追想の山々1108  up-date 2001.09.13

太平山(1171m) 登頂日1991.08.04 単独
仁別国民間森・旭又キャンプ場(5.00)−−−太平山(7.05-15)−−−笹森(8.05)−−−旭又キャンプ場(8.55)===能代市・二ツ井町===十二湖フレッシュ村キャンプ場
所要時間 3時間55分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
   1991年、300名山めざして東北の山旅へ(その1)=(54歳)
雨の太平山頂上

未明に東京を発ち、東北自動車道を一路北上、秋田へ向かう。一日がかりのドライブだ。北上江釣子ICで東北自動車道を出てルート107号を横手市へ。横手市のスーパーマーケットで食料を購入、秋田自動車道へ入って秋田市へ。この秋田自動車道はつい先月開通したばかりの高速道である。横手〜秋田南間の一部開通であるがいずれ東北自動車道から秋田まで開通するのだそうだ。雨の降りしきる高速道はワイパーもきかないようなすごい降り。秋田南ICを出て秋田市内へ入る。市内も土砂降りの激しい雨。明日からはじまる秋田芋灯の飾り付けも雨にたたかれていた。
キャンプ地の仁別国民の森・旭又キャンプ場への道がわからず、土砂降りの中を警察に飛び込んで教えてもらい、無事キャンプ場へ到着した。そこは秋田市内から1時間弱の林道終点であった。
キャンプ場もまたひどい雨、人っ子一人いない山奥。今日はここにテントを張って一夜を過ごすのだが妻も不安げだ。幕営場所は駐車広場から渓流の対岸斜面にある。この雨の中でテント設営するのは気が重い。駐車広場のすぐ上に四阿が建っていたので、その屋根の下にテントを張った。
降りつづく雨で渓流は奔流と化し、ごうごうという轟音を夜通し響かせていた。耳を覆う奔流の音にも慣れて、いつしか眠りについていた。 夜中、強い雨はおさまる気配がなかった。

白みはじめた様子に外を覗くと、雨は止んでいたが目の前の山は霧に包まれ、雲は低く垂れ込めている。これではただ山頂を踏んで来るだけになるだろう。妻を連れて行っても仕方がないので、一人で山頂を往復して来ることにした。  
登山口は旭川の小さい橋を対岸に渡る。川は奔流となって岩をかみ砕き、しぶきをあげて狂ったように流れ下っている。橋の先で道は2分する。左は馬場目岳、直進は太平山。よく整備された登山道を直進、雨後の道は川になっている。
5分も歩くと左赤倉岳の標識を見送る。つま先上がりの緩い登りがしばらくつづき、旭又沢を渡り、さらにその先で弟子還沢を渡ると、道は折り返すように曲がって御滝神社となる。垢離場と書いてある。自然石を穿った階段を登ると支尾根となり登山道らしく勾配も急になって来た。杉の巨木が目につく。普通の杉より樹皮が分厚く柔らかそうに見える。秋田杉と札がかかっていた。  

きつい尾根を登ってちょっとした下りに変わったところが御手洗である。小広い平坦地で、清水の湧く池があって石仏などもひっそりとたたずんでいる。周囲はブナの原生林である。御手洗からひと登りで樹林を抜け出し稜線に立った。稜線は右が太平山、左は笹森へ。東側からガスが稜線を越えて流れて行く。風が強く寒い。
低潅木の稜線を右に少し行くと立派な鳥居をくぐり、そのすぐ先が太平山頂上だった。  
山頂には三吉神社奥宮と参寵所が建っていた。時間が早いせいもあるが、登山者は一人も見えない。霧で何にも見えない。信仰の山らしく別の方向にも立派な鳥居があり、石柱やら人工的な建造物が多い。神社の中には明かりがついて神官がいるようだ。そんな中に一等三角点がしっかりと座っていた。  
参籠所(休憩舎)の扉を開けて中に入ると、初老の管理人が一人留守を守っていた。休憩料が200円だという。財布を持って来なかったので事情を話し、旭又駐車場四阿のそばの小さな社に置いて行くからというと、「いいですよ」と言ってくれた。案内書では信者や登山者で賑わうということだったが、管理人の話では、この悪天侯のせいもあって、昨日も一人も登って来なかったということだ。

稜線を先程の分岐まで戻り、御手洗への道を見送って笹森方向へ稜線を直進する。この悪天候の中、稜線を行っても仕方ないとは思いながら、再び訪れることもなかろうと思うと、もう少し歩いておきたかった。  
道は薮がかぶさり下半身はたちまちびしょぬれになってしまった。ところどころ道も崩れてあまり手入れはされていない。笹森までは意外に時間を要し、途中「道を間違えたかな」 と思ったほどだ。  
潅木を抜け出した明るい小ピークの笹森も、周囲はガスに閉ざされて眺望はゼロ。旭又駐車場への下りにかかると、道は素晴らしいブナの原生林の中へ入って行った。樹肌の美しいブナ純杯の見事さに目を奪われ、笹森経由のコ ースにした甲斐があったと喜ぶ。  
川さながらの道をひたすら下って駐車場に到着したのは9時少し前、予定より1時間ほど遅かった。  
駐車場には3台ほど自動車が止まっている。これから登りにかかろうという人に、200円を参籠所へ渡してくれるよう依頼する。  

テントをたたんで旭又を後にした。  
何回か迷ってようやく国道7号線に出る。途中目についた駒形温泉というのに入浴して汗を流しさっぱりする。二ツ井町まつりなどの展示即売場へ顔を出したりして、さあ今日の宿泊地十二湖へと思って地図を見て、とんでもない方向へ走って来た事を発見。能代市まで戻り、あとは一目散に日本海岸を北上。岩舘あたりの奇岩の散在する海岸、紺碧の海の色、透き通った空の青。右手に明日登る白神岳登山口の表示を確認、十二湖はそれから15分ほどだった。
十二湖周辺は観光客の自動車が溢れていた。東京周辺のナ ンバーもかなり目につく。キャンプ場はフレッシュ村といって、中にはログハウスやバンガローもある。テントを張るのが面倒でバンガローを借りる。6人位はゆっくり入れる広さがあって余裕たっぶり。公衆トイレも水洗式で清潔である。洗陽もバンガローの中で無事すまし、明日に備え早々に就寝した。