追想の山々1184  up-date 2001.11.13


能郷白山(1617m) 登頂日199709.29 単独行
奈良(4.00)===大垣市===能郷谷登山口(8.00)−−−1合目(8.20)−−−2合目(8.45)−−−4合目(9.25)−−−能郷白山(10.05-15)−−−4合目(10.50)−−−2合目(11.15-20)−−−登山口(11.45)===冠山峠へ
所要時間 3時間45分 1日目 ***** 2日目 ****
飛越の日本300名山、能郷谷から往復
能郷白山山頂

『薄墨桜』で知られる根尾村から、冠山峠方面への道を見送り、自動車は狭くなってきた道を、岐阜県側最後の集落能郷へと入った。耕作を得るのもむずかしいような山奥深いところへ、なぜ人が住み着いたのかと思ようなそんな僻地だ。
登山口への明瞭な表示を確認、ここから能郷谷に沿った林道へと入って行く。
林道へ入るとすぐ杉の巨木に囲まれた薄暗い中に白山神社があり、そこに郷土芸能として知られる『猿楽』の舞台が見えた。この猿楽狂言は国の重要無形文化財だそうだ。
渓流に沿って林道を数キロ、道の両側にはススキが朝日に輝いて銀色に波打っている。谷の奥には招くようにして能郷白山の前山が横たわる。林道の勾配が急になるとすぐ能郷白山登山口の標識があった。登山口到着7時45分。走行距離218キロ。林道とは言え、道幅が狭いだけで登山口近くまで舗装されたいい道だった。
林道はまだ先へと延びているが、危険につき一般車は入らないようにと表示がある。工事作業員を乗せた自動車が上って行った。

登山口の標高は730メートル、山頂までの標高差は約900メートル。上空には青空が一杯。早速支度を整えて8時ちょうどに出発した。
清冽な渓流を一枚板の橋で渡り、堰堤の上の広場に出るとそこから登山道がはじまった。
尾根につけられた道は最初から直線的な急登だった。最初は展望もないきつい登りをひたすら足元を見ながら高度を稼いで行く。こんなにもアプローチに不便な山を、訪れる人がどれだけいるのかと思ったが、登山道は良く手入れされていて実に快適だ。まもなくブナや潅木の樹相となり、頭の上が軽くなったように明るくなってきた。ブナの倒木に『一合目906M』のプレートが表示されている。20分で200メートル近く登った勘定だ。プレートには2合目までの距離とその標高が示されている。山頂は10合目だろうから、1合で20分だと山頂まで200分、つまり3時間以上かかると勘定した。今日のうちにもう1座「冠山」も登るのは簡単ではない気がしてくる。

ブナの樹林がたいへん美しい。どの木も雪圧で幹の根元が地面を這って曲がっている。紅葉には早いが、その時期の美しさが十分に想像される。さらに10分ほどで林道へ飛び出した。ここでも工事の自動車が上がって行った。ここまで自動車を進入すれば、30分の節約ができたことになるが、これを惜しいと思うようではまだまだ本物の登山者になっていない証拠だろう。
林道を横切ってからも急登はいっこうに緩む気配はなく、一直線に登って行く。このあたりはブナの若木が多い。潅木も比較的疎林という感じで明るい。見通しもきいて、前方には前山の稜線が(実はこの時点ではこれが能郷白山と思って眺めていた)、振返れば眼下に能郷谷が俯瞰できる。汗がしずくとなって落ちる。ペースを上げているから汗が多くなっているようだ。
ブナや潅木林の心地よさを堪能しながら、その一方では間違えてあれが山頂と思っていた前山のピークの近づくのを楽しみに、間もなく二合目の標識地点に到着。標高は1180メートル。45分で450メートル。快調のペースと言うところだ。休まずに相変わらずの急登を登って行く。尾根の道はなおも明るく上へ上へと延びている。ブナの自然林を鑑賞しながら、本当はもっとのんびりと味わいながら歩くべき価値のあるコースと思いつつ、どうも気の方が急いてしまう。
三合目を過ぎていよいよ前山(能郷白山と思っている)の稜線とこの尾根が結ばれるのも近いと思われるのに、まだ四合目にもならないのはどうも腑に落ちない。『合目』の配分がおかしいのと、能郷白山の山頂は別だということに気づいた。  
背後(南)には幾重にも重なる山並みが競りあがってくるが、その山名はわからない。後で地図を見ると蕎麦粒山などの名前があった。

前山を越えると、おおらかな能郷白山が見えてくる
絶え間なく続いた急登もようやく緩んできた。そして右手に見てきた能郷白山と勘違いしていた前山の稜線が合わさると思う地点まで来ると、前方にブナ林の木の間越しに伸びやかな平原状の山稜が見えてきた。これが本物の能郷白山だった。頂上一帯は笹と低潅木で、高木は1本も見当たらない。
なだらかに下って行くとすぐに四合目、標高1460メートル。山頂までは残り157メートル。目標が見えると足も軽くなる。これからは正面に優美さと重量感を兼ね備えた、能郷白山の頂稜部をを目にしながらの楽しい歩きだった。ブナにからみつく蔦が赤く紅葉しいてる。リンドウの青紫も目に付く。あと10日もすると全山紅葉に燃えるのだろう。
さらになだらかに下って行くと、はじめて人に出会った。
五合目を過ぎた鞍部からは、笹と低潅木の急登をほぼ200メートルの登りだった。斜登行するようにつけられた最後の登りも休まず早いペースで登り切る。草付きを右に登ったところに山頂があった。結局合目表示は5合目までしかなかった。所要2時間5分というのはちょっと早く歩きすぎた感じがする。
待望の能郷白山一等三角点に立ち、しばし遥かな頂へ登りついたと言う感慨を味わった。山頂部には目の高さ以上の草木は一本もなく、独立峰的なこの頂は見事な展望台の条件を備えていたが、いつしか雲が広がって遠望を遮っていた。
北からは新しく拓かれたという、温見峠からの最短コースが上がってきていた。ザックが二つデポ、これは奥社のあたりに見えた二人連れのもの。多分温見峠から上ってきたのだろう。
西方と南方が比較的展望がきいたが、分かるのはこの後登る冠山くらいのもの。その背後遠く群青色に連なる山々は、三周ケ岳などだった。東方に目をやれば、雲か霞に溶け込みそうな御嶽山が雲の上に浮いいるのが確認できた。本来は北アルプスまで見えると言うのに惜しい。
山頂から西方へ少し下ったところに白山神社奥社の祠があった。祠は風雪に備えて厳重に囲われていた。

10分ほどの滞頂で下山の途に着いた。
下山開始が10時15分、見こみどおり11時50分下山。すぐに次の冠山へと向かった。