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関東百山 
菰釣山=こもつるしやま(1348m城ケ尾山(1188m)
登頂年月 1994.03.05 天候 曇り 単独 マイカー 三等三角点
道志村白井平スカイキャンプ場付近(5.45)−−−下善の木(6.10)−−−道志の森キャンプ場(6.20)−−−城ケ尾峠(7.25)−−−中の丸(8.05)−−−避難小屋(8.35--8.50)−−−菰釣山(9.10-9.15)−−−ブナの丸(9.30)−−−スカイパレーキャンプ場(10.15-10.25)−−−白井平(10.35)

菰釣山山頂
丹沢山塊の主だったピークはあらかた踏んでいたつもりが、 地図を広げてみると、山塊の西端に菰釣山が残っていた。「丹沢の寂峰」として今でも静けさが保たれているという。

道志村へ着くころ、ようやく空が白みはじめた。冷え込みがきびしい。菰釣山からの下山予定地に近い、スカイバレーキャンプ場入口に自動車を止めた。
5時45分、引き締まる寒気を感じて、薄明の舗装道路を下善の木集落にある登山口へ向かう。20分ほど歩くと登山口の道標が立っていた。舗装道路から右手に道志川にかかる橋を渡る。左にカーブして勾配を上げて行く。ポイント目標の「道志の森 キャンプ場」へは一本道だった。さらに奥へとつづく林道は、雪が固く凍っていた。
案内書にある『水晶橋』で林道と分かれる。案内書は沢沿いの細道と記されていたが、実際には立派な林道になっていた。林道を横断する細流をまたいでさらに進むと、板切れに『城ケ尾峠』と書かれた粗末な案内がある。ここからが山道だった。  

急な山腹をじくざぐに登って行くと、急に雪が深くなった。ふと気づくと知らぬ間に尾根の上に出ていた。雪は深いが踏まれているので問題はない。歩きはじめて1時間40分、主稜の城ケ尾峠へ到着。雪でも降り出しそうな寒風が迎えてくれた。ベンチもあるがこの寒さではゆっくり休む気分ではない。茫とした霧に包 まれて遠望はきかない。この峠の稜線ルートは『東海自然歩道』であり、峠から北東へ向かえば加入道山から大室山方面、西が菰釣山である。
峠の道標には、菰釣山まで3.8キロと示されている。

一投足の城ケ尾山へ立寄ってから、雪の道を何回も上り降りを繰り返す。吹きだまったところもあれば、落ち葉の地面が現れたところもあり、わずかな地形の変化が降雪に与える影響の大きいことがよくわかる。30分ほどで木製ベンチのあるピーク、ここには『中の丸』の標識が立っていた。城ケ尾峠と菰釣山の中間点あたりだった。

細かい突起をいくつも登ったり降りたりして、ひとつのコルで右手に下善の木へ通じる登山道を見送るあたりに菰釣山避難小屋へ200メ ートルという表示が見えた。
雪の傾斜をひとしきり登っていくと、こじんまりとした小屋があった。無造作に戸を開けると、中には中年の男が一人、お互いに予期せぬことで驚いた。男は板の間に布団を敷き、寝袋に入っていた。無愛想で風変わりな男だった。

テルモスの熱い紅茶が、寒い中では何よりの御馳走だった。小屋で手袋を脱いで身繕いをしているちょっとの間に、指先が冷えて痛くなって来た。
早々に小屋の外へ出た。急登に取りつくと急に雪が深くなって来た。冷たい風が粉雪をともなって吹きつけてくる。枯れ木には霧氷の花が咲いている。
たどりついた菰釣山のピークは狭い山頂だった。眺望はない。長居をする理由もなく写真を撮るとすぐ下山にかかった。
雪の踏み跡が薄くなった。少し心細い。ブナ丸からスカイバレーキャンプ場へ下る道がわかるかどうか不安だった。菰釣山からしばらく稜線を進むと、樹林の小ピーク『ブナ丸』に着いた。名前のとおりブナ樹の森だった。スカイバレーキャン プ場へのコースを示す表示は、見落としそうな小さな板切れだった。
主稜線はここからまっすぐ山中湖方面へと、か細い踏み跡が続いていたが、スカイバレー方面への下山道にはまったく踏み跡は見えない。ルー トが拾えなかったら戻ってもいい覚悟で、稜線を離れ、雑木の斜面を下りはじめた。踏み跡はなくても、おおよそ潅木の茂り具合や、樹木の空き具合でなんとなく見当はつくものだ。タヌキの足跡が幾すじか行き交っていた。雪は深く、一歩ごとに膝あたりまで沈む。 そのうちにタヌキの足跡を頼っていけば間違いなさそうなことがわかった。
少し青空が見えて来た。木立の切れ間から道志の村落と、どっしりとした御正体山が見えてきた。

かなり下って植林地へ入ったところで、タヌキの足跡が明らかに登山道ではないところを下っていた。どうやら知恵もののタヌキが、ショートカットしたらしい。タヌキの足跡を捨てて植林の中の無垢の雪を踏んで、勘を頼りにルートを開く気分で下って行くと、雪の少なくなったあたりでうまく登山道に出会えた。
スカイバレーキャンプ場から林道を行くと、人家が見えて来てぴったり自動車を置いた場所へ出た。


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