追想の山々1214  up-date 2001.12.08


木曾御嶽山(3063m) 登頂日1989.10.01 単独行
田の原(3.50)−−−8合石室(4.45)−−−王滝休泊所(5.40)−−−剣が峰(6.10-30)−−−田の原(7.30)
所要時間 3時間40分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
快晴、早暁の大展望=52
御嶽山山頂


登山禁止中の焼岳を登ったあと、御嶽山登山口の田の原まで移動して、駐車場の隅にテントを張った。

午前3時、できれば頂上で御来光をと思って外の様子を見ると、こばれ落ちそうな星屑が満天を埋めつくしている。思わず「やったあ」と声が出る。この星空はめったに見られないほどの美しさだった。
昨夜のうちに用意しておいた荷物を持ち、懐中電灯の明かりを頼りにテントを出た。大きな鳥居をくぐって真っすぐ延びた広い道を行く。『9月30日閉店しました-旭館』の表示。昨日閉館したようだ。御嶽登山も今日からオフシーズンということだろ。

少し勾配が出て登り加減になったことを意識するあたりから、木材で階段状態に整えられた道に変る。
空がわずかに白みかけて、星の数が少しづつ減っていく。森林限界を越えると祠のある七合目半まできたことになる。下を見ると駐車場に明かりが見える。東の空がだんだんに明るくなっていくが、まだ足もとは暗く懐中電灯な しでは歩けない。熔岩、岩石帯にさしかかると、懐中電灯ではコースが判然としない。

8合目の石室に着く。中にシユラフにくるまってだれか寝ているようだ。ようやく足元も明るくなってきて懐中電灯も不要となる。気温はかなり低いようだ。霜柱が立っている。セーターの上にバーカーを羽織っても、ほとんど汗をかかない。毛糸の手袋でちょうどいい。
上の方に大きな建物がはっきり見えてきた。あれが項上か、もう一息だな、そう思って急登を踏ん張る。9合目付近にある『一口水』は凍り付いている。
山々がシルエットとなって目に入るほどに薄明がきざしてきた。雲ひとつない快晴、山項での展望が待たれる。急な登りを一歩一歩数えるように上り詰め、山頂と思って目標にしてきた建物は王滝の小屋で、最高点はここからもうひと登りある剣ケ峰にあった。

東の空は更に明るさを増し、いよいよ日の出のときが近づいたようだ。
王滝小屋の裏手から社を抜けると目の前に剣ケ峰が迫っていた。爆烈火口のあとが荒々しく、乳白の噴煙が風になびいている。噴気特有のガス臭が鼻をつく。強風吹き抜ける板敷歩道の八丁弛みで、風を避けて御来光を待つことにする。5時45分、八ヶ岳あたりから、真っ赤な太陽が昇るのを期待していたが、突如白光色のまぶしい陽光が目を射た。たちまちあたりは明るい輝きに満ち溢れていった。
眺望は剣ケ峰で楽しむことにして、砂礫の中を気ままに頂上へ。
山頂の小屋が昨日閉館した旭館だった。裏手には3000ルートルの山頂とも思えぬ、立派な玉垣に囲まれて社が建っている。さすが山岳信仰のメッカである。眼下には大小の噴火口、それに崩壊し剥きだしの赤茶けた山肌、雨水に削られた縞模様、活火山であることを認識する。
どこまでも晴れ渡った秋空のもとに、中部山岳の総てが見えるのではないかと思える展望が広がっている。白山が鮮明である。遥か近江方面、眼下のニの池から摩利支天、乗鞍岳や北アルプス、美ヶ原、鉢伏山、浅間山、そして蓼科、八ヶ岳連峰、目の前は中央アルプス全山、南アルプス3000 メートル峰のオンパレード。ここでは富士山も遠慮勝ちにひょっこり後ろからご挨拶だ。見飽きぬ眺望に時を忘れ、写真も十分に撮って山頂をあとにした。