追想の山々1257  up-date 2002.01.07


瑞牆山(2230m) 登頂日1988.05.14 単独行
増富ラジウム温泉(6.30)−−−瑞牆山荘(7.45)−−−富士見平(8.15)−−−天鳥川(8.35)−−−瑞牆山(9.20-55)−−−天鳥川(10.25)−−−富士見平(10.40)−−−瑞牆山荘811.05-15)−−−増富ラジウム温泉(12.40)
所要時間 6時間10分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
日本百名山の6座目、岩の山頂に驚く=51
岩峰の瑞牆山


前年9月に日本百名山を登りはじめてから半年、この瑞牆山が6座目だった。

未明に東京を発ち、6時25分増富ラジウム温泉に着いた。温泉旅館街先の路傍へ自動車を置いて出発。渓流沿いの道にはまだ朝の陽光は届かない。空には一片の雲もない。大半の登山者はこの道を更に5〜6キロ先、瑞牆山荘まで車で乗り入れてしまうが、私の計画は昔ながらのラジウム温泉から歩いてみることにした。
鮮やかな新録が渓谷を溢れるほどに満たしている。樹林は保護林となっているため手入れもよくのびのびと育った木々がことさら美しい。新緑を透過光線で見るみずみずしさはなんとも言えない。耳を澄ますと渓流の沢音にまじって、野鳥の囀りも賑やかだ。この道は歩いて楽しむ道、自動車で通過してしまうのは大変もったいない。渓流の変化も楽しく、巨岩、奇岩が次々とあらわれる。
新緑ののどかな道を歩くこと30分余、渓流は二つに分れる。左の金山川沿いに進む。このあたりから道路の傾斜もやや増してきて、やがて舗装から砂利道に変わった。金山平の手前までくると行く手に目指す瑞牆山の岩峰が見えてくる。
カラマツの芽吹きを楽しみながら歩くと瑞牆山荘に到着。
自動車道と別れて、落葉樹林の登山道へ入る。大きな岩石が点在する急坂をひと登りすると富士見平小屋だ。白樺の美しいキャンプ場になっている。標高1800米のここまで登ってくると肌に寒さを感じる。風も強い。木々の梢がうなっている。

一旦天鳥川まで下ってから、いよいよ瑞牆山への急登がはじまる。台風のためか古い倒木が重なり合い、それをくぐり、 またぎ、今度は岩を避けながら登って行く。荒れた沢という感じである。巨岩が次々とあらわれる。今にも倒れかかってきそうな大岩柱を巻いて肩のようなところに出る。ツララが下がり北側に回りこむと、残雪はカチカチに氷化している。足元に注意しながらわずかの登りで大岩峰の頂上に立った。
岩峰群は風化侵食されて角がとれ、丸みを持った岩ばかりだ。巨岩が天空に踊り出したようなその景観にまず驚いた。
南側は足下から一気に切れ落ち、下をのぞくのも恐ろしい。もやがかかっているが、金峰山、富士山、南アルプス、中央アルプス、遥かに御岳などがのぞめる。ハイライトは何といっても残雪の連峰が大きく裾野を引く八ヶ岳である。
30分ほど岩の上で過ごしてから、登ってきたときと同じコ ースを引き返した。
初回登頂から12年後(2000.05.13日)、瑞牆山荘からふたたび瑞牆山に登った。そのとき登山道の荒れ方のひどさに驚いた。特に富士見小屋から天鳥川の間がひどい。
これも日本百名山ブームが一役買っているのだろうが、それはしかたないことで、山を目指す人が増えるのは大いに歓迎したい。
せめて登山者は登山道を優しく歩く心遣いを忘れずに歩くことにしよう。