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関東百山
 
錫ケ岳=すずがたけ(2388m)
登頂年月 2005.07.28 天候 快晴 単独 マイカー 錫ケ岳 三等三角点
長野自宅(22.30)〓〓〓仮眠1時間〓〓〓菅沼登山口(2.50-3.55)−−−弥陀ケ池(5.10)−−−五色沼(5.30)−−−避難小屋−−−稜線分岐(5.55)−−−白根隠山(6.20-6.25)−−−白桧岳(6.45)−−−2170m最低コル・水場(7.30)−−−錫ケ岳(8.10-8.25)−−−水場(8.55)−−−白桧岳(9.50)−−−白根隠山(10.10-10.20)−−−稜線分岐(10.42)−−−避難小屋−−−五色沼(11.00-11.05)−−−弥陀ケ池(11.25)−−−菅沼登山口(12.20)

シラビソ樹林の錫ケ岳山頂

関東百山100座目の仕上げにふさわしい好天に恵まれ、行程もまた歩き甲斐のある会心の山行であった。

錫ケ岳にはきちんとした登山道はないとされているが、踏跡の大半は登山道並にはっきりしていて、特別の困難もなく登頂を果たすことができた。

登山口は奥白根山と共通の菅沼。ネットでの情報では行程12時間前後の長帳場、出発は早いほどいいと思い、まだ薄暗い3時55分、ライトをつけてスタート。残月の空にはほとんど雲は見えない。

弥陀ケ池までは高低差500メートル余、白根山への登山道を行く。きれいな朝焼けを樹間に見ながら快調に足を運び、1時間15分で弥陀ケ池着。白根山の姿が沼に投影され、上空には透明度のある青空。ちょうど1週間前、大荒れの天候に白根隠山で引き返したときとは大違いだ。

五色沼、避難小屋を経由して稜線に出る。中禅寺湖や男体山の展望が開けた。少し風が強くて寒い。ウインドブレーカー代わりに雨衣を着る。ここから左方向は前白根山、そして足元の小さな道標が右手錫ケ岳を示している。
ダケカンバの若木樹林を進むと誰でも見を見張る異様な掘っ立て小屋が目につく。ゆるく登ると最初の小ピーク、そして次が地図にある2385mのピークで白根隠山が目の前に見える。大きな図体の奥白根山の右には燧ケ岳や会津駒などの山容が。大気の透明度が良く、遠くの山もかなりはっきりとしている。

踏跡は登山道と変りないくらい明瞭で何の不安もない。一週間前には濃霧と強風の中をケルンを目印にして歩いたが、今日はその必要もない。少し下ってから草つきを登り返すと白根隠山2394mのピーク、本日コース中の最高点で目的の錫ケ岳より22m高い。四周遮るもののない山頂は素晴らしい展望台、まず錫ケ岳を確認する。間に白桧岳を挟み三つのコブを持った錫ケ岳の姿は、思ったほど遠く感じない。この程度の距離ならという安心感を得た。
白根隠山はここは本日一番の好展望地、目の前の奥白根山、男体山・女峰山・大真名子山・太郎山など日光の山々、先週登った中禅寺湖畔の半月山・社山・黒桧岳、皇海山、至仏山、笠ケ岳、赤城、榛名、遠く志賀の山並みや浅間山の噴煙までもがのぞめ、ふと気づくと富士山の姿が遠望できた。

先は長く、これからがコース本番、ゆっくりと展望を楽しんでいる時間も惜しく先へ進む。
白根隠山から少し南へ下るとガレが大きく切れ落ちている。その先端まで行かずに、左手を注意しながら進むと、左に下っている草つきの踏跡が見えるのでここをコースに選ぶ。すぐにガレ斜面となるがたいしたことはない。その先で岩場を通過したあと、少しわかりにくいところがあるが、尾根を外れて右手の赤土の崩れたところを通り、樹林の中へと入り尾根へ戻る。ひと登りすれば白桧岳2394mのピークだが樹木で展望はない。

