追想の山々1261  up-date 2002.01.12


天城山(1406m) 登頂日1988.12.10 単独行
天城高原ゴルフ場(10.00)−−−四辻(10.05)−−−万二郎岳(10.35)−−−石楠立(10.50)−−−万三郎岳(11.10-15)−−−小岳(11.30)−−−白田峠(12.00)−−−八丁池(12.30-40)−−−天城峠(14.00)
所要時間 4時間5分 1日目 ***** 2日目 **** 3日目 ****
天城高原から天城トンネルへ=51
「踊り子」の詩情を感じる旧天城トンネル
JR東毎道線朝一番の電車はがら空きだった。相模湾沿いを走る車窓から、深紅の太陽が昇って、小舟が1艘、きらめく波間に漂っているのが絵のようだ。
熱海で下田行きに乗り換え、伊東駅下車7時45分。予定の天城高原ゴルフ場行き8時のバスは日曜日だけの運行で、土曜日の今日は9時発しかない。予定が大きく狂ってしまった。天城峠を14時30分のバスに乗るために、案内書6時間35分のコースを5時間で歩く計画で出かけてきた。それが4時間ちょっとで歩かなくてはならない。これは大変なことだ。

バスは天城高原に向かって上っていく。初冬の陽を受けた大室山がひと際目立つ。温暖な伊豆の地でも標高が高くなると、寒さがバスの中まで忍びこんでくる。 1時間の乗車でゴルフ場終点、それ急げ。バスを降りるのももどかしく、足早に登山道に踏み入った。かなり先を歩いている二人連れが、見る間に近付きそのまま追い越す。
アセビ(馬酔木)の木が多い。ときには道を外しショートカットしたりして急いだ。ひとしきり登って、やや足場の悪い急坂を過ぎると目の下に相模湾があった。大きな大島が噴煙を上げていた。万二郎岳はそこからすぐだった。

万三郎ケ岳
そのまま天城最高峰の万三郎岳に向かう。道はよく整備され、2〜300メートル毎にコース標識が立っている。アセビが見事な群生を見せている。ヒメシャラのつるっとした茶色の樹肌が 少し気味悪く、あまり好きではない。陽に暖められた霧氷が、梢からパラパラと落ちてくる。
万三郎岳の山頂は展望がきかなかった。ここまでガイドブックの半分の時間で到着した。こ れで予定の時刻には天城峠まで下ることが出来そうだ。

冬枯れの小径は行き交う人もない。
小岳から白田峠を過ぎると、樹相が変わっているのに気づく。 ブナ主体となっていた。すっかり葉を落とした梢が、真っ青な空に向かって伸びている。対面にはブナの原生林が、冬の柔らかい陽を一杯に浴びて明るく輝いていた。
わさび畑があらわれ、もう里の近いことを感じさせる。
ブナの原生林が切れて背丈程もあるスズケタの道を抜けると、明るく開けた八丁池に出た。昼食の小休止をしてすぐに出発する。展望台があったので上がって見た。箱根方面が良く見えたが、案内盤にある富士山をはじめ南アルプス等はだめだった。

予定の時刻に余裕を残して、天城峠に到着することができた。
新しく出来た天城トンネルは立派な舗装道路で、自動車がひっきりなしに行 きかっていたが、旧天城トンネルの方はひっそりとして、川端康成の「踊り子」をほうふつとさせる雰囲気が漂っていた。トンネルの北側に立つと、暗い闇の向こうに出口がぽつんと見える。踊り子の一行が旅して行く情景が浮かぶ。
修善寺行きのバスに乗り、天城峠を後にした。