追想の山々1004 up-date 2001.02.09
ロープウエイ駅前駐車場(5.20)−−−トマの耳(8.00)−−−オキの耳(8.15)−−−天神平ロープウエイ駅(9.50) | |||||
所要時間(含休憩) 4時間30分 | 登り | 下り | |||
私には冒険だった(50歳)
上日川峠から眺めた南アルプスも一つとして山名を指呼できるものはありませんでした。 次の山は翌10月の谷川岳でした。 危険な山、遭難が数多く発生している山と言うイメージだけが、頭に強く印象付けられていました。 10月に入ると雪が降るかもしれないし、天候の急変もあるという。一人で登っても大丈夫なんだろうか。素人でも歩けるようなコースがあるのだろうか。さまざまな不安が広がって行きました。 それは私にとっては冒険とも言えるものでした。 心情的には、卓越した登山家がヒマラヤの高峰や、ヨーロッパの岸壁に挑むような緊張感と同じと言ってもいいくらいでした。 谷川岳の岩を登るわけでもなく、普通の登山コースを歩くだけだと言うのに、その不安ぶりはとりもなおさず私のヒマラヤでした。 ガイドブックなどを読んで、西黒尾根コースを登ることにしました。 10月4日の日曜日でした。好天を確認して出かけました。 マイカーで登山口に着いたのは、まだ夜明け前でした。コンロで朝食の準備をしているグループなども見えますが、みんな服装も甲斐甲斐しいベテランに見えます。 夜明けを待って出発しました。道標もきちんとしているし、出だしは案ずるようなことは何もありません。 7月に妻、長男と穂高へ登っているので、脚力の方は心配していません。ただ人工肛門となってから、これが単独でのはじめての山です。そのことが不安でした。途中で下痢などを起こしたらどうしよう。人工肛門に何かトラブルが発生したら対応できるだろうか。とにかく早く山頂へ着いて、一刻も早く帰宅することだ。そう考えながら歩きました。 西黒尾根はけっこう歩きでがありますが、ペースは快調です。自分のペースと言うもがわかっていませんが、調べてきたガイドブックよりかなり速いスピードで歩いているようです。 快晴に恵まれて、山は見事な紅葉に飾られています。 登りは急ですが、危険と感じるところはありません。出かける前の不安は、まったく感じないままに、一度の休憩もなく1時間40分で山頂・トマの耳へ着きました。 ナナカマドやサラサドウダンが深紅に染まり、見渡せば上信の山々が幾重にも重なり合って、天に広がる波のようでした。しかし一つとして山の名前はわかりません。 山頂で展望を楽しみながら10分ほど休んで、天神尾根を下って行きました。ロープウエイを使った登山者が、ようやく山頂へと向かって登って行くところでした。 今思えば、無雪期に一般の登山コースを歩くかぎり、何の問題もない山と言うことはわかりますが、当時の駆け出しの身には、大変な冒険に出かけるような緊張でした。 山頂での素晴らしかった展望とあわせて、これがはじめての登山と言うにふさわしい緊張感で、私には思い出の深い山行です。 このあと11月には小屋一泊の両神山、1月は雲取山と単独山行を重ねながら、山歩きを覚えていきました。 |