追想の山々1047  up-date 2001.06.25

芦別岳(1727m) 登頂日1994.08.14 雨  単独
トマム(4.00)===新道登山口(5.15)−−−見晴台(6.25)−−−覚太郎分岐(6.55)−−−半面山(7.25)−−−雲峰山(9.15)−−−芦別岳(8.30-55)−−−半面山(9.35)−−−見晴台(10.17)−−−新道登山口(11.00)===トマム(12.15
所要時間 5時間45分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
                  1994年・北海道山旅〓その6〓(57歳)
雲峰山より芦別岳をのぞむ

足掛け11日間の北海道山旅もいよいよ終盤、
残念ながらアポイ岳のほかは展望に恵まれず、思いを残す結果なってしまった。展望だけで言えば道内山旅過去3回も入れて、今回が最も恵まれなかった。それでも雨の中を登頂するということがなく、昨日まで計画通り山行を重ねて来られたのはラッキーとしなくてはならないだろう。  

そして締めくくりは日本三百名山、夕張山地の最高峰芦別岳である。
トマムの夜は、一晩中荒れ模様の雨が降りつづいていた。朝になってもリゾートエリアー帯は深い霧でほとんど視界がない。晴れていれば薄明が兆す午前4時、外はまだ深更の暗さである。国道に出るころにようやく薄明が差して来た。幸い雨は止んでいる。雨中の登山は避けられるかもしれない。淡い期待を抱いて富良野の町を目指した。  

セブンイレブンで買い物がてら、芦別岳登山口への道を教わる。感が冴えていたのか、登山口の道はセブンイレブンの100メートルほど先だった。新道コース入口と大書された看板がいやでも目につく。  
登山届けに記帳して登山道へ入った。雨粒こそ落ちていないが、今にも降りだしそうな怪しい雲が垂れこめている。登山道はよく手入れされておりまったく問題はない。樹林の道をわき目もふらず足早に登って行く。こういう歩き方は山頂を踏むためだけの味けない歩き方だが、日程と時間に制約されたサラリーマンにとっては仕方ないことだ。

山頂までは標高差1400メートル、かなり急な登りのはずだが、平地を行くような軽い足取りでどんどん高度を上げて行く。1時間10分で最初のポイント見晴台に着く。雨粒がぽつぽつ落ちて来た。『やっぱり』という感しだ。蒸れるのでイヤで雨衣は着ない。暑苦しいより多少濡れる方が涼しくていい。  
早朝の出発だったこともあって、人っ子一人なく山は静まり返り、小鳥の囀りさえ不気味なくらいの静けさだ。見晴らし台から30分ほどで、旧道連絡道の分岐“覚太郎”だった。 ここで2分ほどの小休止。  
展望もない小雨の中をただ黙々と先を目指して足を運び、30分ほどで半面山に到着。小広い山頂で樹木の高いところに半面山というプレ ートがかけられていた。依然として霧に包まれたままである。ここも休 まず先へ進む。  

芦別岳山頂
歩いている新道コースは、アップダウンがなくて効率のいい登りであるが、1カ所だけ半面山からの小さい下りがあった。そのコルに着くと小さな池が霧に煙っている。熊ノ沼という名前がつけられている。このあたりはヒグマの出没するところらしい。雨はほとんど上がっていた。前方には半分霧に隠れた雲峰山が見える。すでに森林限界を越えているようだ。雨上がりの道にはエゾリンドウ、 ホソバトリカブトなどの花が見える。  
ゆったりとした登りを終わると、雲峰山だった。芦別岳を目の前に見るピークである。たった今まで雲に隠れていた芦別岳だったが、私の到着を待っていたように雲が移動しはじめた。待望の芦別岳が、険しい岩山の左半身をあらわした。芦別岳がこれほど峻険な山とは思っていなかった。

雲峰山から芦別岳へ向かって最後の登りになる。山頂直下、じぐざぐを繰り返す険しい岩の登りには、エゾリンドウ、ホソバトリカブト、ウサギギク、ウメバチソウ、ハイオトギリソウ、トウウチソウ、エゾフウロ、ナガバキクアザミ、ミヤミアキノキリンソウ、エゾシオガマ、チングルマの穂花・・・・高山植物も咲き競い種類も豊富だ。  
徐々に視界がよくなってきた。最後は岩を攀じるようにして山頂に立った。  
岩山の山頂は高度感にあふれ、風雪に耐えた神社が祀られている。大展望とはいかなかったが、それでも鋭い北尾根の岩峰群、西側に広がるなだらかな山稜はみずみずしい緑が目に染みる。青く見えるのは夕張岳に違いない。そして東を向けば雲の中に浮かぶ山巓は富良野岳であろうか、その下に富良野の平野が広がっていた。  
それにしてもこの天候で、不十分とは言え展望が得られことをただ感謝。

山頂を後にして雲峰山にかかるところで再び雨がになった。やがて本降りとなって、もう止む気配はない。振り返ると芦別岳は厚い霧のベールに隠れていた。本降りの中、濡れるに任せて登山口へ戻ったのは11時ちょうどだっ た。  

乾いた衣類に着替えて、妻の待つトマムへと戻った。
風呂へ入り、冷えたビールに喉を潤すと、これで北海道山行が終わったのだという安堵感、満足感が広がった。夜はレストランへ出向いて、好きなものを食べたい放題に腹に詰めこんだ。
遠く遠征の山々を無事踏破し、こうして最後のしめくくりをするのは、まことに忘れがたい充実感であった。