追想の山々1181  up-date 2001.11.11


金剛堂山(1650m) 登頂日1996.10.11 単独行
上百瀬登山口(6.00)−−−1.5キロ表示(6.35)−−−1.9キロ表示(7.05)−−−金剛堂山(8.00)−−−奥金剛堂山−−−1660m草地(8.35-50)−−−金剛堂山(9.20-30)−−−上百瀬登山口(10.50)
所要時間 4時間50分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
飛越日本300名山、錦秋の3座を登る(白木峰・金剛堂山・人形山)
奥金剛堂山


夜がすっかり明けるのを待って6時に出発した。
夜半の星空に期待が大きかったが、空には鰯雲が広がっている。しかし雨の心配はないだろう。

自動車で着いた男性が、私につづいてすぐ後を追って来た。早いベースで追いついてきたところで、道を譲って先へ行ってもらう。今日は急ぐ理由は何もない。むしろ早く下山し過ぎると時間をつぶすのに骨が折れる。
丸太の階段がつづいている。勾配はかなりきつい。ブナの原生林がいい雰囲気を醸し出している。紅葉も昨日の白木峰以上に進んで、今まさにピークといったところだ。
勾配が急なだけ高度を稼ぐのも早い。登り詰めた傾斜がいったん緩んだところで、紅葉見物の小休止にする。紅葉、黄葉はあたり一面を塗りつぶし、まさに色の洪水という表現がふさわしい。
コースはこの先から下って行く。せっかく稼いだ高度がもったいない。しかしたいしたことはなく、すぐにコルとなって安堵する。山頂まで1、9キロの表示があった。
再び急登していくと、尾根の形状がはっきりしてきて、展望も楽しめるようになり、昨日の白木峰が朝の斜光線を受けて、青黒いシルエットで対峙している。鰯雲も徐々に薄くなって、陽の光が届くと紅葉も一段と生き生きしてくる。すがすがしい登山日和となった。
ブナの美林、樹幹にからまるツタウルシの紅色に感じ入ったりしながら、どんどん高度を上げて行く。赤土や黒土が粘土状にぬかるんでいる所もある。昨日下山してきた人たちも一様に鞄を汚していた。しかし紅葉の見事さがすべて帳消しにしてしまい、まったく気にならない。
長い登りを苦にすることもなく、絢爛たる紅葉に囲まれて、今は『歩く』ということの楽しみを全身に感じることができる。
ペースを落として歩いたが、山頂到着はコースタイムより早かった。白御影石の祠と大きな展望盤が設置され、一等三角点にふさわしい360度の大展望台であった。金剛堂山は飛越群嶺の主峰で、山岳信仰の中心だったという。御影石に歌が一首刻まれていた
 『飛騨信濃 木曽の峰もみな見えて 西は残さぬ白木峰かな』
東側は谷一つ挟んで白木蜂と小白木峰が大きい。特に昨日足を伸ばした小白木峰の湿原草地まで確認できたのはうれしかった。その背後雲間に見え隠れする北アルプス。目をこらすと乗鞍、穂高、槍、薬師岳などの連なりも確認できる。
西方には何と行っても白山が一際高度感を持って聳えている。その手前に大きな山稜を横たえるのは、紛れもなく明日登頂予定の人形山と三ケ辻山。白山の左には猿ヶ馬場山が見える。

金剛堂山山頂
ひとわたり眺望を楽しんでから、この先の奥金剛堂山へ向かった。緩やかな草原状の起伏が、南方へうねうねとつづいている。すぐ間近の三角錐ピークが奥金剛堂山だとすると、考えていたより近すぎる。とにかく奥金剛堂山まで行かなくては勿体ない。下って行くと小さなピークがある(そこには御影石の碑が一基あったが、読むことはでかきなかった。後でここが中金剛堂山だと知った) 次の三角錐のピークヘもわけなかった。奥金剛堂山ならそれなりの標表示があるだろうに、それらしいものは見あたらない。この先目日立ったピークはもうない。ここが奥金剛堂山かどうか半信半疑で、さらに先まで行って確かめることにした。急な下りの後、小さな起伏を2〜3越えると、様相が一変して大きな平坦部が広がっていた。その中を一筋真っすぐな道が伸びる。左手の窪みには湿原もあった。金剛堂山から約30分の距離だった。この先は万波高原へ向って高度を下げて行くばかり、もう高みはない。やはり途中の三角錐が奥金剛堂山であったことを、ここまできて確信した。ずいぶん余計に歩いてしまったが後悔はない。北アルプスの連なり、人形山と白山、かすむように浮かぶ大日岳や鷲ケ岳。空には幾筋か高い高い秋の雲が見える。知らずに足を伸ばしてしまったことに、逆に感謝しながら金剛堂山まで戻った。

北アルプス方面の雲がさらに剥がれて、剣岳や立山も姿を現していた。
時間はまだ十分あったが下山後パンクの修理も待っているし、温泉にもゆっくり入りたいので、取りあず下山することにした。

上梨で合掌造りを見学したりしてから、人形山登山口へ向かった。
人形山登山口へは上梨の土産物屋の間から(人形山登山口の標識がある)橋を渡って流刑小屋方向への林道を行くことになる。林道を自動車で約30分である。