志賀高原 坊寺山=ぼうでらやま(1840m)
(敗退の記録)

長野県 2006.04.01 単独 マイカー 坊寺山 三等三角点
コース 石の湯ロッジ付近(9.20)−−−坊寺山と岩峰の鞍部直下(10.35)−−−石の湯ロッジ付近(11.15)
岩峰なだれの跡
写真集はこちらへ(2006.04.30日まで)

滑落、雪崩の不安と、気持ちのがんばりがきかずに山頂手前で退却する。

昨年ちようど同じ時期、隣の小坊寺山へ根性で登ったが、今回は新雪直後、あのときより条件が悪いこともあって無理をせずにおとなしく引き下がった。


昨日、一昨日と季節はずれの寒波、北信地方の山沿いはかなりの降雪となった。一転今日は快晴の予報、この青空をムダにしたくなくて懸案となっていた志賀高原『坊寺山』へ出かけた。
昨年は坊寺山へ登るつもりがルートを間違えて『小坊寺山』の方へ登ってしまった。今回は間違えないように地図をしっかり確認、頭にたたきこんだ。

木戸池の先で石の湯ロッジ方面へ右折、ロッジ手前の駐車スペースに車をとめさせてもらう。
坊寺山山頂を目でしっかりと確認してから、ロッジの前を通って雪原へと入って行く。トレールを期待していたが、新雪無垢の雪面には動物の足跡さえない。雪原を横切っている川の渡渉場所が不明。川沿いをばらく歩いて何とか渡れそうなところを見つけ、おっかなびっくり飛び石を利用して、どうやら濡れずに対岸に渉ることができた。
期待したトレールがないとすれば、あとは自力でルートファインディングして行くしかない。渡渉したところでワカンを着ける。それでもふかふかの新雪はかなり脚が沈んで体力を要する。歩きにくい新雪ではあるが、ダケカンバと処女雪の美しさには惚れ惚れしてしまう。今にも雪の精が出てきそうなメルヘンチックな世界だ。

斜面が急になるとワカンでは確保が甘くてズリ下がってしまう。それでもアイゼンよりましかと考えて、かっこうは悪いが四つんばいになったりして這いあがる。ストックでなくピッケルにすればよかった。
何とか夏道ルートをつかもうとするが、2、3メートルもある雪ではわかるはずがないし、それらしい方向は斜面がかなりきつそうだ。歩きよさそうなところを選んでいても、それでも避けられずに厳しいところへ突き当たったりする。地図にある夏の登山道は尾根へ詰めて行くようだが、私は尾根東側の斜面を斜めに登って行き、坊寺山の南の肩へ出るルートをとっていた。

急な斜面では新雪とともに1メートルほど滑り落ちる場面も何回かある。30センチほどの新雪の下には、モナカの皮のように固まった雪面が隠れている。気温も上昇している。新雪なだれの要件を満たしているということだ。気をつけないといけない。なるべく樹木の多いところを歩くようにしているが、そうとばかりはいかない。坊寺山の南にある岩峰の基部を通過する際、そこはなだれた跡も生々しく、びくびくしながら通過した。

急斜面を慎重に登りきって一息つくと、さらに急な登りが待っている。ワカンを何回も蹴りこんでステップを作り、一歩また一歩という感じで体を引き上げて行くが、もう汗びっしょり、緊張感も高まる。アイゼンでは沈んでしまうし、ワカンではこれ以上登るのは困難、しかたなく少し下って別斜面を進んで見たがやはり無理だ。岩峰と坊寺山の間の肩は目の前だ、そこまでたどり着けば山頂は5分とかかからないかもしれない。しかし山頂をどうしても踏みたいという意欲より、恐怖の方が勝って足が前に出ない。山頂を目前して撤退を決めた。

新雪がこれだけ深かったのは予定外のことで、雪崩の危険を考えないわけにはいかなかった。気温もかなり上がっているし、小さななだれでも巻き込まれたらただではすみそうもない。
普通に歩けば1時間もかからない行程の山、雪が締まってからまた出直すことにして、写真を撮ったりしながら足跡を拾ってロッジへと戻った。
いつもとちがって、今回はあまり無念さは残らなかった。
 
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