追想の山々1190  up-date 2001.11.23


川上岳=かおれだけ(1626m) 登頂日19995.04.28 単独行
刈安峠(9.05)===宮川沿いの林道ゲート(9.45)−−−登山道入口(10.25)−−−3村境界ピーク(11.10)−−−川上岳(11.30-35)−−−境界ピーク(11.55)−−−登山道入口(12.15)−−−林道ゲート(13.00)
所要時間 3時間15分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
2日間で岐阜の日本300名山4座を登る(位山・川上岳・鷲ケ岳・大日ケ岳)=58歳
川上岳


川上岳を「かおれだけ」と読むのは、ずいぶんと難しい読み方である。

位山から下山して、明日に予定していた川上岳を同じ日に登ってしまうことにした。
休む間もなく 苅安峠から、川上岳登山口ヘ向かう。峠を下り、宮村渡瀬の集落から宮川沿いの林道を逆上って行く。林道とは言え舗装された立派な自動車道だ。林道は二岐に別れ、左手に分岐する林道はゲートで閉ざされている。これが川上岳登山口への林道と思われたが、何の標識も見えないので念のためもう少し先まで走ってみた。2キロほど走ると右手に防災ダムがあらわれて、さきほどの分岐ゲートが川上岳登山口への林道であることが間違いなさそうだ。

分岐のゲートまで戻る。しかし板切れの道標ひとつないのが不安だ。出発前に川上岳登山に関する情報を、いろいろ調べて見たが、役立つ資料は見つけることができなかった。近くに営林署の自動車が駐車しているのを見て『もしゲートの鍵を開けてもらえれば』と、そんな甘い期待を抱いてあたりを見回したが、職員の姿は見当たらない。ここは5方図のヌクイ沢とツメタ沢の出会いとなっているところだ。ゲート前広場は7〜8台は駐車可能のスペースがある。位山登山口の苅安峠からここまでわずか30分ほどだった。
雨の降り出しが気になって早速出発する。

ゲートから3キロ余の林道を、『この道で間違いないのか』という一抹の不安が消えないまま、ツメタ沢に沿って爪先上がりに逆のぼって行った。標高1227メートル地点で大きな広場となって、林道は再び二つに分岐していた。左の林道へわずかに入った地点ではじめて川上岳への新しい道標が立っているのを確認、不安が解消した。
本格的な登山道の登りに取りついた。仰げば馬蹄型に巡る山稜がうかがえる。あの左手に見える笹の円頂が目指す川上岳だろうか。地図で考えた以上に、かなりの距離がありそうだ。(実際には川上岳はその円項の背後に隠れて、ここからは見通せない)
林道から急登を挙じるとすぐに尾根道となった。地図には載っていないが、道は明瞭でまったく心配はない。ミツバオオレンの群落が一つ、ほかにショウジョウバカマはいくらでも目につく。散り敷いた落ち葉の踏みしだかれた様子から、かなりのハイカーがこのコースを利用していることが推し量れる。村界の稜線まで登るとコースは90度曲折して左(東)へ向きを変え た。残雪がところどころに目につくようになる。このあたりは自然林の雰囲気が残されて気持ちいい。
樹林の生い茂った稜線の急登が突然開けて、一つのピークに出た。そこに頭部を赤く塗った町村界標石がある。宮村、馬瀬村、萩原町の境界である。一瞬『ここが川上岳か』と思ったが、それを示す標識は見当たらない。左手に湾曲するようにして、笹原の稜線が延びているのが見える。その稜線の先端へは、二つの小ピークがなだらかな凹凸をもっていざなっている。あの先端が川上岳だろう。

笹原の中を一旦下ってから、少し重くなった足で小ピークを越えて行く。さえぎるもののない笹の稜線は、雨を呼んでいるような強風がまともに吹きつけている。帽子をとばされないようにあわてて押さ える。山ノロから登って来るコースと合流したところで、残雪を踏んで少し下って行く。そしてゆるやかに登り返したところが待望の川上岳山項だった。
一等三角点、遮るものもない笹の山頂は、晴れてさえいれば屈指の大展望台であることが察しられる。群生するドウダンツツジが秋の紅葉さぞかしと想像させる。おおらかな丘のように見える薄紫の山影が、先程登って来た位山だろうか。風は雨の近づきを教えている。
風に追われるようにして山頂を後にした。

一日2座登頂できたことに満足して登山口まで下った。
林道路傍のいたるところに顔を出す蕗のとおを採って、ゲートへ向かうころからついに雨が降りだした。傘をさしてゲートへの林道を急いだ。ゲート前で支度を解いていると、登山前に見かけた営林署の自動車が来 た。挨拶がてら話しかけると、『営林署へ聞いてくれれば鍵番号を教えたのに』と言われた。
この営林署管内の鍵は『65』で統一していると教えてくれた。しかしこの後もう役に立つことはなさそうだ。

明日は本命の野伏ケ岳を予定していたが、天気予報はもうひとつという感しだ。野伏ケ岳登頂の条件は晴天が条件だ。それが登山道のない山への絶対条件と決めていた。明日は先ず鷲ケ岳か大日ケ岳を登ることにして、その後はまた天気予報次第ということにしよう。自動車を鷲ケ岳登山口へ向けた。

宮村から高山市へ出て、白川街道、飛騨街道をつないで、奥美濃高鷲村へ入る。分かりにくい村道を鷲ケ岳スキー場の表示を目印に行く。ゴルフ場のクラブハウスで、スキー場への道を分けて、登山道の表示の出ている右手の林道へ自動車を進める。相変わらず雨は降りつづいている。薄暗い林道は次第に荒れて来た。どこまで入れるか、テントの設営できる場所はあるか、探りながら進んで適当な幕営スペースをみつけ ることがてきた。道路状況からもここが乗り入れ可能な最終地点だった。高度計はほぼ1000メートルを示している。ここまで入れば明日の鷲 ケ岳登頂はかなりの時間節約ができそうだ。雨音を聞きながら眠りについた。雨は夜通し降りつづいた。