追想の山々1067 up-date 2001.07.06
前夜、白岩第二砂防ダムに野営 第二砂防ダム(3.45)−−−(ルート誤り、ロス1時間、丹渓谷山荘5.30)−−−角兵衛沢入口(5.50)−−−大岩(7.23-30)−−−角兵衛のコル(8.40-50)−−−第一高点(9.00-9.40)−−−コル(9.55)−−−大岩(10.30)−−−角兵衛沢入口(11.20)−−−第二砂防ダム(12.10) |
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所要時間 6時間25分(ロス除く) | 1日目 ***** | 2日目 **** | 3日目 **** | ||||||
体力完全燃焼の山行=(55歳)
戸台荘のおばさんが、第二砂防ダムまで自動車が入れることを教えてくれた。これでアプローチが1時間短縮できる。 参考資料では日帰り困難となってるコースを、あえて日帰りで登る計画の私としては、1時間の節約は大きい。 河原の中の道だが、案外走りやすい。第二砂防ダムが行き止まりだった。ここが白岩というのだろう。 明朝未明の出発に備え、コースの下見にでかける。転石の広い河原の中だが、懐中電灯でも歩けそうだ。 自動車の中で寝る。 夜明前の3時45分懐中電灯で出発する。 幅100メートルもある河原の中を、歩き良いところを選んで適当に遡って行く。伏流となっていて流れはない。ペンキ印や赤布があったりするが、暗くて見落としがちだ。 水の流れが見えて来た。転石を踏んで右、左とコースを選び、流れを渡ったりしていくうちに、足元が明るくなってきた。そろそろ登山コースの角兵衛沢入口に着くころと目を配っているが、 参考資料に載っている大看板が見えない。背の高いケルンが立っている。これが入口の目印ではなかろうかと思って、あたりを探してみたが、暗いせいもあってそれらしい道が見当たらない。 河原が狭まって来て、右岸にはっきりとコースが確認できるようになって来た。『石室六合コース』という表示がある。ここで戸台川は右に大 きく湾曲している。(赤河原と呼ばれるところだった) 湾曲したすぐ先、左手上に山小屋が見える。まさか丹渓山荘というこ とはあるまい。もしそうだとしたら角兵衛沢入口をとおに通り過ぎてしまったことになる。 巨石に『北沢峠』というペンキ書きがみえる。北沢峠の表示を追って急坂の山道へ入ってみた。このまま行くと北沢峠まで行ってしまう。今日は時間との勝負という思いが強く、途中地図の確認もなく遮二無二歩いて来てしまったが、5分ほどこの急坂を登ったところで地図を広げ落ち着いて検討してみる。 角兵衛沢を過ぎていることは間違いない。ではその角兵衛沢はどこにあったのだ。戻って様子を見るより仕方がない。先程見えた小屋の前まで行ってみた。何とそれが丹渓山荘だった。小屋には人の気配もなく廃屋のようだ。 河原を戻って角兵衛沢の入口を探すことになった。時間のロスがプレッシャーとなって気を重くする。すっかり明るくなると、いままではっきりしなかった踏み跡が明瞭に見えて来た。ずっと河原の中を歩いて来たが、正規の道は左岸の木立の中に、迷いようもなくしっかりとついていた。さらに見落としようもない大看板も、角兵衛沢入口の表示も、案内書の通り立っていた。 歩きにくい河原の真ん中を歩いて来たのがそもそも間違いだった。 看板のある左岸から、角兵衛沢のある右岸に渡ると、薄明の中でみたケルンだった。さっきは暗くてわからなかったが、小さな標識と登山道があった。 ほっとして樹林の道を15分も行くと、幅30メートルほどの涸れ沢に突き当たる。そのまま沢を横断したが、道がつながっていない。