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関東百山・関東百名山 御荷鉾山=みかぼやま(1286m
登頂年月 1995.02.25 天候 晴れ 単独 マイカー 東御荷鉾三等三角点
西御荷鉾三等三角点
法久バス停付近(6.10)−−−法久集落外れ(6.45)−−−御荷鉾林道(7.30)−−−東御荷鉾山(8.15-8.25)−−−投石峠(8.48)−−−西御荷鉾山(9.15-9.35)−−−尾崎喜八碑−−−投石峠(9.55)−−−柏木集落(10.50)−−−法久バス停(11.15)

西御荷鉾山山頂
予想外の事故渋滞で一つ手前の花園ICで高速道を出た。登山口の万場町法久に着いたのは、夜の白み始めた6時少し前だった。途中登山口がはっきりしなくて、暗闇の中で自動車を止めてはそれらしいところを探しながら来たため、渋滞とあわせてロス時間が結構かさんでしまった。
『法久入口』の看板のすぐ先に駐車スペースを見つけて車を止める。

法久入口の看板から、上り勾配の舗装道路をくねくねといく曲がりも重ねるうちに、山の斜面や谷間に点在している集落の屋根が見えて来た。早朝の集落には犬の子一匹動くものとて見えず、ひっそりと静まり返ってまるで無 人の村かと思うほどだった。
登山道の取りつきに注意しながら、さらに舗装道路を行くと、見落と しそうな色あせた板切れに『御荷鉾山コース』と書かれた標識が、小さな橋のたもとにあった。ここで車道を離れて急坂の細径に入る。その先にもまだぽつんぽつんと民家が見られる。この坂道を毎日上り下りする生活は、さぞかし苦労の多いことだろう。山里と言えば昔はみんなこうしたものだった。
草木に埋もれた最後の廃屋を過ぎると、道はようやく山の中へと入って行った。登山道なのか山仕事の道なのか区別できない分岐にしばしば出会って、その都度迷いながらも感を働かせて行くと、字も読めないほど古びた『御荷鉾山コース』の板切れが目に入ったりして、ルートに間違いないこと を確認する。

一人だけの山歩きはいつものことで、何時間もひと言も口をきかないが淋しいとはない。一人の方が自然の息吹を強く感じることができる。風のそよぎ、小鳥のさえずり、沢のせせらぎ、葉ずれの音、風に鳴る落ち葉。ときどき『暑いなあ』とか『もうそろそろ頂上かなあ』などと独り言をつぶやくだけだ。
ときには好きな歌を口ずさんだりすることもあ る。
♪ 山の娘ロザリア いつも一人歌うよ〜       青い牧場日暮れて 星の出るころ〜
歌詞は違っていても気にすることはない。たいていは何十年も昔、若いころに覚えた歌である。
山の斜面が扇状になった要の部分は、落ち葉が深々と積って、一足ごとにくるぶしの上まで沈んでしまう。道がわからなくなり、そのまま落ち葉を蹴散らし、泳ぐように尾根目がけて、適当に登って行った。
ほどなく尾根上に達した。そこには、今までとは違って明瞭な道があった。しばらくは緩やかなその道をたどると、樹間から三角錐の御荷鉾山が見えてきた。
突然立派な舗装道路に出た。『関東ふれあいの道』の案内板があり、これが御荷鉾林道だった。林道を西に向かうと、妹カ谷への細道が右に分岐している。これを見送ってさらに行くと、だれが書いたのか電柱にマジックで『東御荷鉾』の文字と矢印が見える。それを頼りに斜面をよじ登って行くと、はっきりした登山道があった。さっきの妹ガ谷への細道からこの道につながってきているようだ。あとは迷うこともない一本道だった。
林道から山頂まではたいした高低差はないものと、勝手に決め込んで登り始めたのだが、なかなか山頂へ着かない。勾配もきつく汗が流れてくる。あの高みを登れぼ山頂か、そう思ってたどり着けば、さらにまた先に高みが待っている。次の高みにもまた騙され、それを何回か繰り返したあげく、露岩が現れて山頂間近の雰囲気となった。
10分もあればと思った山頂へは、結局30分以上かかってしまった。

東荷鉾山頂上には、玉垣の中に石仏や赤錆びた鉾が収められている。小じんまりとした山頂で、北面以外は展望は得られない。
ひと休みしてから西御荷鉾山へと向かった。 山頂から林道目がけて大きく下って行く。200メートル以上の高低差を下って林道へ降り立ってから、西へ10分ほど行ったところが西御荷鉾山登山口の投石峠で、観光地のような立派な案内板が設置されていた。
北の谷から冷たい風が吹き上げて来る。丸太の階段が長々とつづく。歩幅が合わず歩きにくい。うんざりする丸太を終って地道に戻るとほっとする。山頂まではそれからいくらもなかった。

枯れ草の西御荷鉾山の頂は東西に広く開けて、東御荷鉾山の地味さに比べると、明朗快活な山頂だった。山頂西端には数多くの石仏や鉾が見られる。展望にも恵まれていた。吹く風は冷たかったが、遠く連なる山々は遥かにかすんで、春を感じさせ、もやに薄れた山波が淡青色に重なるのは奥武蔵、両神山に奥秩父方面、さらに浅間山、谷川連峰なども見渡せた。
鋸の歯のような両神山をスケッチしてから山頂を後にした。
林道へ向かって直下降して行く最短ルートは、観光客でも簡単に山頂に立てる観光用ルートだった。
林道途中の尾崎喜八の碑を見学してから、投石峠への途中、陽差しを浴びる冬木立の東御荷鉾山がよくのぞめた。
投石峠から柏木へ下る林道は、採石場の大型ダンプカーが行き交う道で、土ほこりが足首まで埋まるほどで、雨でも降れば泥濘に悩まされることだろう。
下山コース選択の誤りを後悔しながら、長い林道を歩いて柏木集落へ下った。柏木からは法久まで約3キロの国道歩きだった。
西上州山域では名の知れた御荷鉾山だが、今日のコースはメインルートでなかったためか、迷いやすいところが多かった。


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