追想の山々1156  up-date 2001.10.27

大渚山=おおなぎやま(1566m) 登頂日1994.05.06 単独
小谷村鎌池(6.30)−−−湯道の湯峠(7.10)−−−東峰(8.10)−−−大渚山(8.15)−−−湯道の湯峠(9.05)−−−鎌池(9.25)===秘湯「熱泉荘」入浴===虫倉山へ
所要時間 3時間00分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
信州百名山・山スキーで登る
残雪に覆われた大渚山


中央高速道は暴走族の無法運転渋滞により勝沼ICまでいらいらさせられたが、その後は順調に走って松本、大町、白馬から小谷温泉へテラ ノは快走。
小谷温泉から先、除雪の状況はどうか。村営雨飾荘から先は歩くつもりでいたが、幸いにもさらに奥まで除雪が進んで、結局鎌池まで入ることができた。これで往復2時間の車道歩きを省略できたのはありがたかった。
鎌池着は6時ジャスト、駐車場は背丈を越す雪の壁の中だった。

天気は芳しくなく、冷たい霧雨も舞っている。ここ駐車場の標高は1200メートル、とても初夏という陽気ではない。駐車場にはパジェロが1台、テント2張りがある。まだ寝ているのか人の動く気配がない。
てっペんの尖った峰がブナの梢越しに聳えている。コンパスで調べると大渚山だった。思いのほか近い。
スキーを履いて出発した。湯道の湯峠まではわずかに勾配のある林道上をシール歩行で行く。雪の解けた土手には蕗のトウが賑やかに顔をのぞかせている。
林道の最高点が湯道の湯峠、ここから林道を離れて登山道に入った。尾根筋は雪が消えて夏道も見えているが、残雪を選んでスキー登高をつづける。ショウジョウバカマが今花どきだった。
小ピーク手前で尾根が右に大きく屈曲するのを見て、雪のある右手の斜面ヘトラバースしたが、尾根に戻るには薮を分けねばならず、そこでスキーを諦め坪足登高に切り替えた。坪足で尾根に出ると深い雪に覆われていた。「これなら無理してもスキーで来ればよかった」と思ったが、すぐに右手が鋭く薙落ちた急勾配の登りに変わったのを見て、落ちたらスキーストックだけでは停止できそうもない。キックステップでアラレの降る中を一歩一歩慎重に登って行く。
山頂に近づくと右手は急峻なガレ、左は急勾配の雪の斜面という、三角屋根の頂稜を行くような尾根を進むようになる。足掛ひとつなく、足の震えるような緊張を覚える。雪稜を通過した先は低潅木となって、そこを抜けると岩尾根の登りとなった。
登りついたところが三角点標石のある頂上だった。木製のベンチが置かれ、ここだけは雪が解けて地面が出ている。ここが大渚山頂上なのか、何の表示も見当たらない。西へ向かって広陵とした雪の原が広がり、その先端に小屋らしいものが見えていた。だだっ広い無垢の雪原に足跡を残しながらその小屋へ直進して行った。ガスっていたらやばいところだろう。それに風でもあったら遮るものもない吹きさらしで、相当厳しいかもしれない。雪が舞ったりしているが 視界は保たれているのが幸いだった。およそ15分程で頂稜西端の小屋へ到着した。木造ながらがっしりとした小屋で『大渚山展望台』と書かれている。階段を上がった屋根の上が展望台になっていた。
このあたりはまだ150センチ程の積雪があった。ひとまず小屋に入って休憩にする。

展望台に上がると、西方には山頂部を雲に隠した高い山が見える。多分白馬岳方面だろう。目の前には雨飾山が峻烈として肩を張っているはずだがその姿は見ることができない。
展望盤がある。北アルプスをはじめ、明日登頂予定の東山や頚城三山など、信越国境周辺にひしめく名山が一望千里、思いのままであることがわかるが、今日のところはそれを想像するだけであった。

本来はここからスキー大滑降というのが、この残雪期登山の醍醐味であろうが、そのスキーは途中にデポ、それにルートファインデイングも私には少々難し過ぎる。来た道を着実に戻る。

三角点標石のピーク近くまで戻ったところで、小屋に地図を置き忘れたのに気づいて戻る羽目になり、20分ばかり時間をロスする。グリセードを使ったりして、急斜面を快調に下ってスキーデポ地点まで戻り、その後はスキーで湯道の湯峠まではあっと言う間だった。
鎌池までの林道は、ストックで漕いだりして下った。振り向くと雲が切れはじめて、大渚山がくっきりと姿を現していた。
駐車場に戻るとテントの人達がシュラフを干したりしていた。

時間はまだ9時30分。今から明日予定の東山登山口の奥裾花まで直行するのは早すぎる。東山も登り終わって、時間が余ったら登って帰ろうかと思っていた虫倉山へ今日登ってしまうことにした。駐車場を出ると、待っていたように青空が広がり、たった今登って来た大渚山、それに雨飾山が鮮明にその勇姿を際立たせていた。思わず自動車を止めて写真を撮ったり、スケッチをしたりした。
小谷温泉の秘湯「熱泉荘」で汗を流してから、虫倉山登山口の中条村へ向かった。