追想の山々11109  up-date 2001.09.13

白神岳(1232m) 登頂日1991.08.05 妻
陸奥黒崎登山口(6.00)−−−二俣(6.25)−−−蟶山=マテヤマ分岐(7.00)−−−稜線(7.45)−−−白神岳山頂(8.05-20)−−−マテヤマ分岐(9.05)−−−最後の水場(9.20)−−−二俣(9.45)−−−登山口(10.05)===森吉町沢温泉===こめつが山荘
所要時間 4時間5分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
   1991年、300名山めざして東北の山旅へ(その2)=(54歳)
白神岳山頂付近の避難小屋と岩木山


5時前起床、十二湖キャンプ場から白神岳登山口ヘ向かう。五能線黒崎駅近くで白神岳の道標を見て国道7号線から白神平へ。国道から自動車で10分ほど入ったところだった。  
青空も見えて天侯はまずまず。気合が入る。白神岳登山口の表示を確認して6時出発。  
最初は軽い登りを行く。妻の足では山頂往復は時間がかかり過ぎるので、私だけ頂上を目指し、妻は登れるところまで登ることにして途中足を速めて別れる。
自然保護か開発か。かつて日本列島の山林を覆っていたといわれるブナ原生林は、厄介物扱いされて皆伐が進み、今大規模に残っているのはこの白神山地だけ。青森〜秋田間のスーパー林道開発計画に対し、自然保護運動がまきおこり、全国の注目を集めて白神の名前が一躍有名になった。そのブナ原生林に接するのも大きな楽しみであった。  

6時23分、平坦道から急登にかかった。
急登ひと登りでまた道はなだらかになる。山襞を何回も巻くようにして進むと、徐々にブナの大木が増えて来た。ブナ原生林のただ中に入って来たことを実感する。  
最後の水場は清冽な水が小滝のように流れていた。水場からいよいよ本格的な登りとなる。ブナの原生林はますます鬱蒼として、見事な森を作っている。
標高だけで言えばわずか1232メートル、むしろ低山に属する白神岳ではあるが、ほとんど海抜ゼロメートルからの登りだから標高差はある。じぐざぐに高度を上げて、7時蟶山(まてやま)との分岐に着く。ここでコースは右に直角におれるようにして稜線伝いに高度を上げていく。稜線は登り降りが連続して、せっかく登ったのを下るときの気分は、実に惜しい思いだ。  
いつか樹林が切れて低潅木帯と変わり、背後眼下に日本海が見えて来た。周囲には高山植物も見える。目の上に見えるまろやかな膨らみが山頂だろうか。しかしそれは山項へつづく主稜線であった。

主稜線へ登りついてからは、ほとんど水平道となった道をつき進むと、前方に避難小屋があらわれ、その先に白神岳山頂が近づいてきた。主稜線の道はお花畑がつづき、タチギボシ、コガネギク、ツリガネニンジン、ハクサンボウフウなどの花が見える。
ログハウス風の避難小屋はがっしりとした立派な造りで建っていた。小屋から一投足で山項に立った。8時5分。
眺望はどうかと360度目を一周して展望を探る。それから一つ一つ山座同定にかかる。まず目につくのは岩木山、向白神岳の奥にきりっとした特徴ある三角堆は懐かしくも端麗な姿で迎えてくれた。雲海上に八甲田山、その右遥かに岩手山、八幡平へとつづく。八幡平あたりでもくもくと煙のように見えるのは、松川温泉の地熱発電所かもしれない。八幡平から右手につらなるのは多分秋田駒ヶ岳あたりであろう。昨日の太平山は確認できないが、男鹿半島が長く弓のように張り出し、その先端に盛り上がった山は本山だ。眼下黒崎方向には見渡す限り日本海が広がっていた。
改めて白神山地の緑深い樹海に目をやる。黒に近い濃緑の海という感じだ。これがブナの樹海だ。しっかり見ておこう。

一等三角点標の頭を撫でて山頂を後にした。
空には無数のトンボが飛び交っている。羽根が銀紙を撒いたようにきらきらと光っている。  
登山道に石で押さえたティッシュペーパー、妻がここで引き返したという目印だ。ここまで来て勿体ないように思うが、しかしここから山頂までがけっこうきついのだ。上戸沢の水場まで来ると、妻が下って行く姿が見える。水場で小休止してから、すぐに妻に追い付 き登山口へ一緒に下った。

能代市から二ツ井町を通り、「またぎ」の里として知られる阿仁村の阿仁前田交差点で国道からそれて様田民宿村、そして大平湖近くの秘湯『沢温泉』で入浴して汗を流した。
山から降りて温泉で汗を流す、この贅沢は何物にも代えがたい。さっぱりして今日の野営地、こめつが山荘へはそこから30分ばかりのところだった。  
登山者用のこめつが山荘は、真新しい瀟洒な木造建てで、その魅力に引かれてテントをやめて山荘の素泊まりに変更。自炊ではあるが一人1000円、信じられないほど安い。部屋は二段ベッ ドの4入用。今日の利用者は私達二人だけ。テレビも見られる。  
食事は景色を見ながら野外でとった。前方には岩木山、それに白神山地の山並みが霞んで見える。山荘周辺は以前ブナの原生林が広がっていたということだが、スキー場として開発され、樹林は無惨に切り裂かれていた。 山荘では風呂へ入れと勧めてくれる。テント泊まりで回っている私たちに、管理人用の風呂をわざわざたててくれたのだ。途中で温泉に入って来たとも言えずに、小さな風呂にありがたく入れさせてもらう。
明日はここから森吉山だ。ベッドにシュラフを持ち込んで、この夜はぐっすりと寝ることができた。