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白馬連峰前衛
風吹岳
=かざふき(1888m)

長野県 2008.07..13 単独 マイカー 地図 白馬岳  三角点なし
登山口駐車場(5.35)---風吹山荘手前の分岐(7.05)――コースを間違えて35分のロス――風吹山荘(7.40)--蓮華温泉への
分岐(8.00)--笹目尾根1866mピーク(8.25-8.40)--風吹天狗原の大池周回コース分岐点(9.05)--神の田圃(9.20-9.25)
--風吹岳(9.55-10.00)--風吹山荘(10.15)--登山口駐車場(11.25)

年間に60日から80日も山登りをしていたのはついこの間までのこと、最近は月1回という体たらくになってしまった。その分絵に集中しているのではあるが。

梅雨時とはいえ今月になってはじめての山行。
白馬連峰前衛と言っていいだろうか、風吹岳は国道148号線を通るたびに「風吹岳登山口」の道標を目にしていつかは登ろうと思っていた山。梅雨の晴れ間を狙って出かけた。
白馬駅方面から北へ進路を取り、北小谷駅付近で来馬温泉の道標を見て右折、148号線の下をくぐり、姫川にかかかる橋を渡ると、あとは道標が登山口まで案内してくれる。姫川の橋を渡るとやがて林道(舗装)となり、その橋から約5キロ地点で登山口道標を見て右折、ここから約5キロは未舗装となるが、路面は比較時良好で、ミニバンでも心配なく走ることができた。林道終点には駐車場も整備され、白馬岳を中心とした登山案内図も立ってる。

『風吹岳登山口』の道標から山道へと入っていく。道は明確で歩きやすい。風吹山荘までの標高差は700メートル程度だろうか。道標には『大池まで2時間』と表示さていた。
早朝のブナ林の道はすがすがしい。早起きの野鳥の声も透き通っている。急登はなく、登山道としては手ごろな勾配とでもいうべきか、意外と汗は少ない。硫黄臭が鼻をついてくる。右手足下に流れる沢は白黄色に染まり、温泉街の川で目にするあの色だ。

最初に目についた花はゴゼンタチバナとオオバミズホウズキ。
天に向かって大きく伸びるブナを見たり、足下の花を探したりして足を進める。登山頻度が減ったこともあり、このペースが私のペースなのか、速いのか遅いのかよくわからない。一定のペースは保ちながら足を運んでいく。

気がつくと樹相がブナからダケカンバに変わってきた。ひときわ白さが朝日にまぶしい1本のダケカンバで樹相の変化に気づいた。笹薮の陰にキヌガサソウを見つけた。付近にはミズバョウも20~30株咲いている。7月も中旬、豪雪地帯はようやく初夏を迎えたということだろう。

その後も休憩なし、ミズバショウやキヌガサウなどを目にしながら登山口から1時間30分、木道があらわれて道が2分した。左手の丸木階段が見るからにしっかりした感じだったのでこの道をとった。階段を登りきると平坦になって右手に残雪の山が見える。朝日岳か雪倉山あたりだろう。さらに進むと東方に見えてきたのは戸隠、高妻山か、その左手には堂津岳、雨飾山などの山々だろうか。山座同定に必要な地図を持たなかったのでしかとはわからない。その先からどんどん下っていく。おかしいと思いつつ下りながら考えると、インターネットで風吹岳を検索したとき、新しいコースのことを目にした記憶が蘇った。もしかするとこの道は新コース、このまま下ったら新コース登山口まで降りてしまうのではないか。ここで踵を返して再び先ほどの分岐まで急坂を登り返すことになってしまった。30分のロスは精神的にはダメージが大きい。

分岐まで戻ってもう一方の木道を1分も進むと風吹山荘が建っていた。窓から顔を出した登山者と二言三言言葉を交わしてから休まずにフスブリ山へ向かう。
この先は湿原を渡り歩くように、小湿原が次々とあらわれる。山荘からワタスゲが咲き乱れる木道をたどると、右手に風吹大池が見えてくる。新緑のグリーンを吸い込んで、水面はプルッシャンブルーに染まり、静寂の底に沈んだかのように神秘な風情を漂わせていた。我が国最高所の湖沼だそうだ。
すぐ先が風吹天狗原の湿原、木道に立って眺めると残雪の朝日岳方面が望める。天気は上々、絵葉書のような自然の美しさに目を奪われる。これを絵に描くとしたら・・・最近はいつも思ってしまう。でも絵にはなりにくい。この目で楽しむか、写真の世界のような気がする。

天狗原の先でコースが2分する。ここでまたコースを取りちがえてしまった。予定では左の千石揚尾根ルートのフスブリ山へ登るつもりだったが、確かめもせずに右手の笹目尾根へ入ってしまった。しっかりとした道標もあったのに、地図を見ることもなく、不十分な下調べの記憶だけで歩いた結果である。
ワタスゲ、ヒオウギアヤメ、マウヅルソウ、モミジカラマツ、イワイチョウ、ツマトリソウ、ミツバオーレン、コイワカガミ、ウラジロヨウラク、アカモノ、タテヤマリンドウなどを目にしながら小さな湿原を渡り、30メートルほどの雪渓を登ると、そこがこのあたりで一番高い地点。時間的にここがフスブリ山と思われるが何の表示もないし、三角点らしきものもない。もしやこの先にまだピークがあるかもしれないと思って先へと下って行ったが、小さなピークがあったのみ、先ほどの地点より低いことは明らか。白馬乗鞍、雪倉、朝日岳などを眺めてから天狗原へと引き返した。(自宅に帰ってから調べたところ、フスブリ山と思ったのは笹目尾根の1866メール標高点だった)

天狗原まで戻り、ここから風吹大池の周回コースへ入る。木道で池塘の点在する湿原を横断して池の周囲を時計回りに進む。コースは池畔ではなく、池を取り囲む尾根に沿っていて、それなりに起伏もある。右手足下に大池、左手には樹林に閉ざされるようにして小さな科斜池が見える。大池の北端から少し北に位置する神の田圃へ向かう。途中サンカヨウやキヌガサソウがたくさん見られた。血の池の先が神の田圃、広くもない湿原には棚田のような池塘が四つ五つ並んでいる。池の縁に4、5輪のチングルマが咲いていた。

神の田圃から池の東側を山荘方面へ向かう。池の水面はかすかに漣が広がっているが、深い藍色は目にしみるようだ。ふと見ると『風吹岳』という道標、山頂への登山道は地図に載っていないが、登ることができるようだ。しめたとばかりに急な坂を10分ほど登りきるとピークとなり、山頂に東屋が立っていた。東方だけが切り開かれ、狭い視界ながら雨飾山方面がうかがえた。

あとは風吹山荘へと戻る。山荘前の案内板には登山口まで2時間となっていたが、所要1時間10分で下ることができた。
はじめて目にした赤いキヌガサソウ ワタスゲであふれる天狗原木道
風吹大池 ミズバョウの咲く天狗原から残雪の雪倉、朝日岳
神の田圃 風吹岳山頂の表示