白桧岳の先からは笹の中へと入って行く。膝丈ほどの笹だが、露でズボンから靴までビショ濡れ、水の中を歩いているようだ。笹原から樹林へ入ったり、また笹の中へ入ったりを繰り返して行く。笹には踏跡があるのでたいていは迷うことはなく、また樹林の中は登山道に近い踏跡となっている。登山者もかなり多いのだろう。ただ、笹の道と樹林の中の道のつなぎが分かりにくいところがあって、膝丈の笹を適当分けながら歩いた箇所も3、4ヶ所あった。
(樹林の中は、樹木の2mほどの高さのところに登山道を示す10センチ角のプレートが打ちつけてあり、いい目印になっている。笹より歩きやすい。笹の中もよく注意して歩けばルートを外すことはないし、帰りはほとんど踏跡を外さずに歩いた。万一ルートを外したと思ったら稜線の高いところを選んで行けば踏跡にぶっつかるはずだ)
 
小さなコブがいくつかあるが、ルートに気を使いながら歩いていると、コブのことなどあまり気にならず、概ね下りだったこともあって楽に2170mの最低コルとなった。時間的には45分ほどのものだった。コルには水場もあるようだし、焚き火の跡もあって幕営でもしたらしい。

手前が白桧岳、奥が錫ケ岳・・・白根隠山方面より
コルからは高低差220mほどの最後の登りにとりかかる。踏跡はかなり薄くなってきた。目印プレートと、ときとぎ目につく赤テープを頼りにして登って行く。歩いていると帰りに間違えやすいところはわかるので、頭に残すように心がける。大半はシラビソ樹林の中である。やがてダケカンバも目立つようになってくる。
小ピークを越えた先は湿地状の窪地で沼がいくつか点在している。沼の先で急勾配の笹原となるがルートや目印がわからいな。沼の左手にコースを取ったが踏跡はなく背丈の高くなった笹を強引に分けて登って行く。踏跡がみつからない。このまの直登は問題がありそうだ。右手に移動して行くとうまいこと踏跡に合流できた。
(沼からはしばらく踏跡は見えないが、沼の点在する真中を進み、そのまま笹の中を行くと脱色した赤布の目印が立っていて、そこが踏跡になっている)

あとは比較的はっきりとした踏跡が山頂までつづく。四角の標識もかなり多めについているので迷うことはない。ピークかと思った先でほんのわずか下ってからもう一度登ったところが待望の錫ケ岳山頂だった。これで関東百山の達成である。
シラビソ樹林に囲まれいて山頂からの展望は得られないが、少し南に行くと樹林の開かれたところから足尾、日光方面がのぞめた。間近に皇海山、中禅寺湖と日光の山々、遠く富士山も望むことができる。
山頂に「三角点」と彫られた標石があるが、国土地理院のものとは異なるようだ。探して見ると少し離れた小笹の中に三等三角点の標石があった。
山頂までの所要時間は4時間15分、見こんでいた5時間よりかなり早かった。

展望に恵まれないこともあって15分で山頂を後にする。『帰りこそ慎重に』と言い聞かせて踏跡を外さないように心がけ、登りとちがって一度も踏跡を外さずに白根隠山まで戻った。入れちがいにこれから錫ケ岳へ向かうという熟年4人組を見送る。時間的にはぎりぎりだろう。
白根隠山でもう一度ゆっくりと展望を楽しむ。朝方は少し強かった風もおさまって、さわやかな快晴は依然としてつづいていた。

弥陀ケ池からは快足を飛ばして55分で登山口まで下った。往復8時間25分の行程だった。片品村の“ささの湯”で汗を流してから帰路についた。

天候次第であるが、錫ケ岳は難しいルートファインディングの必要もなく、山慣れた人なら思ったより簡単に登れる山です。
コースの大半は踏跡を頼りに問題なく歩くことができます。


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