追想の山々1153  up-date 2001.10.25

扇の山=おおぎのせん(1310m) 登頂日1997.10.13 単独
河合谷登山口(6.20)−−−1273mピーク(7.00)−−−扇の山(7.20-40)−−−1273mピーク(8.00)−−−河合谷登山口(8.40)===奈良へ
所要時間 2時間20分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
中国山地の300名山(その5)
美しいブナの山道


那岐山を登った後、わかりにくい道を地図と首っ引きで、ようやく河合谷林道までたどりついた。この山旅最後の扇ノ山の登山口がこの林道の奥にある。
扇ノ山登頂コースは四方からたくさんあるようだが、調べて目に付いたコースが河合谷林道からのものだった。湧き水が滝のように落ちる「水とのふれあい広場」と名うったところが、この林道の最高点のようだった。広場というには狭いが、数台の駐車場やバーベキュー設備などもあった。ここから数十メートル進んだところが扇ノ山登山口になっていた。ちょうど幼稚園児ほどの子供を連れた母親が下ってきた。扇ノ山は鳥取・兵庫県境に位置するが、この登山口は鳥取市からさほど遠くなく、鳥取市民の憩いのコースとなっているのだと思う。

那岐山から3時間近いドライブだった。正直、ようやくたどり着いたという安堵感があった。那岐山から移動してくると、この登山口が一番都合良さそうに見えて選んだのだが・・・・・。
滝のようにとうとう湧き落ちる水は「名水」でもあるらしく、兵庫県ナンバーの自動車で汲みに来ている人がいた。その自動車が河合谷林道とは別の方向へ下って行くのを見て、明日はその道を下ることにした。来た道を戻ってR9へ出るより早そうだ。
この日はふれあい広場から100メートルほど先の、ちょっとしたスペースに自動車を止めて寝ることにした。周囲の木々は既に紅葉の色を深め、標高1000メートルの高原は秋が深かった。
夜中に目を覚ますたび、見上げる空には数え切れない星があふれていた。明日で中国地方の三百名山がすべて終わる喜びを感じて、一人だけの静かな夜を送った。

目を覚ますと文句ない快晴だった。
自動車をふれあい広場へ移動させてから早速扇ノ山へ出発した。
登山口の標識からコースへ入る。最初は階段状の狭い道が急勾配で上がっているが、それはほんのわずかの距離で、すぐに稜線へ登りついてしまう。ガイドブックには「稜線へ出るとしばらく笹の茂ったトンネル・・・」とあるが、その笹は今は奇麗に刈り払われている。ひょいと見ると、登山道に近接して舗装された車道がある。おやっと思って車道に近づいて見ると、そこには畑が広がっていた。高原野菜を作っているのだろう。寒い信州の野辺山あたりでは、もっと標高が高いにもかかわらず、有数の高原野菜の産地となっているこを考えればびっくりする話ではない。自動車もない昔は、下から何時間もかけて畑に通ったのか、会津桧枝岐のような出作り小屋の様なものがあったのか・・・。そんなことを考えながら足を進めた。

雑木の中を爪先上がりに登って行くと、樹相はブナ林に変ってきた。
こんなきれいなブナの樹林がつづいているとは思いもしなかった。早朝のきりっとした寒気を感じながら、誰一人いないブナ林をたどる気分は最高だ。黄葉しはじめたブナに目をやりながら、「山を登っている」ということを感じさせないような緩やかな稜線を南へと進んでゆく。ブナ樹は目を見張るような大木はあまり見かけず、どちらかと言えば若木が多い。中には雪圧のためか、奇妙に曲がったオブジェ風のものも見かける。地理的には日本海に近いと言うことで、相当の積雪があるのかもしれない。そう言えばこの周辺には結構スキー場も数多くある。
一つ小さなピーク(1273メートル)を越える。この先の鞍部にかけても見事なブナ林はまだつづいていた。
ようやくいくらか登りらしい感じになってきたところで、西方に開いた展望所があった。鳥取市街を俯瞰する見晴台だった。天気は上々であるが、薄くもやがかかって景色は淡く霞んでいた。

それからひと登りで扇ノ山頂上だった。
山頂は潅木林に囲まれてほとんど眺望はない。狭い山頂に休憩用のベンチや、まだ新しい休憩舎が建っていた。休憩舎の2階からはいくらか展望がきくかもしれないと思って入ってみた。中はきれいに保たれて気持ち良い休憩舎だった。四方の窓から覗いてみたが余り展望はよくない。以前登った氷ノ山を探してみると、何とかそれと思ぼしき山を見つけることができた。氷ノ山からはこの扇ノ山が良く見えたような記憶があるが、こちらから見る氷ノ山は単なる一つのピークくらいにしか見えなくてがっかりする。
長居をしても仕方ないので、一休みしてすぐに下山することにした。
同じ道をたどって登山口へ下りたのが、まだ時間的にも早い8時40分だった。
標高差が200メートルしかないのに、所要時間は2時間20分、尾根歩きが長いコースだった。