追想の山々1105 up-date 2001.09.09
田子倉(6.45)−−−大久保沢水場(7.30)−−−剣が峰(8.15)−−−浅草岳(9.20)−−−天狗の遊び場−−−浅草岳(10.20)−−−前岳分岐(10.30)−−−鬼ケ面山(11.45)−−−電波塔(12.55)−−−六十里越え登山口(13.20)→→→自転車で田子倉まで所要25分 | |||||||||||
所要時間 6時間35分 | 1日目 ***** | 2日目 **** | 3日目 **** | ||||||||
一等三角点、越後山脈の勇峰=(54歳)
関越道はワイパーもきかない滝のような雨、だが谷川岳直下の長いトンネルを抜けて新潟県に入ると、雲は垂 れ込めているものの、雨は止んでいた。 小出ICからJR只見線と平行する国道252号線を会津若松方向へ走る。夜明けの集落をいくつか過ぎて、道はいよいよ山間に深まってくる。右に毛猛山登山口を見送り、急カーブをいくつか曲がりながら上って行く。六十里トンネルの入り口が、黒くぽっかりと見えるほどの場所に、鬼ケ面山経由浅草岳への登山口表示が立っていた。 持ってきた自転車をここで降ろして、さらに六十里トンネルを抜け10キロ余走ると、登山口のJR田子倉駅に到着した。無料休憩舎があって登山者の姿があった。 浅草岳、守門岳は、日本百名山を目指した初期のころから、一度は登ってみたいと思い願っていた山だった。 雨は止んでいるが雲は低く、登山日和とは言えないが降る心配はなささそうだ。40〜50台は駐車できそうな広場の奥に『浅草岳登山口』の道標がある。 草はたっぷりと露を含み、かなり激しい雨が降った様子がうかがえる。すぐにズボンの裾が濡れてきた。登山道には雨水が流れを作り、靴を濡らすまいと気を使うが、草露でズボンから下はしめってくる。 15分ほどで沢の流れに下った。沢を渡るための飛び石も水没している。靴を脱ぐのも面倒で、下流側のやや狭いところを対岸に飛び移り、木の枝にぶら下がりサーカスもどきに沢辺をへつって、何とか足を水に浸けずにすんだ。 『最後の水場』と書かれた大久保沢あたりはブナ林が美しい。 本格的な登りとなって汗が吹き出す。“熊の爪あと”という案内板がある。見るとブナの幹に引っかき傷が残っていた。“分かれ”という表示もある。『熊狩りのときここで左右に分かれて進む』とある。只見線がまだここまで延びずに秘境だったころ、周辺の山々には多くの熊が生息していたのだろう。 ここは我が国のみならず世界的にも屈指の豪雪地帯、樹木はすべて斜面を這うように下に向かっている。 尾根上に出るとやっと明るく空が抜けて来た。背後には田子倉ダムが見下ろせ、その後方には幾重にも連なる山並みが見える。ことに左側の鬼ケ面山の険しい岩壁が目を引きつける。雲に見え隠れするノコギリ歯のような稜線は、襞に残雪を蓄え、谷川岳の岩稜に似た迫力がある。それとは対称にブナの軟らかな緑がすがすがしい。 歩き初めてから1時間半、剣ケ峰付近からの鬼ケ面山の眺めは特に際立っていた。稜線の雲も切れてまさに絶景だった。 剣ケ峰からはさらに急登となって汗が滴り落ちる。鬼ケ面山の景観に慰められ、ときどき振り返っては田子倉ダムからここまで稼いだ高度に納得しながら足を運ぶ。止めて来たマイカーが小さく見える。 潮見峠という標識があったが、峠という感じはない。頂上はあとひと息、ヒメサユリが一輪。2時間35分で浅草岳頂上に到着した。 コースタイムより1時間早かった。だれもいないかと思ったのに三人の先着者がいた。一等三角点で記念写真を撮る。前岳方面からの夫婦連れが二組相次いで到着する。 狭い山頂には石祠が祀られ、ロウソクを灯した跡や賽銭が供えられていた。山頂から入叶津方向へ少し寄ったところにヒメサユリの大きな群落も見られた。
下山は鬼ケ面山経由のコースをとった。 前岳方面に少し下ると木道になり、その先は大きな雪渓となる。雪渓周辺はコイワカガミやイワイチョウが咲いている。前岳分岐で五味沢方面への道を見送り鬼ケ面山へ向かう。低木がからみあい、岩の露出した急下降の悪路がつづく。このコースをとったのはちょっとまずかったかな、ふとそんな反省がよぎる。浅草岳への登りから眺めたそのままに、鬼ケ面山はノコギリ歯のような悪路の登り下りを何度も強いられた。振り返ると浅草岳周辺の雲が切れて全容を目の前にあらわしていた。ヒメサユリが見飽きるほどにつぎづきと姿を見せる。 いくつピークを越したか、1465メートルの鬼ケ面山には三等三角点があった。悪路もこのあたりまでで、あとは安心して歩ける道となっ た。 南岳と呼ばれるあたりで、浅草岳を描いて老夫婦に出会った。私と三人、山座の確認に熱中。越後駒ヶ岳、中岳、荒沢岳、毛猛山などが確認できたが、遠く霞む山々は判然としない。 老夫婦に別れて急坂をピッチを上げて下った。 マイクロウェーブ中継施設から、あと15分ばかりと踏んでいたが、どうしたわけかなかなか遠い。30分ほどかかってようやく自転車を置いた、六十里越トンネルに下り着いた。 自転車に乗って田子倉までは、ほとんど漕ぐ必要のない下り一方の道。歩けば2時間以上というところを、30分そこそこで自動車を止めた田子倉駅に着いた。 只見線の二両連結の列車がトンネルから出て来て、雪避けシエードに覆われた無人の田子倉駅に入って行った。 今日のテント泊予定地の大白川へ向かった。明日は守門岳へ登る予定である。 |