踏み跡らしいものも見当たらない。念のためケルンの場所まで戻って確認すると、確かに『鋸岳』の表示がある。この道で間違いないはずだ。 もう一度涸れ沢まで行く。往復25分のロス。 やはり沢から先のコースがわからない。仕方なく荒れた沢の転石の中をしばらく登り、左岸の樹林に入って道を探して見た。コースらしいものは見つからず、再び沢に入って遡上する。今度は右岸の樹林に入って見る。朝からのロス時間を考えると、これで道が見つからなかったら今日の登山は中止と決めて、苔むした原生林を分けて中へ入って行く。思いもかけず明らかな踏み跡が見つかった。これが正しいルートかどうか自信はないがこれをたどって見ることにした。
厳しい急登である。左に涸れた沢が見えたりするが、踏み跡は細々と樹林の中を登って行く。ときには踏み跡も消えかかったりして立ち止まる。 もう4時間も休みなく歩き続けている。岩石の堆積するところで踏み跡がなくなった。道の迷いもあって、いつになく疲労感が大きい。座り込んで休憩を取る。巨大な城壁のような岩壁が肇え立っている。幕営可能な角兵衛の大岩だろうか。そうだとすればこれが鋸岳へのコースに間違いない。ようやく不安が薄らいで鋸岳への期待が湧いてきた。 大岩の基部まで行く時間が惜しくて、岩石堆積帯から左上に遡上して行くと、潅木の疎林から大きなガラ場に出た。下山時、潅木疎林に入る場所を見失わないよう、赤布で目印をつける。 ガラ場は岩なだれの跡かと思えるような、岩石のデブリだった。一歩で半歩ずり下がるような悪場、岩片に乗るとずるずる崩れる。踏んだ岩石が周囲の岩石も誘ってさらに崩れる。傾斜は胸を圧するほどに急だ。この岩が一気になだれる心配はないのか。不安がよぎる。汗が滝のようだ。 ガラ沢の上部を見上げると、両側から岩壁が迫り、沢幅はぐっと狭まってきた。狭まった先がくびれて明るく見える。あれが角兵衛のコルだろう。
魔窟のような異様な岩石帯を、足場を気にしながら角兵衛沢入口から3時間の大アルバイトでコルへ登り着いた。 コルからは右へ、衝立のような険しい岩の稜線をひと登りすると、鋸岳最高峰の『第一高点』だった。南面は覗くこともできない絶壁だ。 生憎周囲の山並みは雲の中で眺望はない。わずかに甲斐駒が見え隠れするのと、第二高点への切り立っ稜線、それに角兵衛の頭方面が見えるのみ。 休憩かたがた40分程晴れるのを待って滞頂したが、結局期待した展望を得ることはできずに下山することになった。 コルヘの下りで浮いた木の根に乗って転倒、弾みでストックを飛ばしてしま い、いくら探しても見つからない。よほど遠くへ投げ飛ばしてしまったようだ。それにしても、もう少し場所が悪ければ何十メートルの断崖を空中に飛び出してしまうところだった。冷や汗が流れる。 コルから角兵衛の頭へ登って第一高点を見てみた。さすが足のすくむような険しいピークである。 下山も角兵衛沢入口まで1300メートルの高度をひたすらの下りだ。 流れる汗に水を飲み尽くしてしまい渇きがひどい。早く沢に下りて水をガブ飲みしたい。 今朝ほど角兵衛沢の涸れれ沢に突き当たって、ルートがわからなくなったところまで下ってきた。何のことはない、下から登って来て沢に突き当たったところで徒渉して上の方ばかり探していたが、実は登山道はそこからわ数メートル下流からつながっていたのだった。 登山道は当然上の方という先入観念が判断を誤らせたのだ。赤布などもあって、冷静に探せば見落とすはずもないところだった。時間ロスに焦っていたのだ。 これだけ汗をかいた登山も久しぶりのことだった。大きなロスタイムがあったが、予定より相当早い時間で踏破することができた。 沢の水を思い切り飲んで白岩の自動車まで下った。 |