追想の山々1246  up-date 2001.12.28


南阿蘇 冠ケ岳(1220m) 大矢岳(1226m)登頂日1998.10.29 単独行
地蔵峠下(7.40)−−−地蔵峠(7.55)−−−道を間違えてロス1時間25分−−−地蔵峠(9.20)−−−分岐(10.05)−−−冠ケ岳(10.15-11.15)−−−地蔵峠(12.00)−−−大家岳補点(12.25-30)−−−地蔵峠(12.45)−−−地蔵峠下(12.50)===南阿蘇地獄温泉===根子岳ヤカタガウド入口へ
所要時間 5時間10分(うちロス1時間25分) 1日目 *****
息を呑む大展望の山頂=61才
冠ケ岳から阿蘇5岳展望
ガイドブックをめくっていると、阿蘇南外輪山の冠ケ岳が目にとまった。
水前寺公園へ立ち寄って時間をつぶしてから阿蘇へ向かった。57号線から325号線へと別れ、長陽村へ入る。まずは一日一山一湯の計画にしたがって、ともあれ温泉へ入らなくては・・・・。地図を開いてみると、このあたりは温泉だらけでどこにしようかと迷ってしまう。適当に見当をつけて垂玉・地獄温泉で入浴。このあと冠ケ岳登山口に予定している護王峠を目指したが、道路の様子が地図とは違っていることもあってさっぱりわからない。地元のおじさんに聞いてみたが要領を得ない。やむなく登山口を地蔵峠に変えることにした。こっちもわかりにくかったが、レジャー施設『グリーンピア南阿蘇』のゲートへ迷い込んだところで、受け付けの娘さんに聞くと、親切に教えてくれた。見るからに立派な三菱重工の保養施設の脇から林道へ入って、今度は迷わず地蔵峠へ向かうことが出来た。
林道をどんどん上がって行くと、一面牧草地となって刈り取り作業の様子も見える。  かなり標高の上がったところで、駐車に適当なスペースを見つけて、今日はここを寝場所にすることにした。ススキが美しい。秋特有の気持ちいい高い青空だ。この場所は偶然にも恰好の展望台で、阿蘇五岳と祖母連山、大崩群山が一望される素晴らしい場所だった。人っ子一人いない夕暮れ時、山々を眺めながらの自炊の夕食は、銀座の一流レストランで食べるディナーより数段豪華である。阿蘇山は次第にグレーのシルエットに変ってゆき、祖母、大崩山も黒い影絵になっていった。

一晩過ごした場所は標高900メートルほどの地点。朝目覚めると寒いくらい。東の空が赤く染まって行く。 洗腸をしながら刻々と変ってゆく朝の風景を眺める。阿蘇山へ一筋の暁光が射すと、たちまち山全体が生き生きと色を取り戻し、命を蘇らせて行くようにみえる。絶好の登山日和だ。
泊まった場所から林道をさらに数百メートル進むと、建設中の立派な舗装道路にぶっつかる。将来はこの道が地蔵峠への車道になるのだと思われる。建設中の道をしばらく行くと、長居橋(?)の手前で地蔵峠への登山道入口がある。ここを出発点にして歩くことにした。
登山道は途中で先ほどの車道を一度横切り、さらにすこし登ると地蔵峠である。ここまで徒歩12分。広々とした峠で、案内板には、道路が整備されていなかった時代は、阿蘇南郷谷と矢部町を結ぶ交通の要衝だったと書かれている。当時は険しい峠で、何回か遭難事故もあったというが、今はそんな面影もなく、公園のような明るい雰囲気があふれている。
「護王峠」の道標を頼りに冠ケ岳へ向かう。少し下ると車道に出た。自動車のわだちの跡が残されている。護王峠から車道が延びているとは案内書にはなかった。様子がおかしいとは思いつつその車道を進んだ。結局誤りに気づいて地蔵峠まで戻ったが1時間25分のロス。

地蔵峠で道標を再確認。「護王峠」の道標の向きは、ほぼ私が間違った方角に向いているが、実はその右手に公園の芝生のような広い尾根状の背があって、これが冠ケ岳から護王峠へのコースだった。芝草のコースを、右手に阿蘇山を眺めながら今度は間違いなく冠ケ岳を目指す。工事中の舗装道路を横切ってから、ふたたび登山道になる。冠ケ岳の道標がしっかりとつけられている。
たいしたアップダウンもなく、子供連れの散策にもってこいのコースがつづく。地蔵峠から45分で冠ケ岳への分岐で、そこから山頂まで10分ほどの緩い登りだった。
冠ケ岳山頂はたった1154メートルの二等三角点ピークながら、その展望は素晴らしいの一語。ススキが風に揺れ、笹と丈の低いアセビ、展望を遮るものは何もない。  快晴に加えて、大気の澄み具合は年に何回もないほどの最高の透明度。胸がどきどきするような気持ちで眺望に見入った。
東に大崩山、祖母山、傾山。目の前には根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳と連なる阿蘇山、その背後には久住連山の大船山・久住山・涌蓋山などが一望される。北には遠く英彦山あたりから背振山地と思われる山々がシルエットで浮かぶ。尖った三角形は釈迦ケ岳か、また台形の山は万年山だろうか。西に目を転ずれば、雲仙普賢岳がくっきりと溶岩ドームまでも確認できる。その右には多良岳・経ケ岳などの佐賀の名山。南側は九州中央部の「九州山地」が長々と横たわっている。その最高峰国見岳も確認できる。九州北半分がすべて見えたのではないだろうか。

十分に展望を楽しんでから地蔵峠まで戻った。老夫婦や家族が散歩気分で訪れて、昼食を楽しんだり、犬と散歩している姿があった。時間が早かったので、地蔵峠から反対側のピークへ足を伸ばし見た。急登を25分ばかり、スピード登頂したピークが「大矢岳」という三角点補点だった。あたりにはマツムシソウの花が多く見える。ここからの冠ケ岳は、ピークというには程遠い丘陵のような姿をしていた。

今日の温泉は冠ケ岳山麓の久木野村営「木の香温泉」にする。湯量豊富で浴槽もゆったりと大きく、何よりも素晴らしいのは湯に浸かりながら、壁いっぱいに開いたガラス越しに、阿蘇の山が眺められることだった。とくに烏帽子岳が真っ正面にその姿の良さをひけらかせていた。
57号線へ戻り、宮地駅付近から酔仙峡方面へ曲がり、踏み切りを渡ってすぐ左折すると、根子岳登山口のある日の尾峠方向への林道だった。この夜は根子岳ヤカタガウド入口で寝ることにした。

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