kanto-042    「山岳巡礼」のトップへ戻る  関東百山・関東百名山一覧表へ戻る

関東百名山 黒斑山=くろふやま(2414m
登頂年月 1993.09.25 天候 晴れ 妻同行 マイカー 三角点なし
車坂峠(6.45)−−−トーミの頭(8.00)−−−黒斑山(8.15)−−−蛇骨岳−−−仙人岳(8.43)−−−黒斑山(9.05-9.20)−−−車坂峠(10.20)

左が黒斑山、右が蛇骨・仙人岳・・・トーミの頭より

上信自動車道が佐久まで開通して、東京から長野方面が近くなった。自宅を出て3時間後には車坂峠に到着していた。上信地方のほとんどの山は、東京からの日帰り圏内に入ってしまったようだ。

標高の低いうちは濃い霧だったが、1973メートルの車坂峠は快晴に近かった。さすがに気温は低い。
身支度を整え、登山届けを出して出発。観光客でも楽に歩けるほどに登山道は手入れが行き届いている。コメツガ樹林に挟まれた道や、熔岩の転がる道はピクニック気分である。背後には朝陽を浴びた籠ノ登山、水の塔山、高峰山が見えてきた。さらに高度が上がると湯ノ丸山、烏帽子岳も姿を現した。いずれも昨秋に登った山々である。遥かに連なる山巓が浮かぶ。槍、穂高、乗鞍、御嶽、 鹿島槍、五竜、白馬岳・‥北アルプスの諸峰がみごとだ。中央アルプスは一群の山塊として、蓼科山はドーム状の山頂だけが雲の上に浮いている。しばらく足を止めてひとわたりの眺望を楽しんだ。

早朝の静かな山道、肌に染みとおるような冷気、どこまでも澄んだ秋の高い空、ときおり潅木の陰から小鳥の囀りが心地よく耳に届く。 ひと登りして外輪の縁に達する手前に蒲鉾型の避難小屋が二棟建っていた。登山中に万一浅間山噴火の警報が鳴ったら逃げ込む施設だ。登山道のところどころにサイレンが設置され、黒斑山の近くには浅間山に向けてカメラが監視を続けている。
外輪に立つと逆光線の中、暗褐色の浅間山が視界一杯に飛びこんできた。柔らかな曲線をもって聳立する優美な姿は、他では見られない独特の景観である。噴煙の影響か、コメツガなどが立ち枯れ、白骨化した姿が目につく。

外輪を北へ向かって少し下り、それから登り返したところが〈トーミ の頭〉と呼ばれる岩頭だった。浅間山を正面に、蛇骨岳からJバンドヘかけての剥き出しの山肌は、赤や灰色など、幾層にも重なった火山灰の堆積が確認される。絶壁状に切れ落ちた足下の谷は、朝陽に輝く 緑の草原“湯の平”である。一筋の道が谷へ降りている。すぐ先の高みが黒斑山の山頂、トーミの頭からは15分程だった。
黒斑山から先は立ち入り禁止となっていたが、山頂に妻を残し私だけ外輪をもう少し進んでみた。コメツガの林に入ったり、火山礫の上を歩いたりして、蛇骨岳から仙人岳まで行ってみた。
仙人岳から見るとJバンド、そして浅間山山頂へと一筋のルートが延びている。登山禁止とはいうものの、今でも浅間山を目指す登山者が多い証拠だ。私も数年前、日本百名山を目指していたころ、峠の茶屋から禁を破って浅間山へ登ったことがあった。

妻の待っ黒斑山まで戻ると 「どうしたの、ちょっと行って来ると言っておいて。遅いのでどうしたのかと思って心配してたのよ」と叱られてしまった。
黒斑山の山頂でゆっくりと浅間山を眺めた。かすかな噴煙が紺碧の空に吸い込まれて行く。浅間山の藍色のピークは前掛山の奥にあった。
展望を楽しんだあと、同じ道を車坂峠へと引き返した。


   「山岳巡礼」のトップへ戻る