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奈良山=なろう(1639m)

長野県 2008.05.23 単独 マイカー 地図 御飯岳  三等三角点
猫坂林道入口(5.10)---林道分岐(5.35)---林道最高点(5.50)---稜線(7.15)---奈良山(7.30-7.35)---林道最高点(8.30)---猫坂林道入口(9.05)

奈良山山頂
北信の高山村から群馬県境付近の破風高原への道を何回か車で走ったことがある。破風高原はとりわけレンゲツツジの群落として知られ、シーズンには賑わいを見せるところだ。この道を走ると途中『奈良山登山口』の小さな看板が目に入る。どこかの山岳会による手製のもののようだ。ところが地図で確認しても登山道は載っていない。ネットで検索しても登山記録は見つからない。

『奈良山』と書いて『なろうやま』と読む。我が家からさほざ遠くないこの山を、数年来気にしてきた。五月晴れのこの日、ダメなら途中で諦めればいいとの思いで試しに挑戦してみることにした。

須坂市内から破風高原へ向かう。豊丘集落最後の民家を過ぎると、破風高原14キロの看板がある。カーブ番号80番から79、78と連続するカーブを繰り返して上がっていく。69番のところで左手に小屋が見える。ここから林道猫坂線が左に分岐する。『奈良山登山口林道』という小さい表示、猫坂線1.4キロ、一般車通行禁止などの表示もある。
猫坂線の先に登山口がありそうだ。小屋の前に車を止めて出発する。

猫坂線は地図にも載っていないし、登山道を示す破線もない。スタートから自分の現在位置が不明。おまけにクマの出没も怖くて鈴を二つもつけた。正直なところ不安がないわけではない。
猫坂林道はところどころ落石もあるが、路面状態は悪くはなく、RV車でなくても問題なく走れそうだ。30分近く歩いたところでY字分岐、右手の道に奈良山登山口の表示がある。分岐からさらに10数分で林道最高点となる。この猫坂線は2万5千図に載っていないので最高点の位置不明。私の動物的感では、このあたりから山頂を目指すことになるような気がする。感が当たってくれればいいが。しかし踏跡らしきものや目印らしいものも見えない。さらに先へ延びる林道を進んでみたりして様子を探ったが、結局わからずじまいだった。

とにかく右手の尾根らしいところを目がけて赤土の斜面を上がり、そのまま樹木の間を進んでいくと目じるしテープなどが目につくようになる。


(林道最高点から赤土斜面の上部を見上げると『奈良山登山口 登り1:30 下り1:10』という表示がある。下山してきてそれがあることに気づいた。駐車は1台、しかしここでUターンする車のことを考えると、もう少し手前の路肩の広いところを見つけて止めたほうがよさそうだ)



最高点から何とか登山コースに乗ることができたようだ。「奈良山へ」の表示プレートも見つかり、これがルートに間違いないことを確認してほっとする。
しばらく進むと渡り廊下風に平坦な短い尾根がある。ここを過ぎると広い斜面となって藪こぎの開始だ。藪は覚悟の上、それでも久しぶりの藪山は緊張する。目印のテープ類はどれも古いものばかり、下山時に心配な箇所には持参の布をつけていく。
クマに気をつけながら、逆目の笹を漕ぐのは結構体力を消耗する。滑っては転び、笹に隠れた倒木に足をすくわれたりのきつい登りがつづく。老体にはこたえる。少し進んでは振り返って地形などを頭に刻み込む。深山とは言えないまでも、帰りに迷おうものなら、どんな苦労を強いられるかわからない。笹藪は首から上が出るので周囲の確認が出来るのが救い。
ときおり笹薮の下に、昔は道があったとわかる痕跡もみつかる。登山道というより作業道の名残だろう。カタクリの花を見ながら、やがて藪の密度も薄くなってきて稜線へと出た。ここまでで用意した目印の布40本ほどは全部使ってしまった。

途中でギブアップすることも覚悟してきたが、これでどうやら山頂を踏むことができそうだ。帰りに稜線から藪斜面へと入るところだけはしっかりと頭に入れる。間違えたらとんでもないところへ下ってしまうかしれない。

山頂へと延びる稜線は薄い踏跡だが、それまでのやぶ漕ぎに比べればさしづめハイウエイを歩く気分だ。左手に赤く錆びたワイヤーロープを見てから小さなコブを一つ越えると、小さな露岩があって、ここから根子岳や善光寺平の一部が俯瞰できる。

10数分の稜線歩きで奈良山山頂に到達した。林床を小笹が覆った小さな空間だった。赤松混じりの雑木に囲まれていて展望はよくない。開けた南側に根子岳と四阿山、山頂手前から妙高、黒姫山が見えるだけだった。
こんな人知れないような山にもかかわらず、手製ながら思いのほか立派な山頂表示板が立っていた。その裏には2002年と記されていた。

長居するほどのこともなくすぐに山頂をあとにして下山にかかる。
藪山は下山の方が緊張する。歩いた全コースをつぶさに記憶しているわけではないので、“あれ、こんなところ歩いたっけ”と感じるところが次々と出てくる。ときどき目印を見失うことはあったが、登り以上にテープ類を注意深く確認して、登ったルートをほとんど外すことなく林道最高点へ降り立つことができた。