追想の山々1106  up-date 2001.09.09

守門岳(1538m) 登頂日1991.07.07 単独
牧場登山口(4.15)−−−尾根上(4.35)−−−水場(5.25)−−−三の芝(5.35)−−−守門岳(6.20-35)−−−青雲(6.45-7.25)−−−守門岳(7.35)−−−三の芝(8.10)−−−牧場登山口(9.20)===東京自宅へ
所要時間 4時間20分(山頂休憩を除く) 1日目 ***** 2日目 ****
   会津・越後国境の名山=(54歳)
青雲から見た守門岳


守門岳登山口はいくつかあった。急登ながら時間的に早く登れて、マイカーアプローチが楽なのは大白川村大原からだった。  

前日浅草岳を登った後、田子倉から252号線を走って大白川の村落に入り、大原国際スキー場を通過して、林道終点の放牧場の中に守門岳登山口があった。大白川村落から5キロほど奥へ入ったところだ。  
早速登山口の真ん前にテントを張り、大白川の村落まで戻って缶ビールとジュースを買って来た。守門岳から下山して来た数人の登山者も去って、ここには私一人だけ。放し飼いのヤギが人懐っこく寄ってきた。そばに付きまとって離れない。テントの中にまで首を突っ込んでくる。
取り囲む緑の草原、一人ビールを味わっていると自然の中に溶けて行きそうだ。放牧された牛の声がのどかに響く。小川の瀬音が耳に心地いい。  
幼な子を連れた家族4人の乗った自動車が着いてテント設営をはじめた。おやおや、今日はここで泊まるのかな。一人の夜ではなくなったらしい。目があっても知らん顔だ。

夜半テントから空を見上げると、満天の星がこぼれんばかに瞬いていた。そう言えば今日は七夕だった。明日の守門岳が待ち遠しい。  
目が覚めるともう外は白み始めていた。  
4時15分出発。牧場の有刺鉄線の間に敷かれた木道から登山道に入る。とっつきから樹林の薄暗い急登がつづく。鉄砲登りの急登を2 0分、ワンピッチで頑張ると明るい尾根に出た。かなたに凹凸の山稜 がうかがえる。かなり遠くに見えるので、浅草岳かと思った。(それがめざす守門岳だったが、このときはわからなかった)  
尾根歩きとなっても急登は変わらない。見晴らしのいい尾根がつづくが、ときどきブナの樹林になったりする。前方の高みが守門岳であることにようやく気がついた。深く切れ込んだ谷を隔てて聳える姿は、とても1500メートル程度の山とは思えない。堂々として威圧感さえ漂わせていた。深い山襞には残雪が幾筋も模様をなしていた。  

守門岳山頂
太陽の光が届くと周囲の景色が見違えるように輝きだした。はるかな山並みも薄墨色のシルエットとなって浮かび上がってきた。早く頂上へ着いて山座の確認をと気が急く。何回も胸を突く急登を越え、守門岳に見とれ、その背後に競り上がって来た浅草岳の優雅な姿に満足して足を運んだ。  

一本調子の登りが、初めて潅木の中をいくらか下って、清流の沢に出た。手の切れるような冷たい水が、勿体ないほどに流れている。もう半分以上は登っただろう。喉を潤し、一服して出発した。潅木帯を5分も登ると広々とした草原で、守門岳と田小屋の分岐道標が立っている。草原の雪渓を越えた先が小鳥帽子らしい。標高1280メートル、 あと250メートルだ。遥か遠かった守門岳が、朝日に輝いて目の前に近づいてきた。鴬の声がすぐそばに聞こえる。薮の中へ目を凝らすが姿は見えない。声は2〜3メートルの距離なのに見えないのだ。擬似色というのか、本当は見えているのに、個体を識別できないのだろう。  
最後の急登はツマトリソウ、オオバキスミレ、アカモノ(=イワハゼ)、ミ ツバオーレン、コイワカガミ、シロバナヘビイチゴ、マイズルソウ、ニッコウキスゲなど、亜高山帯の植物が目につくようになった。
朝陽を浴びた明るい尾根を登りつめて袴岳のピークに立った。6時20分。風が冷たく長抽をまとった。あたりはニッコウキスゲが咲き競っている。守門岳というのは、この袴岳から青雲岳、大岳に至る山頂部一帯を言うのだそうだ。石祠と二等三角点のある1538メートルの袴岳はその最高点だった。  
待望の展望は、まず目につくのが昨日登った浅草岳。登ったときは険しい山だと思ったのに、ここから見る姿は、左にゆったりと裾を流し優雅そのものであった。その後ろの山々は会津朝日岳か。毛猛山、未丈ケ岳、その後ろにはやや霞んで会津駒ヶ岳、燧ケ岳、平ケ岳。越後三山が並び、その左に大きく羽根を広げた鳥のような荒沢岳。遥かに頚城の妙高、火打山。遠く雲海に浮かぶ山脈は飯豊、那須。  

青雲岳山頂
青雲まで足を延ばした。袴岳から下って行くと木道となり、広々とした草原の青雲には小さな池塘が二つ、目下保護中で立ち入り禁止でロープで囲ってあった。スケッチをしたりして1時間ほど過ごし、再び袴岳に戻り下山の途についた。
登って来る女性3人「あれ、根橋さんですか?」 「えっ」実に驚いた。今年のゴールデンウイークに双六岳スキー登山に参加したときの女性だった。
これから登って行く人に次々と擦れ違う。今日は快晴に恵まれた日曜日、じっとしていられなくて出掛けてくる山好きも多いのかもしれ ない。

天候に恵まれ越後の名山2座に満足した2日間 だった。この二山は、日本百名山のどれかと入れ替えたいほどのいい山だった。