追想の山々1112 up-date 2001.09.22
乳頭温泉キャンプ場===8合目(6.00)−−−阿弥陀池避難小屋(6.55)−−−女目岳往復−−−避難小屋(7.55)−−−1583P(7.40)−−−湯森山(8.15)−−−笊森山(9.10)−−−千沼ケ原(9.25-35)−−−乳頭山(10.15)−−−黒湯(11.10)===網張温泉キャンプ場へ | |||||||
所要時間 8時間35分 | 1日目 ***** | 2日目 **** | 3日目 **** | ||||
1991年・日本300名山東北の山旅(その5)=(54歳)
2泊した乳頭キャンプ場の荷物を自動車に積みこみ、登山口の秋田駒ケ岳8合目へ向かう。 田沢湖高原から標高を上げていくと、すっぽりと濃霧の中へ入ってしまった。視界10メートルもあるかないか。 8合目駐車場は時間が早いせいか自動車の数も少ない。濃霧に包まれ、夏とは思えぬ肌寒さ、ここは標高1550メートル、すでに森林限界を越えているのだ。 早速秋田駒ヶ岳へ向けて登山道へ入る。観光客でも気軽に山頂に立てる楽なコース。阿弥陀弛までなら標高差300メートル弱、最高峰の女目岳でも330メートル程度でピクニック気分で登れる。従って登山道の手入れもよく、遊歩道を行くような感じだ。 霧で視界はないが高山植物がそこここに咲いていて目を楽しませてくれる。 ひとしきり登りをつづけると平坦道に変わって、お花畑の中を歩くようになった。1時間も歩かずに高山植物のお花畑の中に立てるのだ。花を見ながら進めば阿弥陀池の池畔だった。濃い霧で見とおしはないが、池畔沿いの木道をたどって避難小屋へ達する。妻と二人、そのまま女目岳山頂をめざす。 ざれっぽい砂礫の登りは、やがて火山礫の急登となり、補修されたばかりの丸太の階段登りとなる。ワンピッチで登り切った山頂が秋田駒ヶ岳最高峰の女目岳である。風と濃霧の寒い山頂には誰もいない。一等三角点に触れ、記念写真を撮って早々に下山して避難小屋へ戻る。 妻はここで8合目駐車場へ引き返し、私だけ乳頭山へ縦走するため小屋で別れた。 まず標高1583メートル地点へ登ってから、湯森山、笊森山、乳頭山と稜線を縦走していくコースをとる。1583メートル地点には乳頭山まで10.8キロと表示が出ている。まるで砂原のような広い火山砂礫の尾根が北へ下っている。森林限界を越えて目にする低潅木類はハイマツ、ミヤマハンノキ、シャクナゲなどである。ハクサンシャクナゲはまだ残り花も見られる。 砂礫の尾根から堀り割り状の急な下りとなって、もう一度登り返すと湯森山だった。湯森山からは道が3本ほどあるが、標柱が倒れていて笊森山方向がはっきりしない。霧で見通しもきかず、やや不安だったが見当をつけて歩き始める。天気さえよけれは見通しもきくから問題はないがちょっと不安だ。 湯森山から下りとなり、湿原が次々とあらわれる。足元はぬかっている所が多く、靴はぐしょぐしょになってしまった。湿原は高山植物の宝庫で目を楽しませてくれる。花の種類は白神岳、森吉山、和賀岳などとほとんど変わらないようだ。 登り降りを繰り返し、湿原を横切りながら天気のいいときの眺望を想像する。広々とした湿原、青い空、池塘に咲く花々、ゆるやかに起伏する稜線、目を引きつける北東北の山々、そんな光景であろうか。 湿原には木道もなく、ハイカーが湿地を避けて植物の上を踏み歩くため、どんどんその踏みあとが広がって湿原が傷んで行っているようだ。早く手を打たないと取り返しがつかなくなる。 熊見平の湿原から、宿岩という大岩を通過して笊森山へ到着。東方はるかに盛岡市街が見える。 笊森山から千沼ケ原へ寄り道して行くことにする。無数の沼と高山植物で知られる湿原を素通りするわけにはいかない。最初はひどいぬかるみだったが、やがて木道となって湿原へ導いてくれる。こんなに下ってしまうと戻るのが大変だと思うころ、千沼ケ原の入り口に着いた。ここも濃霧で眺望はないが、大小さまざまな形で無数の池塘が散らばっている。キンコウカ、タテヤマリンドウ、タチギボシ、ワタスゲ・・・可憐に咲く花々が見飽きない。もし原全体が一望できたらと思うと残念だ。木道の遊歩道が整備されていたが、妻との約束の時間もあり、10分間の散策だけで千沼ケ原を後にした。
稜線に戻って、ちょっとした笹薮を抜けると、ハクサンシャジン、ハクサンフウロ、ハクサンボウフウ、ウメバチソウ、オトギリソウとお花畑がつづく。 乳頭山へはきつい登りとなる。休まずに登りきりって山頂に立った。展望はないが、山頂は柱状節理の露岩になっていて、天気がよければ遮るものもない展望が得られることが察しられる。傍らにはコンクリートの破壊された残骸が残っている。何があったのだろう。 西側は一気に切れ落ちた断崖だ。展望盤が据えられており、記された山は「岩手山、大白森山、 秋田駒ケ岳、笹森山、湯森山、笊森山、三角山」などである。 乳頭山は秋田、岩手の県境にあって、乳頭山というのは秋田県側の呼び名で、岩手県側では烏帽子岳と呼ぶのだという。 わずかの帯頂で山頂を辞し、黒湯への下りにかかる。 田代岱との分岐からは、足場の悪い急峻な下りの連続である。はるかに田沢湖が姿を見せてくれた。崩れかかった長い木の階段を踏んだりして、やがて硫黄の匂いが鼻をつくようになると、黒場温泉の近づ いたことを知る。 黒湯では既に下山した妻が待っていた。 黒湯で 汗を流して、次の目的地『網張温泉』へ向かった。 盛岡市近郊から小岩井有料道路へ入ると激しい雨になった。ワイパーもきかないほどの降り方に、テントを張るのがためらわれる。 網張温泉国民休暇村のキャンプ場に着いても、風を伴った雨はなお激しく降り続いている。持参のテントを張るのをやめて、キャンプ場に設営されたテントを借りることにする。風雨の中で荷物を運び込み一段落してから、小岩井農場まで行ってバーベ キューを食べた。久しぶりのまともな食事だった。 キャンプ場まで戻り、網張温泉に浸かる。今日二回目の温泉だ。洗腸を無事済ませるとほっとしてくつろいだ。 |