追想の山々1100  up-date 2001.09.05

高塚山(1621m) 登頂日1992.08.28 単独
山犬の段(5.40)−−−蕎麦粒山(6.15)−−−コース間違いロス20分−−−五樽沢コル(7.00)−−−三ツ合山(7.25)−−−高塚山(8.00-05)−−−三つ会山(8.35)−−−五樽沢コル(9.00)−−−林道(9.05)−−−山犬の段(9.35)
所要時間 4時間15分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
   南ルプス前衛の日本300名山=(55才)
高塚山山頂


2週間の北海道山旅から帰るとすぐに南ア鋸岳へのハードな山行、さらに又休暇を取って高塚山、上河内岳へ行くというと、さすがに妻も息子もあきれ顔だった。  

勤務から帰宅すると早速洗腸、8時就寝。深夜1時過ぎには自宅を出た。東名静岡I.Cから本川根町経由中川根町へ。うす明るくなってきた頃ちょうど通りかかった地元の自動車を止めて尾呂久保への道を教えてもらう。一車線の登り勾配の道を走って、最終集落の尾呂久保を抜けるころにはヘッドライトもいらなくなっていた。ダートに変わった南アルプス赤石線をどんどん奥へ入って行く。大礼山登山口の標識を見て、さらに奥へ奥へと走りつづける。砂煙をあげる砂利道も、手入れはよくて凹凸も少なく快調な林道だ。(この道は現役の林道で、帰途木材を満載したトラックが走っていた)  

登山口の『山犬の段』は林道途中の広々とした平坦地で、静岡県自然公園に指定されている趣旨の案内坂が立っていた。登山者のための山小屋(山犬の段小屋)、野鳥の図鑑板、登山道の道標、一段高くなった木立の中には4〜5脚のベンチのある展望台もある。  
道標にしたがって蕎麦粒山へのコースに入る。ブナ等の気持ち良い樹林の道は、たいした勾配もなく道は整備され、野鳥の囀りが耳にここちいい。
蕎麦粒山まではわけなかった。樹林の頂きは東面が切り開かれて展望がきくように配慮されていたが、今朝は谷底からガスが上って眺望は得られなかった。  
山頂からの道は二つに分かれる。地図に照らすと、右手が高塚山方面のようだが、私の頭の中での方向感ではその道は林道へ下ってしまいそうに思えて左の道をたどってしまった。10分近く下って後方をうかがうと、樹間に蕎麦粒山から派生しているらしい尾根が見える。あの方向に尾根が伸びているということは、 どうやらその尾根の先に高塚山があるらしい。やはり右への道が正しかったようだ。蕎麦粒山まで戻る。往復20分強のロス。地図を広げてもう一度じっくりと見てみると、左は大礼山へ通じる登山道だった。  

蕎麦粒山からは、林道へ出てしまうのではないかと心配になるくらいどんどん下っていた。以前は笹のひどい道だったというが、現在は刈り払いもいきとどき踏み跡も明瞭で、安心して歩くことができる。
ときどき『千石平』という古い標識プ レートが目につく。この道は千石平への登山道として拓かれたものらし く、高塚山という標識はまったくない。  
樽沢のコルヘ着く。さらに少し下れば林道だ。帰りはここから林道へ出てしまう予定である。コルからは三ツ合山への登りとなる。三ツ合山手前あたりから笹かぶりとなり露に濡れる。木の間より高塚山方向へ張り出した尾根がかいま見えてきた。特徴もない平坦に伸びる尾根の先端に、やや高まったあたりが高塚山であろう。ひと登りすると三ツ合山で右千石平、左高塚山の小さい表示があった。高塚山への標識はこれが唯一のものだった。日本三百名山にしては不遇をかこっているようだった。

三ツ合山といってもピークらしい感じはなく、稜線の一部分というに過ぎなかった。  
高塚山方面へはいったん小さな下りとなる。露含みの笹薮こぎとなって雨具を着た。小さな上下そして平坦の尾根を行く。林床一面笹を敷き詰めた疎林だ。樹木の伐採後に笹がはびこってきたものだろう。かつては鬱蒼とした原生林だったのかも知れない。笹こぎがつづく。背を越す笹薮に足元も見えず、足探りしながら歩くところもある。何年も刈り払いがされていないようだ。それでも迷う心配はない。雨具を着なかった下半身は笹露でずぶ濡れになっている。
平坦に見えた尾根も多少のアップダウンがあり、最後に深い笹を分けて着いた笹原の中に10平方メートルばかりの刈り払いされた空き地があって、そこが高塚山の山頂だった。突起のないのペっとした平頂で、頂きに立ったという実感はない。“三角点を大切に”という標柱の脇に、笹に埋 もれた二等三角点標石があった。
樹木に囲まれてまったく展望はない。ときおり去来する霧が樹間を抜けて行く。今日は絶好の快晴のはずだったが、湿っぽい雲がかかって上空わずかに青空が見える程度だった。日本三百名山に選定されたのが信じられないような平凡な頂きに、やや失望を禁じ得ない。あるいはよそから見れば素晴らしい山容があるのだろうか。渋く落 ち着いた雰囲気がこの頂の特徴であろう。

帰途は樽沢のコルから林道へ下ると谷を挟んで黒法師岳があった。南赤石林道はさらに奥へと続いて、前黒法師岳の山頂近くを巻くよう にして山の陰に消えていた。林道を30分も歩くと山犬の段に帰りついた。  

本川根町へ戻り、寸又峡温泉方面へ向かう。狭い渓谷を走り寸又峡温泉手前で接岨峡温泉への林道へと別れる。擦れ違いも難しいような狭い林道である。
接岨峡温泉で入浴、さっぱりした気分で井川ダム経由畑薙第一ダムへ向かった。