追想の山々1248  up-date 2000.12.29


御坂黒岳(1793m)〜釈迦ケ岳(1641) 登頂日1993.11.14 単独行
自宅(4.00)===河口湖IC===三ツ峠入口バス停(6.00)−−−旧御坂峠(6.50-7.00)−−−黒岳(7.30-35)−−−林道横断(8.00)−−−府駒山8.20)−−−釈迦ケ岳(8.40-9.30)−−−府駒山−−−林道横断(10.00)−−−黒岳(10.40-45)−−−旧御坂峠−−−三ツ峠入口(11.50)===東京へ
所要時間 5時間50分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
御坂山塊の主峰・300名山=56
釈迦ケ岳から富士山を望む


河口湖ICから三ツ峠入口バス停付近の駐車場へ着くころには、夜も明けはじめて抜けるような青空が広がっていた。旧御坂峠への道は、斜度をならすように上手にじぐざぐを切り、手入れも十分で快適に高度を上げて行く。
二合目まで冠雪した富士山々頂が、半逆光の曙光で見ごとな赤富士を見せてくれた。旧御坂峠までの高度差500メートルを、ワンピッチ50分余で登り切る。すこぶる快調である。ひといき入れてから黒岳へ向かう。
木々は昨日の大雨ですっかり落葉して、冬木立に変っていた。しっとりとした落ち葉を心地よく踏んで行く。樹間の富士山を楽しみながら1時間のコースを半分の30分で黒岳へ到着。樹木に囲まれ、人かげもなく静まりかえっいる。
ここで御坂山塊の主稜から別れて、北方支稜線の先にある釈迦ケ岳へ向かう踏み跡に入る。

人気のある御坂主稜と違って、釈迦ケ岳を訪れるハイカ ーは数少ないらしいが、思っていたより道形ははっきりしているので安心する。分厚い落ち葉を踏んでコルへの下りは気持ちいい。樹林越しに、ちらっと見え隠れする支稜の先に釈迦ケ岳があるようだが、 霧にまとわれて明確にはわからない。
高度差で300メートル下った先で林道を横切る。ここがコルということだ。林道からゆるやかに登って行く。少し薮っぽいが、大変気持ちいい潅木の道だ。北側に奥秩父連山から八ヶ岳連峰がかい間見えて来た。林道からの高度差はわずか200メートルだが、何回も小さな起伏を上下しなければならなかった。
途中三等三角点府駒山を通過する。さきほどまでガスに巻かれていた釈迦ケ岳は、ようやく霧も晴れてその三角錐が姿を見せて来た。初冬の陽を受けて、温々とした暖かさが伝わってくるようだ。

府駒山から4回ほど上下して、岩まじりの急登になってくると山頂は近い。岩角をつかんで登り切ると、そこは雑木林を抜けた大パノラマの山頂だった。岩峰の頂は遮るものは何ひとつない。そして上空には雲のかけらも見つからない。夜来の強い雨に、大気は思い切り洗い清められ、透明度も最高。西南側は鋭く切れ落ち、とても1800メートルそこそこの山とは思えない高度感と展望に恵まれていた。山頂にはほのぼのとした素朴さで、夫婦石仏が富士山を背にして,寄り添うようにたたずんでいるのも微笑ましい。

中央高速道を東京に向けて走っていると、甲府盆地にさしかかる頃から、御坂山塊の中にひと際目を引く三角錐のピークが見える。登高意欲をそそるその槍のように尖った穂先は気にかかって仕方なかった。それが釈迦ケ岳いう山であることを知り、いつか登頂しなければと思っていたが、今日ようやくその穂先に立つことができた。
奥秩父、八ヶ岳、蓼科山、遠く北アルプス、そして南アルプス3000メートル峰はすべてのぞむことができる。鳳凰、笊ケ岳、布引山・・・。目の前には黒岳を主峰とする御坂山塊、その上に見事なまでの秀麗富士山。三ツ峠、大菩薩連嶺、小金沢連嶺、見飽きることのない展望がほしいままだった。
貸し切りの静かな山頂で、一人山座同定に悦に入って楽しんだ。
好天に恵まれたこともあるが、この周辺でこれだけの展望を得られる山は、ほかに多くはないはずだ。
写真、スケッチを楽しみ、1時間近くを頂で過ごしてから同じ道を戻った。