追想の山々1199  up-date 2001.11.25


夕張岳(1668m) 登頂日1995.08.12 妻同行
林道終点(8.40)−−−冷水の沢(9.35)−−−馬の背コース合流(9.55)−−−望岳台(10.20-25)−−−憩沢(10.40)−−−前岳湿原入口(10.50)−−−吹き通し(11.35)−−−夕張岳(11.55-12.20)−−−憩沢(13.15)−−−望岳台(13.30-35)−−−馬の背コース分岐(13.50)−−−林道終点(14.50)
所要時間 6時間10分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
大千軒岳・駒ケ岳・狩場山・ニセコアンヌプリ・余市岳・富良野岳・夕張岳・札幌岳
5回目の北海道山旅(道内9泊)=58才
ユキバヒゴダイ


この北海道山旅、来る日も来る日もよくも降りつづいたものだ。
中富良野キャンプ場を早朝に出発。芦別町経由で道道907号線をシュパウロ湖方面へ南下、この道は冬季通行止めとなり、無雪期のみの道。途中雨上がりの泥道となって、自動車は屋根まで泥をかぶるありさまだった。907号線から夕張岳登山口への林道分岐については、昨夏北海道山旅の最終日に偵察済みで迷うことはなかった。
登山口への林道へ入ると、いたるところに大きな水たまりがあって、ばしゃばしゃとしぶきを上けて行く。落石現場では辛うじて擦り抜けるほどの余裕しかない。夕張岳は札幌市から日帰り可能の人気の山だと聞いたが、林道奥のゲート前駐車場には1台の自動車も見あたらない。昨日までのあの雨ではあたりまえかもしれない。

今日は雨具なしで歩けるかもしれない。登山届を提出して出発した。
静まり返った山の中は、地面ら樹木も、それに空気も、たっぶりと水気を含み、しっとりと落ち着いている。
車両進人禁止のゲートを抜けて、しばらく林道がつづくが、数分でコースは二つに分かれる。左は夕張岳ヒュッテから馬の背経由のコース、右は沢沿いの冷水コース。われわれは右の冷水コースで山項を目指した。

原年林の中を延ひる幅広の道をたどると、気がつかぬうちに細い登山道へと変わっていた。熊に注意という看板もある。静寂な中に、熊よけの鈴がちゃらんちゃらんとやかましいくらいだ。原生林には煙立つような霧が流れる。湿度が高く、流れる汗にたちまちシャツが濡れてゆく。
下の水場は冷たい水が満々と流れている。手を入れると切れるように冷たい。エキノコックスを恐れて飲むのは控える。この水が飲めないなんてまったく惜しい。さらに上の水場へと急な登りがつづく。汗を流した急登を終わってほっとすると、シラネアオイの群生地となる。勿論今は花季ではない。ゆるくなった勾配をたどると、馬の背のコーースと合流した。熊が出て来そうな、ここまでのうっそうとした原生林とはうって変って、尾根道は頭上も明るく解き放たれた気分がする。どうやら霧の上に出たようだ。雲は高く、下は霧の海。
上空は明るさを見ると、当面雨の心配はいらない。展望台で2回目の小休止をしていると、上から数人のグループが賑やかに下山して来た。早朝4時に夕張岳ヒュッテを発って、早々と登頂を終って来た人たちだった。足元は泥に汚れているが、その顔は登頂を終った満足感に輝いていた。

山腹を巻くようにして、ゆるやかな道を行くと、ゆったりと起伏しながら広がる山稜が見渡せる。その中に角を突き出したような岩峰が見える。あれがガマ岩だろう。その先に一段高く、お椀を伏せたような円頂の夕張岳が望める。妻が「はじめてね、登る山が見えたの、やっぱり見えるといいわ」 。1週間も雨の山を歩いていると、この程度の見通しでも、ちょっとした感激を味わってしまう。
憩沢の水場は休まずに通過する。流れのほとりにヒオウギアヤメだろうか、紫花が咲いていた。このあたりから低潅木帯となって、いっそう明るくなったてきた。
憩沢から10分ほど歩くと、最初の湿原の入口だった。木道が敷かれて高山植物が次々と我々を迎えてくれた。山の中にいることを忘れさせるような、ゆったりとした丘陵地形が広がり、その中をコースが通じている。夕張岳山頂もはっきりとしてきた。

湿原のお花畑を行く
山頂までもう厳しい登りはないようだ。花を目にしながら、漫歩気分でのんびり行けぼいい。シロウマアサツキの大きな群落も見かけた。地中からの湧き水がある。これならエキノコックスの心配はない。何という冷たさだ。生気のよみがえるような喉ごしだった。
妻に花の名前をひとつひとつ教えながら湿原をいくつか過ぎて、小さな尾根を乗っ越すと、砂礫地の吹き通しとなる。この砂礫地は何といっても夕張岳の花「ユウバリソウ」の埴生地。今は花季を過きて、花がらとなった穂が名残をとどめている。ほかにユキバヒゴタイも群生していた。
最後にやや急なじぐざぐを登って行くと、一段落したところに小社がある。金山からのコースに合流すると、すぐに一等三角点の山頂だった。
雲で眺望はないが、我々が歩いて来たコースや、湿原、ガマ岩の突起などが俯瞰できる。寒くもなく、風もない山頂はやっぱり気持ちいい。昼食をとり、再び訪れる機会がないかもしれない山頂に惜別の情をこめて下山にかかった。

湿原から振り返ると、山頂は流れては消えるガスに、見え隠れしていた。
馬の背までは同じ道を下る。望岳台から遠く芦別岳を認めることができた。
登りに使った冷水コースを見送り、馬の背を下ることにした。何カ所か小さな登り返のある急なコースで、膝痛がこたえる。ブナ林の中を約1時間、あきて来たころ夕張ヒュッテの建つ川原に出た。駐車場までは林道を10分ほどだった。

夕張岳山頂
これで予定していた山は全部に登り終った。晴れるところまではいかなかったが、最後になってようやく雨の心配のない登山が出来た。
下山後、今宵の宿泊予定地、桂沢湖畔の“三笠市ファミリーランドキャンプ場”へ直行。
キャンプ場には「健康センター温泉」があって入浴もできた。
明日は札幌へ向かうことになっている。