追想の山々1201  up-date 2001.11.28


小秀山(1982m) 登頂日1992.11.21 単独行
東京(1.30)===加子母青少年旅行村キャンプ場(7.00-20)−−−夫婦滝(8.10)−−−三の谷コース分岐(9.20)−−−兜岩(9.38)−−−小秀山(10.20-40)−−−兜岩(11.10-15)−−−三の谷コース分岐(11.25)−−−三の谷林道(12.20)−−−キャンプ場(12.45)===付知村夕森公園へ
所要時間 6時間25分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
木曾・東農の300名山3座を登る=55
薄く雪化粧した小秀山山頂


祭日のからんだ三連休。
長野県木曽地方と岐阜県東農地方の県境に、阿寺断層と呼ばれる断層帯があり、その断層帯の北東側に1500メートルから2000メートル級の山座を有するのが阿寺山地である。この山地に日本三百名山の「小秀山・奥三界岳・南木曽岳」の三座が聳えている。

遠路の訪問だが、本格的な寒気団が南下、寒冷前線が日本列島を通過という気象予報が気になる。
中津川ICからR257を下呂方面へ向かって車を走らせる。舞台峠の最高地点から加子母村青少年旅行村へは一車線の道が伸びている。雲の下に見える山々は白っぽく見える。雪だろうか、その心構えだけはしておいた方がよさそうだ。
舞台峠から15分ほど走ってキャンプ場入口の駐車場に車を止めた。シ ーズンオフの今は人影も見えない。
肌を刺すような寒風、稜線は荒れている可能性もある。一抹の不安がよぎる。

防寒の用意だけは十分に整えて出発した。
標識に従って、駐車場並びにある無人の管理棟と旅館の間を抜け、吊り橋を渡ると谷の流れに沿った登山道となる。急な狭谷を流れ下るこの谷は、いたるところ滝やなめが連続し、しぶきをあげている。鋭くえぐり削ら取られた渓流沿いは、歩道を拓く余地もなく、代わりに桟敷が架けられている。これだけの桟敷を造るのも大変だが、後の保守管理もまた手がかかることだろう。
頭上の梢は不安をかきたてるようにゴウゴウと鳴っているが、その風は私のところまでは届かない。順調に渓谷の桟道を遡上して行く。

歩き始めてから50分、いくつかの小滝を見た後、急崖を落下する二本の夫婦滝が前方に見えて来た。男滝の滝壷から見上げるとスケールの大きさに圧倒される。昨日の雨で水量も多く迫力は満点、水は束になって一気に落下するのではなく、途中の岩角に飛沫を上げて散り、また束になりして滝壷に落ちていた。
滝の写真を撮ったりしていよいよ急登に取りついた。『これより先、登山装備のない人は無理です』という注意書きが立っている。長かった桟道は夫婦滝までだった。
急登を挙じて滝の上に出てから更に沢沿いを詰める。
やがて道は山腹へとかかり、一歩一歩高度を稼いで行く。登山道には岩が目立つようになってきた。鎖もない険阻な大岩を越える箇所がある。足場を選んで慎重に通過、尾根道の笹に薄く雪が載っている。登山道に積もるほどの雪でないが、この先高度が上がれば積雪の可能性もある。

前方に鋭い岩峰のピークが見えて来た。それが小秀山かと思わせたが、 時間的にそんなはずはなかった。小秀山はまだまだ彼方だった。
行き交う登山者もなく、こんな天候のときはとにかく早くピークを踏んで下山したいという思いばかりが先走って、ついつい足も早まってしま う。
三の谷コースの分岐標識に着く。夫婦滝からここまで1時間10分、コースタイムは1時間50分だからかなり早い。笹にかぶる雪も多くなって来た。ここから小秀山まで1時間45分、無事ピークを踏めるだろうか。そんな危惧を抱きながら急登をひとしきり頑張ると兜岩だっ た。剥き出しの巨岩の積み重なるピークは、このあとの小秀山のピークを凌ぐ迫力があった。天候に恵まれればその展望もさぞやと推測される。小秀山はなだらかに起伏する稜線が伸びている最奥のピークだ。遥か遠くに見える。

寒気を運ぶ強風に追われるようにして小秀山へ向かう。
ゆったりとした稜線は、天気がよければ快適な漫歩気分が楽しめることだろう。湿性のじゅくじゅくした所や、笹の葉の繁る道や、矮樹の黒木林の中を登り降りして、やや急になった笹の中を登り詰めると見晴らしの良い岩場に出て、その先に二等三角点の小秀山々頂があった。
気温は氷点下何度くらいだろうか。風も強い。立ち止まるとたちまち体が冷えて行く。薄く雪化粧した山頂は低潅木に囲まれて見通しは悪く、すぐ下の岩場の方が展望にはよさそうだ。
目の前に冠雪した御嶽山がガスに途切れ途切れに見える。明日登る奥三界山らしい山影が確認できたのに満足して、寒さに追われるように山頂を辞した。
薄日の射しはじめた南向きの斜面で、初めて小休止を取った。

兜岩まで戻って振り返ると、小秀山の左肩にすっかり晴れた御嶽山が聳えていた。
三の谷コース分岐からは来た道(二の谷コース)を捨てて、三の谷コースをとる。どこまでも忠実にじぐざぐにつけられた道は、作業用の山道のようだ。この三の谷コースからの往復だと、小秀山も案外楽だろう。
分岐から1時間弱で下の林道まで下ることができた。陽の当たる林道を25分で出発地点の駐車場へ戻った。

帰りは国の天然記念物『加子母の大杉』を見物、樹齢千数百年と言われる大木である。その脇の加子母地蔵尊を拝して次の目的地奥三界山登山口の付知村夕森公園に向かった。