスなどの演奏を聞かせてもらってから下山の途についた。

帰りはクラシックコースと名づけた登りのルートは通らずに、正規の踏跡をたどる。分岐に目印の赤テープをつけたり、Sさんが染料に使うという木の実を摘んだりするのを手伝ったりして、のんびりと下山。一日を丸々楽しもうという行動は、私一人だったら決してしないことだ。最後に雁が原で時間いっぱい展望を楽しみ、登山口への帰着は4時少し前、夕暮れを迎える前だった。

山頂を踏んだら一目散に下山という私流から離れて、仲間たちとのゆったりとした山の一日の楽しさを満喫した山行でもあった。
1992年4月18日、「はくしゅう道の駅」前のバス停から歩いて日向山を往復したことがあった。その記録はこちら
 
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