追想の山々1060  up-date 2001.07.02

羅臼岳(1661m) 登頂日1989.08.13 曇り 単独
岩尾別温泉(4.10)−−−銀鈴水(5.30)−−−羅臼平(6.00)−−−羅臼岳(6.35)−−−羅臼平(7.10)−−−銀鈴水(7.35)−−−岩尾別温泉(8.35)===カムイワッカ===知床五湖===阿寒温泉
所要時間 4時間25分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
   1989年・北海道の山旅(その2)=(52歳)
エゾコザクラとチングルマ(羅臼平手前)

雨の心配はないが空模様はもうひとつすっきりしない。  
午前4時、予定通りホテルを出る。北海道の夜明けは早い。
木下小屋の前に備え付けられた登山届に記入。今日の日付では私が最初だった。
すぐに樹林の急登にかかるが、それも長くはなく、ジクザグの急登が終わる。
尾根道に変わり、ほどなくちょっとした岩峰の基部から視界の開けたオホーツク展望台に出た。視界はよくないが、眼下にオホーツク海がかすんで見える。羅臼岳は頂上部をガスがまといつき、ときおりごつごつした岩峰を見せるだけだ。昨日登った斜里岳も山頂に雲がかかっている。

展望台を過ぎ、険しい登りもなく順調に歩を進めて、弥三吉水に到着。ここまでコースタイム1時間の所を約50分を要す。私の足で50分だったことを考えると、コースタ イム1時間は少し厳しいようだ。1時間20分から30分というところではなかろうか。  
樋で引かれた冷たい水をコップで思い切り飲む。  

極楽平と呼ばれる背の低いダケカンバの道は、ヒグマが出そうな雰囲気が漂う。鈴を鳴らしながら歩いていたが、いつかヒグマのことは忘れていた。極楽平は楽園のようなところを想像していたが、想像とはほど遠くただ潅木帯のだらだらした登りにすぎなかった。

急登となった道を登りきると銀鈴水の水場だ。水の量は多い。小さな流れをまたいで再び潅木の道がつづく。 左手に硫黄山、知円別岳等の知床南部の山並みが見える。しかし羅臼岳だけは相変わらず雲が更に下の方まで降りてきているようだ。  
強風濃霧の羅臼岳山頂
潅木帯を抜け出ると雪渓の沢筋に出た。雪渓の両側を踏み跡がついている。お花畑が広がり、エゾコザクラ・アオノツガザクラ、そしてみごとな群落はエゾノツガザクラだ。
アイゼンがあれば雪渓を歩いたほうが楽だろうが、ひと足ごとに崩れて滑りやすい足場の定まらないザレの急登を喘いで、ハイマツの中のガラ場道にたどりつく。すぐ先が羅臼平だった。  

霧の中でテントを撤収している人、テントの中の話声。数張りのテントが風にはためいている脇を抜けて、羅臼温泉へ直進する道を分けて右に項上への指導標に沿って進む。  
ハイマツの斜面を霧が絶え間なく去来していく。岩の隙間から水滴がしたたりコップがその水滴を受けている。一 杯ごちそうになる。冷たくておいしい。  
水滴の岩場からは一変して岩場の険しい登りとなる。しばらくは岩場と草付きを繰り返すが、やがて巨岩累々と折り重なる急斜面となり、ペンキ印だけが頼り、ペンキを一つ一つ追いながら、帰りの道も記憶に留どめて慎重に行く。  
最後に巨岩のそそり立った岩峰の下に立つ。ペンキ印に誘導されて岩を飛び移って岩峰の一角に立った。立っているのも危険を感じるほどの強風で、はうようにして10メートルほど進んだところに羅臼岳山頂表示があった。
これが知床の山、眺望はないが感激がわく。

帰りは岩場の下で道を見失い、濃霧の中行ったり来たりしたが無事岩尾別温泉へ下山した。