追想の山々1076　　up-date 2001.07.14

荒沢岳（1969ｍ）　登頂日1993.09.11　曇り　単独

荒沢岳登山口（10.00）−−−前山（10.30）−−−前�ｰ（11.40）−−−荒沢岳（12.45-13.00）−−−前�ｰ（13.40）−−−前山（14.45）−−−登山口（15.00）
所要時間　５時間００分	1日目　*****	２日目　****	３日目　****
名峰、日本２００名山＝（５６歳） 越後駒ケ岳から荒沢岳をのぞむ 上越の寂峰〈未丈ケ岳）と〈荒沢岳）の２座登頂を目的にして出かけた。 最初に登る予定の未丈ケ岳はルートがどうしてもわからない。７時１０分から９時３５分まで雨の中をうろうろしたあげく未丈ケ岳は諦め、再調査の上後日登ることとした。その代わり翌日に予定していた荒沢岳を繰り上げて今日登ることにしたが、時間的にはちょっと遅すぎる気もする。朝から２時間半も無駄な体力を浪費した後の疲労も考えると、おいそれと健脚コースの荒沢岳へ取り付くにはやや不安もあった。 銀山平の荒沢岳登山口へ自動車を向けた。荒沢岳登山口はすぐにわかった。登山届ポストもある。登山届けを見ると52才の男性が3時下山の予定となっている。時刻はちょうど午前10時。コースタイム7時間20分、今から登ると下山は夕方の5時過ぎになる。ぼつぼつ夕暮が近づく時間・・・私の足なら1時間の短縮は可能で午後4時には下山できる・・・とっさに計算して登ることにきめた。 雨雲は相変わらずだが、今のところやんでいる。 出だしは草の茂る平坦な道だったが、すぐに滑りやすい急登となった。タイム短縮に急かされて前山には訳なく到着。足を止めずに先を急ぐ。 　 ブナ林の尾根は小さい起伏をいくつか繰り返して行く。前方に険阻な岩壁が見えて来た。ガスで視界は不十分ながら、その険しさは察することができる。それが前�ｰの岩峰だった。 岩壁の基部にぶっつかるところから、いきなり鎖にとりつく。霧のため全体感はつかめないが、鎖・鉄梯子が連続してつぎつぎと行く手に待っている。雨で岩が滑りやすく気を使うが、天気のよいときならば、結構楽しみながら登って行くのではなかろうか。 　 ときに垂壁を攀じり、ときに岩棚をへつったりしながら行くと、途中からしばらくは下りに変わる。そして最後の急峻な岩肌を鎖を頼りに登り終わると、ようやく平坦の岩稜に飛び出した。 　 岩稜をわずか行ったところが前�ｰ1536ｍのピークだった。ここまでで約800メートルを登った勘定だ。残りは400メートル余。まだひと頑張りも、ふた頑張りも必要だ。 目指す荒沢岳の山頂は雲に覆われてうかがうことが出来ない。 尾根を忠実にたどる道は明瞭ではあるが、歩く人も少なく刈り払われた笹株がそのまま残っていて歩きずらい。尾根は段状に高度を上げて行く。あの段に登れば、そこが主稜線か・・・、今度こそあの段が主稜線・・・・何回も期待し、裏切られて傾斜を強める痩せ尾根をひたむきに歩いて飛び出したのが、荒沢岳から伸びる主稜線だった。『９』という標示板あるが、多分９合目の意味だろう。山頂は近いようだ。 荒沢岳山頂 右に折れて主稜線を行く。まばらな低潅木の細い稜線は、展望を遮るものもなく、もし天気がよかったらどんなにか素晴らしい眺めだろう。 霧で閉ざされた山頂は、そのピーク目前になってようやく姿を確認することができた。 　 山頂には登山届けの男性が一人。 二等三角点標石のある山頂は、遮るものもない好展望台という感じである。深田クラブ選定日本二百名山の荒沢岳、これは日本百名山に入れてもおかしくない山だと思う。荒沢岳が日本百名山にも、そして三百名山からも外れていることが、不思議に思われる素晴らしい山だと思う。 この山域は、名山と言うに等しい山があまりにも多く、そのために割を食ってしまったということだろうか。深田久弥「日本百名山」の後記には、惜しみつつ選定から洩れたことが記されている。　 稜線の北側は濃いガスが渦巻いていたが、南側は深い谷が足下に切れ落ち、その谷を挟んで平ケ岳らしい大きな図体が見える。頂上には雲がからんでいて確認できない。 そして天気がいいと巻機山、越後三山、それに日光や尾瀬や会津の山々も一望できるという。今は見えぬ山々を想像するのみ。 叶わなかった展望に心を残して下山の途についた。先ほどの男性は鎖場が怖いから私の後について下ると言ったが、私とは足が合わず、あっという間に後ろに遅れていった。 結局コースタイム7時間20分を5時間弱で往復できた。 　 残った明日を越後駒ヶ岳登項にあてることにして、登山口の技折峠へと移動した。