追想の山々 1021    up-date 2001.06.16


男体山(2484m) 登頂日1988.09.01  (単独)
1998.9.1 男体山 中宮祠(8.40)−−−四合目(9.25)−−−男体山(10.45-11.20)−−−中宮祠(12.45)
自宅出発AM6:00 中宮祠着AM8:35  

ガン、人工肛門からの復帰を期して、昨年の9月から目標として取り組んだ日本百名山も、この男体山で21座目となった。余命が3年あるとして、その間30座も登れれば御の字と思ってのスタートだった。このハイペースは自分でも驚きだった。

 
 男体山山頂
社務所に登山の申し込みをすると、500円収めて下さいと言われ、かわりに登拝案内図とお守り札をいただいた。ここは山そのものが御神体となっているとのことです。  
コースは頂上までほぼ直線的につけられていて、1300メートルに及ぶ標高差はかなり急できつい。一部工事用の道路を歩くところもあって、コンクリートミキサー車が黒い排ガスを吐き散らして追い越していく。  

五合目あたりからガスがかかってきて、先ほどまで足下に見えていた二荒山神社の緑青色をした銅版葺きの屋根や、中禅寺湖も隠れてしまった。  
道はしっかりしているので、ルートを心配する必要がなく気楽である。
岩石のがら場の登りがあったりするが、さして危険というほどのこともなく、ぐんぐん高度を稼いでいく。いつしか樹林もまばらになって、頂上らしき赤茶けた火山礫の山肌に変わってきた。雲の上に出たのか上空には青空も見えている。  
ここまで、途中何回か立ち止まって、1分程度呼吸を整えるだけで、登りきってしまった。登り着いた頂上は、細く鉤型に曲がっていて、その曲がり角の所に奥宮が建っていた。
間近に太郎山、大真名子、小真名子山が形よく見えているが、ときどきガスに掻き消されてしまう。眼下には中禅寺湖、それに戦場ケ原の一角がぼんやりと霞んで見える。残念ながら遠くの山々は雲の中にあって、楽しみにしていた眺望は得られず、頂上を踏んだ喜びも半分というところ。 

頂上付近には リンドウの紫花が、秋の近いことを知らせていた。  
運よくいっとき、彼方の稜線の雲が払われて、青い輪郭をあらわしたのは、 明日登る予定の奥白根山だった。すぐ頭上に真っ白に輝く積乱雲が、むくむく と背を伸ばしていく様が迫力満点で、しばし見とれるが、雷雨にでもなったら大変、登ってきた道を急いで引き返した。

この日選んだのは最短コース、単調な直線的な登りがつづき、歩く楽しみは薄かったが、今は山頂を踏めただけで充分だった。


山を登りはじめて1年になるが、まだ日本百名山の頂を踏むことしか眼中になかった。とにかく無事山頂を踏んでくれば、それだけでよかった。それがガンとの闘であるとして、休日を利用して憑かれたように山へ向かっていた。
高山植物の名前を少づつ覚えたり、展望する山々の名前をいつくか言えるようになってはきたが、ほんとうの山歩きの楽しさを知るのには、まだまだ時間がかかった。